CASA DE SATCH UMINO

2004/06/29(火)21:49

OLD&NEW@庄内(2)

移動する話(27)

さてさて、あべきゅーを出てからその向かいにある「月の山書房」へ。入り口からいきなり、どこかの家から引き取ってきたたんすだの妙なお面がごろごろしてる。 ここの品揃えも、大好きだ。 奥の番台を見ると、いつものおやぢがいない。 どうしたんだろ、まさか一年でそんなに白髪になるわきゃないし・・・あぁいや別人だった。やっぱりあいさつしとこ。 「こんちは。いつものおやんつぁんは?」 「あー、市内で古い家を取り壊すからって道具取りにいってての。わたしはその間、留守番してるのす」 「どうですか、さいきんは」 「んだのぉ、前よりよぐなったんでないかの」 白髪の留守番おじさんの向かいの椅子には、彼のおともだちがおしゃべりしに来てくつろいでいた。留守番の相手役。 さてさて。 ここは日本のSFなんかがなぜかよく出る。文庫でしか見たことないもののオリジナルの装丁に出会ったりして驚く。 一応店内一周してめぼしいものを手にする。 外は細かい雨が断続的に降る。 別に急ぐことないんだし、ゆっくりと眺める。 時間を気にせず本をながめられるのさえうれしく思う、ってヨユーのない生活をしてるからなのだろうか。だとしたら、ヤだなあ。 黙って店の中をうろうろ、時々足元に積んである道具類に足を引っ掛けたりして。番台方面からはふたりのおじさんの「・・のぅ」「んでの」「んだ、」「んだの」というこの地方バリバリ100%の重くやわらかい語尾だけが聞こえてくる。 あべきゅーとは違う味わい。あー、無理しても来ていがったす!とうれしい気持ちをまたまたかみ締めてしまう。 結局、400円の本一冊お買い上げ。 おじさん、「・・これ、にひゃくえんで、の」 「え?いいんですか!」(ウレシイ) 「いっしょうけんめい、店の中みてくれたからの」 留守番おじさんが半額にしちゃう、というこのええかげんさが大好きだ。いつものおやぢはもっとすごい。酔ってすべてが面倒になると「えーい、もってけ!」などと叫びだす。しかしとてもタダというわけにはいかぬので強引に支払ったりする(ときもある)。 まだ雨が止まないけど、宿にいってみよう。 だらだらと歩いて向かう。 チェックインして荷物を放り出し、細かい雨に濡れた服をドライヤーでぶおんぶおんと乾かす。いつも軽装な旅を心がけているので、替えの服も多くないのだった。 人心地ついてから、新館にあるというサウナ&温泉へ。 宿泊客はなんぼ利用してもいいのだとか。 雨降りの屋上露天風呂、在来線の線路が横を通ってる。 二両編成のベージュ+だだちゃ豆カラーの電車を眺めつつジャグジーで脱力。古書店二軒の時間も贅沢だったが、これまたぜーたく。ほとんど貸切だし。サウナはドライ、ミスト両方完備。水のはった浴槽とサウナ室を何度も往復しているおばちゃんがいる。ツワモノだなあ。わたしはあんなにもたない。これで夕日を眺められたらもっといいのだろうけど、雨に打たれつつ湯につかるのだった。 いいかげん汗かいてあがる準備していたら、さっきからサウナ往復していたおばちゃんもあがってきた。さすがに休むのかしらんと思ったら今度はカウンターに行き「ビールちょうだい」・・・出るんだよ、ここは!でかいタオルを巻いただけでリクライニング・ソファに寝転んでビール。(あーた、そりゃしあわせでしょ。) わたしは明るいうちから飲む習慣を持ってないので早々に出て昼ね。部屋にはモダンジャズの有線が入る。聞き覚えのあるもの、なつかしいもの。一人ブラインド・フォールド・テストごっこをしながらうとうと。ジョー・パスの”Plays Ellington"だったかに入ってるSATIN DOLL。そんなのを聞きながら寝て、おきたらもう夜だった。 窓際の電話が鳴る、フロントが電話の主の名前を告げる。 近くに住む古い友人からだった。

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