CASA DE SATCH UMINO

2005/04/10(日)14:04

経験で人は俯瞰する/「失踪日記」吾妻ひでお

ひさしぶりに新本を買った。 「失踪日記」吾妻ひでお、イースト・プレス刊 今までの作品なら、やはり「不条理日記」がいいな。 これは中学高校んときのある種の仲間うちでの「合言葉」 みたいなもんでしたね。 シュールなのカッコイイぞって時代。個人的には。 (今も続行中かもしれぬが、よくわからん) この時期のまんがって、端っこにちょろ、っとSF風味が 効いてたりしてそのネタわかる人にはうれしい、っていうの 結構あった。これも小さな抵抗だったのね(涙) 「失踪日記」中の「街を歩く」編にそのへんが語られて いるんだけど「職業作家」の苦悩がこれでもか、とクールにたんたんと。 メジャー誌で制約を受け苦しむとこから自販機本へシフトしていく過程で 苦しんでる時期に「吊された男(と妻と猫)」、自由になりかけた時期に 「吊された男(逆位置)」が例のタッチで描かれてるあたりがある意味とても 「わかりやすい」。 全体的にすごいのは「ひとこまひとこまが完成してる」こと。 映画の絵コンテのような。 実体験を脳内のある位置に三脚立ててもう一度再現してる。 「吾妻ひでお」が「野宿の人」として暮らす様子。 徹底して「定点」から見て描いてるとこが、また。 これ読んで「どこで暮らそうと人は人と出会ってしまう」んだなーと思う。 最終的にそれで生き続けてるんだけど。 「アル中病棟」編。 彼、吾妻ひでお氏が入院されていた時期、わたしは仕事で(なぜこんなところを) その病院とおぼしき付近を歩いたことがある。 確かに「同伴散歩」する一行を野川の細い土手沿いに見た。 ひょっとしてあの中にいらしたかもしれないのね。 他の人のレヴューを見て即座に書店直行したなんて、初めてかなぁ。 なんかねー、好きな書き手を応援するなら新本で買わなきゃ、って思うのよ。 フェアトレード流に「売り上げの○○○円は著者のために」っていうの、 あってもいいのにな。 ここに語られてることはある意味「災害」だから。 「失踪日記」から脳内リンクした本。 「シティ・オヴ・グラス」/ポール・オースター 「夜になる前に」/レイナルド・アレナス                   

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