病気になったら病気になったら、どんどん泣こう。痛くて眠れないといって泣き、 手術がこわいといって涙ぐみ、 死にたくないよといって、めそめそしよう。 恥も外聞もいらない。 いつものやせ我慢や見えっぱりをすて、 かっこわるく涙をこぼそう。 またとないチャンスをもらったのだ。 自分の弱さと、思いあがりを知るチャンスを。 病気になったら、おもいきり甘えよう。 あれが食べたいといい、 こうしてほしいと頼み、 もうすこしそばにいてとお願いしよう。 遠慮も気づかいもいらない、 正直に、わがままに自分をさらけだし、 赤ん坊のようにみんなに甘えよう。 またとないチャンスをもらったのだ。 人の情けと、まごころに触れるチャンスを。 病気になったら、心ゆくまで感動しよう。 食べられることがどれほどありがたいことか、 歩けることがどんなにすばらしいことか、 新しい朝を迎えるのがいかに尊いことか、 忘れていた感謝の心を取りもどし、 見過ごしていた当り前のことに感動しよう。 またとないチャンスをもらったのだ。 この瞬間に自分が存在しているという神秘、 いのちの不思議に、感動するチャンスを。 病気になったら、すてきな友達をつくろう。 同じ病を背負った仲間、 日夜看病してくれる人、 すぐに駆けつけてくれる友人たち。 義理のことばも、儀礼の品もいらない。 黙って手を握るだけですべてを分かち合える、 あたたかい友達をつくろう。 またとないチャンスをもらったのだ。 神様がみんなを結んでくれるチャンスを。 病気になったら、必ず治ると信じよう。 原因がわからず長引いたとしても、 治療法がなく悪化したとしても、 現代医学では治らないと言われたとしても、 あきらめずに道をさがし続けよう。 奇跡的に回復した人はいくらでもいる。 できるかぎりのことをして、信じて待とう。 またとないチャンスをもらったのだ。 信じて待つよろこびを生きるチャンスを。 病気になったら、安心して祈ろう。 天にむかって思いのすべてをぶちまけ、 どうか助けてくださいと必死にすがり、 深夜、ことばを失ってひざまづこう。 この私を愛して生み、慈しんで育て、 いつか御自分のもとへ呼んでくださる方に、 すべてをゆだねて手を合わせよう。 またとないチャンスをもらったのだ。 まことの親である神に出会えるチャンスを。 そしていつか、病気が治っても治らなくても、 みんなみんな、流した涙の分だけ優しくなり、 甘えとわがままをこえて自由になり、 感動と感謝によって大きくなり、 友達を増やして豊かになり、 信じ続けて強くなり、 祈りのうちに、神の子になるだろう。 病気になったら、またとないチャンス到来。 病のときは恵みのとき。 詩集「だいじょうぶだよ」 晴佐久昌英 ジャンル別一覧
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