タンジェリンクォーツ もっと自由に
遠くの町からやってきた裸足の男が私の目の前にポケットから取り出したオレンジ色の水晶を見せてこう言った「こいつは俺にラッキーを運んできてくれたんだ。」カリブの島の夕日が私の脳裏を横切った「望みは何一つかなわねえ。信じていたダチにも裏切られた。町は俺がいたということも消しちまって、お払い箱さ。」うつろな目の中に、ため息の混じった空気が揺れていた「俺を見てくれよ、この石と、俺の自由を、あんたの知ってることを。」私は言った。「あなたの言うとおり、あなたはもっと自由に、たった一人で生きられる。」男は石を握ったこぶしを突き上げた。