カテゴリ:甲州ライフ
「こんなにのどかに暮らしていいのかしら」
郵便局から帰ってきた妻がつぶやいた。 特急も止まる駅から歩いて15分ほどのところに一軒家を借りて、 この町に暮らし始めて2週間になる。 東京でもあまり外出はせず、 家で原稿を書きながらのんびりと暮らしていたつもりだ。 でも、東京で暮らしているときとはリズムが違う。 ゆっくりと時間が流れ、 そろそろ寝ようかなと時計を見ると、 まだ8時とか9時だったりする。 人がたくさんいて、 電車がひっきりなしに走って、 車も多くて、 ちょっと歩けば、スーパーも専門店もあってなんでも買える。 確かに便利だった。 こちらでは、近くのスーパーに行くのも車か自転車を使わないといけない。 人も車も少ない。 東京での生活とこの2週間とを比べてみると、 「せかされていたな」 と感じる。 だれかが「早くしろ」とせかしているわけではないのだが、 「早く」 「急げ」 「負けるな」 「もっともっと」 都会にはそんなエネルギーがあふれていて、 知らず知らずのうちに、 せかせかした気持ちで日々を過ごしていて、 「あれっ、もうこんな時間。早いなあ」とため息をつく。 楽しいことに集中して時間がたっていくというのではない。 主体は時間で、 時間に引きずられて一日が終わっていく感じ。 比較的のんびりと生きていたぼくでもそうなのだから、 都会で暮らす大半の人は、 知らず知らずのうちに、心が疲弊していると思う。 長く都会にいて、 地方での暮らしを始めると、 妻が言ったように、 「こんなにのどかでいいのか」といった漠然とした不安を感じたりする人も多いだろう。 本来の人間の生きるリズムは、 「ゆっくり」と「のどか」なものなのではないだろうか。 いろいろ感じることの多い2週間だった。 やること、やりたいことは多々あるけれども、 やらなければならないことは、そんなにあるものではない。 のどかだからこそ、 本当に大切なものが見えてくるのではないだろうか。 ![]()
Last updated
2020年12月03日 09時53分28秒
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