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ムゥミンの家

ムゥミンの家

身体の機能 1(骨格筋、エネルギー)

骨格筋の機能
筋の収縮様式
筋肉はその長さを短くしよう収縮して力を発揮する.例えば肘を曲げようと(肘の屈曲)すると肘の屈曲筋である上腕二頭筋が収縮し、筋は短くなり肘が曲がる.しかし、そのとき手首が固定されていると筋は収縮しようと力を発揮するが筋は短くはならない.また、上腕二頭筋が発揮する力より強い力で肘を伸ばすように力を加えると、筋は収縮しようとして力を発揮するが筋の長さは長くなっていく.つまり引き延ばされながら力を力を発揮する.
筋がその長さを短くしながら力を発揮する収縮を短縮性収縮(コンセントリック)、引き延ばされながら収縮しようと力を発揮するのを伸張性収縮(エキセントリック)といい、短縮性と伸張性を動的収縮(等張性収縮:アイソトニックス)という.短縮性の中で特に収縮の速度が一定の場合を等速性収縮(アイソキネティクス)という. また、筋がその長さを変えないで力を発揮する場合を等尺性収縮(アイソメトリックス)といい、動的収縮に対して静的収縮とも言う.
筋力はこれらの収縮の仕方により発揮できる力も異なる.
コンセントリックの筋力は、アイソメトリックスと比べて低く、収縮速度が速いほど筋力は低くなる.反対にエキセントリックではアイソメトリックスと比べて高い筋力を発揮する事ができる.

力を決定するもの
筋肉そのものの発揮できる力は筋の断面積に比例する.しかし、人が筋力を発揮する場合、筋力は断面積だけでは決まらない.つまり、その筋肉を使いこなしているか否かが筋力発揮の要因になってくる.人が力を発揮しようとする場合、神経によって筋に刺激を与えなければならない.頭で筋力を発揮しようと考え、神経が筋に命令を伝える時、その命令の量が多いほど筋は一度にたくさんの筋線維を収縮させる事ができ、大きな力を発揮できる.そして、一般的には自分では最大筋力を発揮しているつもり(最大努力)でも実際は筋に最大の命令が伝わっているわけではなく、全体の何割かの筋線維に命令が言っているにすぎない.そしてその割合は個人差があり、同じ量の筋肉を持っていても筋力差が生じる原因となっている.トレーニングによってこの割合をある程度増やすことができる.しかし、100%に持っていくことは不可能である.筋肉の持つ筋力を100%発揮すると、腱や骨、関節、さらには筋自身に負担がかかりすぎるため、一種の防衛措置として制御、抑制されているともいえるのである.声を出して力を出すとより大きい力でることは経験的にも科学的にもよく知られている(シャウト効果).これは声を出すことにより抑制が切れるためだとも、大脳の興奮水準を高めるためだとも言われている.それは自分が声を出さなくても、大きな音を聞かされても同様の効果がある.しかし、シャウト効果などで筋力が大きくなる場合、抑制がはずれているため動きの制御能力が落ちるとも言われている.つまり、筋力は大きくなるがコントロールが低下すると言うことである.したがって、バレーボールなどでサーブを打つ瞬間に「そーれっ!」と声をかけると、打つ力を強くし、コントロールを失わせることになる可能性がある.

関節角度と筋力
肘を曲げようとする時、肘の角度によって最大筋力は異なる.その変化の原因として、
 1.筋自体の長さで最大張力が変化する
 2.関節角度の変化によりテコとしての能率が変わり、外部への伝達が変化する
が考えられ、その両方が重なって最大筋力の変化をもたらす.

筋収縮の力と速度
重いものを持ち上げようとすると大きな力を使うが速く持ち上げることはできないし、軽いものを持ち上げる時には速く持ち上げることができる.逆の言い方をすれば、ゆっくり動いているもの(静止も含め)は大きな力で押すことができるが、速く動くものは小さな力でしか押せず、速すぎれば押すことすらできない.この力(負荷)と速度の関係には一定の法則があることが確かめられている.筋は強い力を出す時にはゆっくりとしか収縮できず、軽い負荷ならば速く収縮することができる.
力と速度をかけたものをパワーという.パワーは横軸に力、縦軸にパワーとしたグラフを書くと、山なりの曲線となる.最大パワーは最大筋力の約35%の時に現れる.

筋力とパワー
パワーとは力と速度の積であるから、力が無くても、あるいは速度が無くても高いパワーは得られない.一般的には筋力とパワーは同じと考えられていることが多々あるが、筋力とパワーは異なるものである.たしかに、最大筋力の高い人ほど最大パワーも高い傾向にあり、特に高負荷でのパワーは筋力の高い者の方が高いパワーを発揮する.しかし、低負荷でのパワーにおいてはあまり差が無くなり、筋力の低い方が高いパワーを発揮する場合もあり得る.その理由は、パワーは力×速度であるから、筋力が上がったことでパワーは向上したが、速度が向上した訳では無いからと考えられる.したがって、スピードをつけたいがためにパワーの向上を図ったとしても、筋力をつけただけでは意味がない事を示している.意味が無いだけならまだ良いが、筋力をつけたことで筋肥大により体重が増えると、身体が負荷として増えスピードが落ちてしまう事があるため注意が必要である.

