2004/05/10(月)19:34
赤い眼のおやじたちが
わたしの職場の近所には小さな酒屋さんがある。
日中は近所に配達、そして夕方からは立ち飲み屋に変わる。
変わる、というかお客がくると「そうなる」のだけど。
近所の業界紙の新聞社で輪転機まわし終わったおじさんや整理部の宿題をあげたこれまたやっぱりおじさんなどが、17時ともなればここで眼を赤くしている。この店の前を通って駅に向かうので、ついつい「きょうは繁盛してるかな?」とのぞいてしまうのだ。ビールケースを重ねた上にベニヤ板、そこに酒とまわりに仕事を終えたひと。そんだけそろえばそこはすでに酒場だ。酒の場っつうかさ。
時々うっかりガラス戸の奥にある知人の赤い眼に捕捉されてしまい、わたしも酒の場のまわりに群がる格好になったこともある。しかし、立ち飲みはきけんだ。なにせまわりが早い。どうも量かなり飲んでるのかもしれないけど。
常連を標榜する面々は、密かに持ち込んだ「稚内産イカの一夜干し」などをおじさんにトースターであぶってもらい、ぜいたくにも横にマヨネーズつきだ。どうもこれが初回じゃないらしい。あとは店に並ぶ「かわきもの」を選んで買って勝手につまみガハハ談笑する。
実は千代田区内にはいくつかこういうカッコイイ「たちのみや」に変身する酒屋さんがあって、そのどこもが夕方はいい感じに盛り上がっている。
駿河台方面の酒屋さんなんか、手前に「いかにも接待用」な割烹なんかがあるのだけどそこはガラガラで、間口のせまい酒屋はいっつも満員御礼だ。グレイの背広姿あり、普段着風仕事着あり、でもみんな顔も眼も赤いのはおんなじだ。
細い間口からきこえる「がっはっは!」がほんとに楽しそうで、ああ、邪魔しちゃいけないな。そっと観察しよう。そんな気分で前を通る。別に用がなくてもここを通ってガハハを確認してたりもする。東京駅方面も千代田区だけど、ここだってそうなんだぜ。こういう赤い眼を作れる酒場が健在な限り、ここは大丈夫だなあ。なんか、そういう安心感がある。近いものといえば、メキシコのカンティーナの気分。
さいきん、件の業界紙がお引っ越しをしてしまった。
さあ夜の立ち飲みやの運命やいかに?とちょっと心配したけど、大丈夫。新しくできたビルに通う人々が、やっぱりここを発見して引っ掛かっているみたい。通う人は変わっても、やっぱり彼等の眼は赤い。