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2009年04月22日
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カテゴリ:経済

ワーキングプア 解決への道(5) NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班
2008年7月11日 ポプラ社 発行

実は「ワーキングプア」の問題は、日本だけの問題ではない。日本よりも早く構造改革や規制緩和を推し進めた欧米の国では、すでに1980年代から健在化し、「ワーキングプア」という言葉も、その頃から使われていた。それが今、経済のグローバル化とともに、日本をはじめとする各国にも飛び火しているのだ。

解決へ ~つながり始めた人々

ばらばらにされる非正規雇用者
歯止めなく増え続ける非正規雇用。それに伴って深刻さを増しているのが「孤立」の問題だ。非正規雇用の本質は、いつでも代わりのきく労働力ということだ。職場で一人の人格として扱われない、人間関係を築けないといったことが起きている。

ばらばらにされたままの非正規雇用者の労働条件が、良くなるなずはない。そういう意味では、働く人を取り巻く状況は今、戦前に逆戻りしかけているのかもしれない。

芽生え始めた新たな連帯
今のワーキングプア問題の背景には、企業など雇用者側が、違法なあるいは違法すれすれの行為によって、働く人たち、特に非正規雇用の人たちを使い捨てていることが、かなりの比重を占めると指摘されている。非正規雇用の人たちはほとんどの場合、既存の企業別労働組合から守られることはない。だから自分で労働組合に加入して、自分の身を守るしかない。

非正規雇用の人たちでも入れることを謳った労働組合は、ここ数年、活動を活発化させている。こうした労働組合の一つ、「首都圏青年ユニオン」。東京、豊島区に事務所を構える。組合員数は約300人。非正規雇用者にも正社員にもへだてなく門戸を開いているが、目立つのはやはり非正規雇用の若者たちだ。

ワーキングプアと言った時に、低賃金だけが問題なのではありません。非正規雇用者は多くの場合、労働の現場で権利の無い状態にさらされています。例えば残業代がまったくつかないとか、社会保険や雇用保険がないとか。不当解雇はもちろんです。これに対抗するためには、企業と対等に交渉できる団体交渉権をもってするしかありません。

今、若者たちが、階層として、まるごと非正規雇用者になって不安定化し、貧困化しています。だから、若い世代全体に呼びかけるような運動をしていく必要があります。これは、組合というツール、武器を使った新しい社会運動です。職場での権利の獲得を、社会運動として大規模に展開していくのです。権利の無い状態が当たり前だと思い込まされている若者たちが、「おかしい」と声を上げていくことが重要なのです。

首都圏青年ユニオンの執行委員会は、いつも夕食を自炊して、皆で食べながら開かれる。大きな鍋に湯気を上げているおかずを皿によそい、どんぶり飯をかき込む若者たちの姿を見ていると、これは新しい形の共同体の芽生えではないかという思いがよぎる。

ワーキングプアの問題は、日本社会の中でひそかに進行してきた共同体の崩壊を無縁ではない。家族、地域、そして日本型企業。こうした共同体が弱体化し、脆くも崩れ去る中で、誰からの支えもないまま孤立し、ばらばらにされる非正規雇用の若者たち。そして弱い立場を狙い撃ちするかのように襲う貧困。

「つながること」で見え始めた光
岩井さんは、そんな男性の仕事振りを横目で見ては、自分に余力がある時は他の人の手助けをしていた。岩井さんの力を借りた人は、今度はまた別の人の作業を手伝う。作業中、グループのメンバーはほとんど口を開かないが、与えられた仕事に対する責任を分担し、互いを思いやる気配りが随処に感じられた。

無くした「誇り」を取り戻す
社会復帰への道は以前険しい岩井さんだが、孤立した状態から抜け出そうと努力を続けていた。仕事以外でも、他のホームレスの人たちに積極的に関わりを持つようになったのだ。仕事を始めてから一番変わったと思うのは、前向きになれるようになったことじゃないかな。ずっと、一人でいるほうがいいと思ってたけど、仲間と仕事をしているうちに、人に話しかけたり接したりすることが、できるようになった。

よみがえった「人間らしさ」
別れ際に、岩井さんと初めて握手を交わした。
雑誌拾いをしていた頃、白く柔らかそうだった手のひらは、日に焼けてゴツゴツした「労働者」の手に変わっていた。
「自分には人に誇れる仕事がある」
「世間から必要とされる人間に自分はなりたい」
グッと力が込められた指先からは、そんな自負と決意が感じられた。

「働きがい」と「人とのつながり」。
ごく単純にも聞こえるこの二つの言葉こそ、ワーキングプア問題の解決に向けて、この社会が踏み出すべき方向性を示しているのではないだろうか。

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最終更新日  2009年04月22日 20時19分47秒
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