筋線維の性質とその働き
筋線維は大きく2つの性質の異なる線維、速筋線維(FT線維)と遅筋線維(ST線維)に分類できる.速筋線維はその名の通り収縮速度が速く、力も大きいため、素早い動作や力の要る運動に重要な働きをする.しかし、疲労しやすいという特徴を持つ.遅筋線維はあまり大きな力を発揮することや速く収縮することはできないが、持久的な能力に長けている.遅筋線維は酸素を取り込むための毛細血管が発達していて赤く見えるため赤筋、それに対して速筋線維は白く見えるため白筋ともいう.
FTとST線維が混じり合って1つの筋を形成しているが、その割合は個人よって異なり、それが運動能力に影響を与えていると言われている.一流選手の比率を見ると競技種目と密接な関係があることがわかる.例えば、マラソン選手ではSTのしめる割合が非常に高く80%以上である.一方短距離選手ではFTが60%以上を占めている.
この筋線維タイプの比率はトレーニングや食事などの環境条件によるものであろうか? この筋線維タイプの比率は遺伝的影響を強く受けていると言われている.しかし、FT線維はさらにAとBの2つに分類され、Aは遅筋線維と速筋線維の中間の性質を持っていると言われ、この線維はトレーニングによって遅筋線維あるいは速筋線維に近づくと言われている.また、筋によってはトレーニングによって比率が変化したという報告もあるが、変化しないと言う報告もある.それに、線維タイプの特性は変化しない事は明らかになっている.つまり、トレーニングによっては刺激される筋線維タイプが違うためその発達状況によっては比率は変わるが、遅筋線維が速筋線維に変わることは無いという事であろう.したがって、遺伝的な筋線維で運動能力が決まるわけでは無いが、やはり遅筋線維が80%以上の者が、短距離競技を行うのはあまり適さないと言わざるを得ない.すなわち、筋線維タイプの比率が競技特性の合っている選手の方が有利だといえる.

筋収縮のエネルギーと供給

筋収縮のエネルギーはATP
よく炭水化物や脂肪が筋活動のエネルギーであると言う場合があるが、それは厳密に言えば間違いである.筋活動のエネルギーとなるのはATP(アデノシン三燐酸)のみである.ATPはアデノシンに3個の燐酸が結合したものである.燐酸とアデノシンは高エネルギー結合をしており、その結合が破れる時に結合のために使われていた高エネルギーが放出される.ATPは筋肉以外にも存在するが、筋細胞内で分解すると筋収縮のエネルギーとなる.つまりATPが分解されると「ADP+P+エネルギー」となり、このエネルギーが筋収縮のエネルギーである.(ADP:アデノシン二燐酸)
ATPが筋肉を動かす唯一のエネルギー源であるが、体内に貯蔵できるATP量にも限りがある.そこで分解されたADPをATPに再合成する必要がある.そのときに合成のためのエネルギーを補給するのが、クレアチン燐酸、グリコーゲン、脂肪である.

エネルギー供給のシステム
ATPが分解して筋にエネルギーを供給し、クレアチン燐酸(CP)やグリコーゲン、脂肪によって再合成され、またATPが筋にエネルギーを供給していくと言う過程をエネルギー代謝という.エネルギー代謝は有酸素的過程と無酸素的過程とに大きくわけられ、無酸素的過程はさらに非乳酸過程と乳酸過程にわけられる.
筋中のATPが消耗すると、筋中にあるクレアチン燐酸が分解してATP合成のエネルギーを供給する.クレアチン燐酸によるエネルギー供給は酸素を必要とせず、乳酸を生成しないので非乳酸過程と呼ばれる.
グリコーゲンは分解され、ピルビン酸を経て乳酸に還元される.その過程でエネルギーを算出しATP合成に供給される.この過程は無酸素でエネルギーを供給するとともに乳酸を生じるため、乳酸過程と呼ばれている.
このような無酸素下でのエネルギー供給は長続きしない.なぜならATPもCPも少量しか貯えられていないし、乳酸過程での乳酸は蓄積とともに乳酸過程によるエネルギー供給を妨げるからである.したがって運動を持続するためには有酸素的過程からのエネルギーによってATPを再合成する必要がある.
グリコーゲンは、筋グリコーゲン、肝グリコーゲンとして貯えられている.筋グリコーゲンが不足すると肝グリコーゲンがブドウとなって血液を伝って筋肉に運ばれる.グリコーゲンと脂肪は酸素が十分であればクレブス回路を経て二酸化炭素と水に完全分解されて多量のエネルギーを供給する.しかし多くの反応を経るため、供給の速度は遅い(詳細は後述).この過程でのATPの合成はエネルギー工場(パワーハウス)と呼ばれるミトコンドリア内で行われる.
運動後の回復期には、有酸素的反応によって乳酸の消却、ATPやCPの補充される.乳酸は酸素が与えられるとその80%がグリコーゲンに再合成され、残り20%が酸化されてATP合成のエネルギーを生む.

エネルギー供給量の限界
車のエネルギー源であるガソリンもタンク容量に限界があるように、ATP合成のエネルギー供給過程もそれぞれ容量に限界があり、供給の速度にも差がある.
CPによるエネルギー容量は体重1kgあたり100calにすぎない.しかし供給速度は、13cal/kg/秒 と最も速い.したがって、供給速度は速いが容量が少ないため約8秒間と持続時間は短い.
乳酸過程では容量が230calで、速さが 7cal/kg/秒 であるから出力が最大だと約33秒の持続時間である.
したがって、無酸素的過程のエネルギー供給は約41秒が持続限界時間と言うことになる.
有酸素的過程のエネルギー容量はほぼ無限だと言って良い(運動にとっては).しかし、反応の過程が多いため、供給速度は 3.6cal/kg/秒 と遅い.


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