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佐竹台8丁目25番地―12

「不完全試合」('02/04/10)

昨年末だったか、日経で、こんな記事を見つけた。

「企業名想起率ランキング-コーポレートメッセージ調査」

というものだ。

要は、企業のキャッチコピーから、
正しくその企業がイメージされるか、のランキングだ。

その結果、
3位は「ココロも満タンに」でコスモ石油、
2位は「あしたのもと」で、味の素。

そして、栄えある1位は…
「お口の恋人」で、ロッテだった。

このスローガンは8割以上の人が知っていた、ダントツの1位だった。

なるほど。確かに。私も子供の頃から耳にしている。納得した。

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しかし企業の「ロッテ」=「お口の恋人」かも知れないが、

残念ながら日本プロ野球の「ロッテ」=「強いチームではない」、

と出てきてしまう(ファンには失礼だが)。

'98年、日本プロ野球史上最長連敗記録、「18連敗」を記録した。

日本中が「仏W杯」で沸きかえっていたころ、
W杯開幕前から連敗が始まり、
あやうく閉幕まで1勝もできない、という事態になりかけた。

17連敗目のBW-M戦、BWプリアムが9回裏に同点2ラン,
Mジョニー黒木が涙の降板、は「伝説」とまではいかなくても、
少なくとも「語り草」にはなっている。

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そして、日韓共催W杯のあった'02年、
またロッテは連敗の日本記録を作ってしまった。
「開幕からの連敗記録、11連敗」である。

今回の話は、その連敗の試合の中の1試合についてだ。

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'02年、個人的なことだが、この年私は社会人生活を始めた。
新人研修は、全員が千葉で受けることになった。

4月10日、会社帰りに、同期連中3名を連れ立って、
千葉マリンスタジアムへと向かった。

マリンの外野の、あの「熱い」応援を一人でも多くの人に
知ってもらいたい、という考えがあって、誘ったのだ。

特に、Mの応援団が初めて考え付いた、
種々の「チャンスのテーマ」を体験すれば、
みんなMの虜になるだろう。
そして、パに興味をもってくれるのでは無いか?

そう考えた私が甘かった。

まさか、この試合でチャンスが1度も訪れない、なんて思わなかった…。

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この年のM-F、2回戦。

我々が到着したのは2回表の攻撃中。
既に1回表にFが1点を先制していた。

先発はMシコースキー、Fミラバル。

2回裏、4番DHボーリックから。
3者凡退。

3回裏、7番塀内から。
3者凡退。

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同期の奴に、Mのマスコットについて、紹介した。

「マー君」「リーンちゃん」「ズー君」
3人合わせて…。

関西人なら突っ込まずにはいられない、このネーミングセンス。

この話で笑いはとったものの、
4回裏、1番堀から。
3者凡退。

5回裏、4番ボーリックから。
3者凡退。

M0-1Fのまま、5回を終える。

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6回表。
Fが、DTクローマーのソロHRで0-2になる。
その裏、7番塀内から。
3者凡退。

7回裏、代打攻勢。
1番堀に変えて、佐藤幸彦、
2番諸積に変えて、サブロー。
3番はそのまま福浦。
3者凡退。

8回表、Fはさらに1点追加する。
M0-3F。
もう、この時点で勝負は決したな、感は強かった。
8回裏、Mの攻撃。
4番DHボーリック、
5番、メイ、
6番、初芝。
3者凡退。

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Mの、スコアボードのHの数は0のままである。
ノーヒットで来ているのは分かっていた。

ただ、1回の裏を見ていない。
四死球+併殺で、3人で終わった可能性が十分にある。

意を決して、後ろの列の、私達が来る前から球場にいた
お兄さんに聞いてみた。

「…あの…、1回の裏って、フォアボールとかでランナー出たんですか?」

お兄さんは、眉間にしわを寄せて、不機嫌そうに応えた。
「…ん?今日は全くランナー出てないよ!!」

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大変だ!!

おおごとだ!!

目の前で、完全試合が達成されようとしている!!

達成されれば、槙原寛巳以来8年ぶり、
パリーグでは、'78年、阪急の今井雄太郎さん以来24年ぶり、
16人目の完全試合が
目の前で達成されようとしている!!

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慌てて、弟や、知人のMファンにメールを送りまくる。
弟からの返信では、他の試合の中継の途中経過でも
この試合について触れていて、
なんでも8回終えて、Fミラバルは69球しか投げていないらしい。

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こうなったら、もう、応援どころではない。
9回表、Fが追加点を上げた、らしい。

そんなことは記憶の中に全く無い。
ただ、9回裏が来るのを待っていた。

そしてこの試合の半券を慌てて探した。
完全試合を観戦した!!
なんてことになれば
一生自慢できるからだ。

半券の在り処を確認した私は、
ライトスタンドに陣取りながら、
心はF・ミラバルを応援していた。

こんなこと、初めてだった。

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9回裏。
7番塀内に変えて、代打・吉鶴
心の中で「吉鶴かい!!」っと突っ込んだ。

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私が甘く見ていたんだろう。
ひょっとしたらFのミラバルや捕手實松にも
油断があったのかも知れない。

いや、多分、全く油断せず、全力で投げた結果だろう。

その証拠に、初球を打った吉鶴の打球は
ボテボテのゴロだった。

遊撃手・金子が2塁ベースよりの打球に対して、
スライディングキャッチを試みなかった。

だから、捕れる打球なのか、と思った。

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違った。

スライディングしても届かないから、諦めたのだった。


ミラバルの70球目。無情にもセンター前に転がった。

スコアボードのMのHの欄が0から1に変わった。

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結局、目の前の試合は完全試合ではなく、
ただの1安打完封試合になった。

弟から「残念!!」とのメールが来た。
励ましのメールであることは理解出来た。

だが、その言葉の100倍以上、マジへこみしていた。

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結局、単なる春先の、寒い平日の寒い試合観戦になってしまった。
チャンスのテーマなんて全く無かった。
ただ、これがきっかけで、一緒に観戦に行った同期と
非常に仲良くなることができた。

それを考えれば、まあ、良かったのかなぁ、と今になって思う。
半分くらい。
残り半分は正直、今でも悔しぃ~!!の気持ちが強い。

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結局この試合で負けた千葉ロッテマリーンズは開幕9連敗。
その後、連敗は11まで伸びた。
12試合目、神戸でのBW-M戦でついに、連敗は止まった。

そして、何の因果か、
この試合で「連敗ストッパー」となってしまった
BWの川越英隆投手に、
この年'02年から'04年まで続いた
「個人15連敗」というパリーグタイ記録へと、
「連敗の悪運」は乗り移ったのだった。

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完全試合は難しい。
ただ、「人間は完全なものではないんだよ」ということを
この試合は教えてくれたような気がする。

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この観戦記を書きながら、やっぱり悔しい気持ちが蘇ってきた。

この試合のスコアはこちら

ま、いいさ。
一生の「語り草」「ネタ」として使ってやるもん。


['05/02/05]


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