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カテゴリ:ドラマ感想
「正しいことなんて言われなくても分かってるんです」 そう言って、私の胸をえぐり、罪人に寄り添わせた『白夜行』からもうすぐ3年。ついに出会いました。白夜行のように重く、悲劇的で、スリリングで、絶望的な傑作ドラマに。 韓国ドラマ 『魔王』 【いらっしゃいまセ~ル】 魔王 DVD-BOX 1(DVD) ◆26%OFF! 日本でも今年TBSでリメイクされていますので、名前だけは知っている方もいるかと思います。 <<きっかけ>> 私はこのドラマのことは、山田君のことについても時々書いてくださっているMarcさんのブログで知りました。白夜行と比較され、傑作とのことだったので、興味を惹かれてました。 で、日本版も見たかったんだけど、だんなから主演俳優にNGがでて、どうせなら一緒にハラハラしながら見たいし、日本版は見送って、韓国のオリジナルの方に挑戦。11月半ばくらいから、レンタルで見始めました。 最初は、韓国ドラマを見慣れないので、ソ・ドンソクとか、ソクジンとかヨンチョルとか、人名で混乱して大変だったのですが(笑)。 <<ドラマのすごさ>> ドラマの公式HP(韓国版)はこちら。 このドラマの何がすごいというと、 まず音楽。音楽が素晴らしいです。白夜行もサントラ買うくらい音楽がよかったけど、魔王も本当に音楽がいい。OPから、いくつものテーマソング、挿入歌のすべてに至るまで、本当に素晴らしいです。 だんながはまりすぎてしまって、ちゃちゃちゃちゃ、ちゃららちゃららちゃららというOPテーマをいつも再生と同時にノリノリで歌ってました(笑)。 そして、もちろん脚本。韓国ドラマはよく視聴者の意見で脚本が変わるし、直前まで完成しないとか言う話を聞くけど、この作品に限ってはそんなことないはず。 完成度が半端ない!! 日本ではもうドラマという表現形態に限界と絶望を感じるような作品ばかりだけれど、魔王には連続ドラマとしての自負と、誇りと、アイデンティティが痺れるほどに息づいています。 私はずっとこういうドラマが見たくて、自分が見たい、見たいと願ってきた完璧な作品が目の前に現れた幸福で、本当に震えました。本当にこのドラマにかかわったすべての人に心からの尊敬と感謝を送ります。こんな気持ちになったのは、おそらく白夜行以来でしょう。 暗喩とダブルミーニングの連続技で、台詞一つの裏の裏を深く深く噛み砕いていくことが求められます。 またダンテの『神曲』や、タロットカード、韓国(?)の絵本からの引用が取り込まれ、物語にギリシャ悲劇のような深みを与えてくれています。以前の回の台詞がボディーブローのように、じわじわと効いてきて、胸が締め付けられます。 見ているこっちがさらに頭悪くなりそうな(笑)不快な脚本しか書けないアホ脚本家たちに見せてやりたい。(今日、たまたまイノセントラブを見てしまったんですが、必死に演じている役者さん全員に同情。こんな薄っぺらな脚本で、人間の何を演じろというのか??) 魔王は、全部で20話(!)あるのですが、13話くらいまでは、次が気になって気になって、イケイケどんどんで、見ちゃってましたけど、15話くらいになったら、終わってしまうのがつらくて、哀しくて・・・。 最終回を見るときには、一緒に見てるだんなに「これを見てしまったら、あと3年また本当に面白いドラマに出会えないけど、いい?」とか訳分からないことを言いながら、再生ボタンを押しました。 こんなに夢中になれるドラマがこの世にまだ存在したんだということに感動しました。 俳優さんも全員素晴らしいですが、 なんといっても素晴らしいのは、主演のオ・スンハ弁護士ですね。 彼が物凄く美しい。やはり、こういう役は美しくなければ成立しないし、彼でなければ、私はここまで「魔王」にはまらなかったと思います。 前半、ほとんど表情がありません。ときどき雪穂と同じ唇の先吊り上げ笑いがでてきます。 これが回をますごとに凄みをまし、もう一瞬にして冥界に連れて行かれるような暗黒の表情に進化していきます。 それでありながら同時に哀しい。あまりの哀しさに、もう苦しくてどうしていいのかわからない。亮司と共に生きた感覚が帰ってくる・・・。 <<スンハと亮司>> 特に後半はスンハを見ながら、常に影のようにそこに亮司を見ていたように思います。実際、なんども白夜行の台詞が頭に響いてきました。 やっていることは間違っている。こんなことは許されることではない。そして罪を犯し、犯させながら、自らも傷ついている。それでもなおこのやり方でしか生きられない。 一言の説明も台詞もないけれど、あの場所に立つ彼の涙から、無言が饒舌となって心に突き刺さるのです。 人間というのが、なんと弱くて、ずるくて、愚かなのか。白い罪と黒い正義がぶつかりあって、善と悪の境目が混沌とし、人が人を裁くことは出来るのか、償うことの出来る罪などあるのか、人を赦すとはどういうことなのか、根源的な問いを投げかけてきます。 基本復讐劇ですし、人も何人も死にますので、そういうのが苦手な方は難しいかもしれません。サイコメトラーがでてきて、ちょっと都合よく過去と現在をつないだりする部分がありますから、その辺のファンタジーさを受け入れる必要もあります。 白夜行がナレーションを使っていたのに対し、こちらは一切ナレーションがありませんから、その分サイコメトリーの設定を都合よく使っているのです。 それでも見ごたえある台詞と演技の応酬、あのオ・スンハとカン・オスの精神的SMの世界を是非一人でも多くのドラマファンの人に体験してもらいたいと思います。 脇の一人一人に至るまで、暗黒の世界に飲み込まれ、顔が変わっていく様が素晴らしいです。 そして最終回、ラスト8分間くらいの攻防。私はあまりに壮絶で、残酷な想像を超えたラストにもう涙がとまらなくて、ずっと止め処なく溢れる涙そのままに見ていました。 そして、オ・スンハが最後堕ちいくことを拒んだ罪悪感と自己嫌悪の闇にこそ、亮司は生きていたのだということが、『魔王』を見ることで、よりはっきりと理解でき、雪穂を残して死んでいった彼を責めることなど、決してできはしないのだと、改めて思わされました。 どんな大義名分のもとであっても、正義だと信じたとしても、罪を犯した先に明るい未来などないのだと・・。そして闇から救い出す手がいくら差し出されようとも、それをつかむことなど、もはやできないのだということも。 演出も、1カットごとの絵作りも素晴らしいです。 山田君の映画で、怒りや葛藤を表すために「手紙」、「イキガミ」と鏡を割るシーンが出てきましたけど、なんかワンパターンだなと思ってたんですが、そういう不満を解消してくれる演出が出てきます。とにかく素晴らしいです。 魔王文句なしに、今年見たドラマで1位のできです。そしてやはり「白夜行」への愛情は超えられませんが、それに匹敵する、あるいは凌駕する作品の完成度であり、是非一人でも多くの方に、この韓国版オリジナルを見ていただきたいと思います。 今なら GYAOで1話が視聴でき、1月からは全話無料配信も始まるそうです。 おすすめは、楽天レンタルでの視聴です。今なら1月末まで、1ヶ月半の間、無料で16話見れるので、気に入ったら、無料レンタルしてみてください。 郵便ポストで返却できて、返却次第次のリクエストができるので、到着がめちゃくちゃ早いです。 正月休みにまとめてみるのに、かなりお勧めです! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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