「不完全試合」('02/04/10)昨年末だったか、日経で、こんな記事を見つけた。「企業名想起率ランキング-コーポレートメッセージ調査」 というものだ。 要は、企業のキャッチコピーから、 正しくその企業がイメージされるか、のランキングだ。 その結果、 3位は「ココロも満タンに」でコスモ石油、 2位は「あしたのもと」で、味の素。 そして、栄えある1位は… 「お口の恋人」で、ロッテだった。 このスローガンは8割以上の人が知っていた、ダントツの1位だった。 なるほど。確かに。私も子供の頃から耳にしている。納得した。 --- しかし企業の「ロッテ」=「お口の恋人」かも知れないが、 残念ながら日本プロ野球の「ロッテ」=「強いチームではない」、 と出てきてしまう(ファンには失礼だが)。 '98年、日本プロ野球史上最長連敗記録、「18連敗」を記録した。 日本中が「仏W杯」で沸きかえっていたころ、 W杯開幕前から連敗が始まり、 あやうく閉幕まで1勝もできない、という事態になりかけた。 17連敗目のBW-M戦、BWプリアムが9回裏に同点2ラン, Mジョニー黒木が涙の降板、は「伝説」とまではいかなくても、 少なくとも「語り草」にはなっている。 --- そして、日韓共催W杯のあった'02年、 またロッテは連敗の日本記録を作ってしまった。 「開幕からの連敗記録、11連敗」である。 今回の話は、その連敗の試合の中の1試合についてだ。 --- '02年、個人的なことだが、この年私は社会人生活を始めた。 新人研修は、全員が千葉で受けることになった。 4月10日、会社帰りに、同期連中3名を連れ立って、 千葉マリンスタジアムへと向かった。 マリンの外野の、あの「熱い」応援を一人でも多くの人に 知ってもらいたい、という考えがあって、誘ったのだ。 特に、Mの応援団が初めて考え付いた、 種々の「チャンスのテーマ」を体験すれば、 みんなMの虜になるだろう。 そして、パに興味をもってくれるのでは無いか? そう考えた私が甘かった。 まさか、この試合でチャンスが1度も訪れない、なんて思わなかった…。 --- この年のM-F、2回戦。 我々が到着したのは2回表の攻撃中。 既に1回表にFが1点を先制していた。 先発はMシコースキー、Fミラバル。 2回裏、4番DHボーリックから。 3者凡退。 3回裏、7番塀内から。 3者凡退。 --- 同期の奴に、Mのマスコットについて、紹介した。 「マー君」「リーンちゃん」「ズー君」 3人合わせて…。 関西人なら突っ込まずにはいられない、このネーミングセンス。 この話で笑いはとったものの、 4回裏、1番堀から。 3者凡退。 5回裏、4番ボーリックから。 3者凡退。 M0-1Fのまま、5回を終える。 --- 6回表。 Fが、DTクローマーのソロHRで0-2になる。 その裏、7番塀内から。 3者凡退。 7回裏、代打攻勢。 1番堀に変えて、佐藤幸彦、 2番諸積に変えて、サブロー。 3番はそのまま福浦。 3者凡退。 8回表、Fはさらに1点追加する。 M0-3F。 もう、この時点で勝負は決したな、感は強かった。 8回裏、Mの攻撃。 4番DHボーリック、 5番、メイ、 6番、初芝。 3者凡退。 --- Mの、スコアボードのHの数は0のままである。 ノーヒットで来ているのは分かっていた。 ただ、1回の裏を見ていない。 四死球+併殺で、3人で終わった可能性が十分にある。 意を決して、後ろの列の、私達が来る前から球場にいた お兄さんに聞いてみた。 「…あの…、1回の裏って、フォアボールとかでランナー出たんですか?」 お兄さんは、眉間にしわを寄せて、不機嫌そうに応えた。 「…ん?今日は全くランナー出てないよ!!」 --- 大変だ!! おおごとだ!! 目の前で、完全試合が達成されようとしている!! 達成されれば、槙原寛巳以来8年ぶり、 パリーグでは、'78年、阪急の今井雄太郎さん以来24年ぶり、 16人目の完全試合が 目の前で達成されようとしている!! --- 慌てて、弟や、知人のMファンにメールを送りまくる。 弟からの返信では、他の試合の中継の途中経過でも この試合について触れていて、 なんでも8回終えて、Fミラバルは69球しか投げていないらしい。 --- こうなったら、もう、応援どころではない。 9回表、Fが追加点を上げた、らしい。 そんなことは記憶の中に全く無い。 ただ、9回裏が来るのを待っていた。 そしてこの試合の半券を慌てて探した。 完全試合を観戦した!! なんてことになれば 一生自慢できるからだ。 半券の在り処を確認した私は、 ライトスタンドに陣取りながら、 心はF・ミラバルを応援していた。 こんなこと、初めてだった。 --- 9回裏。 7番塀内に変えて、代打・吉鶴 心の中で「吉鶴かい!!」っと突っ込んだ。 --- 私が甘く見ていたんだろう。 ひょっとしたらFのミラバルや捕手實松にも 油断があったのかも知れない。 いや、多分、全く油断せず、全力で投げた結果だろう。 その証拠に、初球を打った吉鶴の打球は ボテボテのゴロだった。 遊撃手・金子が2塁ベースよりの打球に対して、 スライディングキャッチを試みなかった。 だから、捕れる打球なのか、と思った。 --- 違った。 スライディングしても届かないから、諦めたのだった。 ミラバルの70球目。無情にもセンター前に転がった。 スコアボードのMのHの欄が0から1に変わった。 --- 結局、目の前の試合は完全試合ではなく、 ただの1安打完封試合になった。 弟から「残念!!」とのメールが来た。 励ましのメールであることは理解出来た。 だが、その言葉の100倍以上、マジへこみしていた。 --- 結局、単なる春先の、寒い平日の寒い試合観戦になってしまった。 チャンスのテーマなんて全く無かった。 ただ、これがきっかけで、一緒に観戦に行った同期と 非常に仲良くなることができた。 それを考えれば、まあ、良かったのかなぁ、と今になって思う。 半分くらい。 残り半分は正直、今でも悔しぃ~!!の気持ちが強い。 --- 結局この試合で負けた千葉ロッテマリーンズは開幕9連敗。 その後、連敗は11まで伸びた。 12試合目、神戸でのBW-M戦でついに、連敗は止まった。 そして、何の因果か、 この試合で「連敗ストッパー」となってしまった BWの川越英隆投手に、 この年'02年から'04年まで続いた 「個人15連敗」というパリーグタイ記録へと、 「連敗の悪運」は乗り移ったのだった。 --- 完全試合は難しい。 ただ、「人間は完全なものではないんだよ」ということを この試合は教えてくれたような気がする。 --- この観戦記を書きながら、やっぱり悔しい気持ちが蘇ってきた。 この試合のスコアはこちら ま、いいさ。 一生の「語り草」「ネタ」として使ってやるもん。 ['05/02/05] ジャンル別一覧
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