2006/08/08(火)00:24
「大銀座落語祭」~可朝・雀々
休日。
朝、テレビ。
「落語研究会」、昇太「そば清」。いよいよそんな時代になってきた。
今日も昼から新橋へ。
「大銀座落語祭」3日目。
ヤマハホール、「危険な香りの落語会」。
これこそ「大銀座」でしかありえない夢の企画、のはずだったのだが。
開演直前に到着。
いちばん後ろの席で。
客席中央付近に、めがねにカンカン帽のお客を発見。さすが、熱心なファンになると可朝師匠のコスプレをするものなのだな、と感心していたのだが、よく見たら吉川潮先生だった。
ほか、松尾貴史のすがたも。
第1部。
ちよりん「子ほめ」。ヤマハホール担当ということか。
夢之助。何故、ここにこのひとが出てくるのか不思議。「寿限無」と「たらちね」が結婚する噺。危険な香り、まったくなし。
可朝。出囃子にのって踊りながら現れる。着物にカンカン帽。登場から完璧。
「いやぁー。ようこそいらっしゃいました。いやいや、ほんまにねぇ。ようこそ来てくださいました。ありがとうございます、ほんまにねぇ。いやぁー、ほんまにありがとうございます。」
「今日、じつはこのあと出てこないかん横山ノックさん。ちょっとノックさんについて触れときますわ。」
ノック先生、緊急入院で来られないのだと。僕は開演ぎりぎりに着いたので、ここで初めて知ることになる。
慰謝料1200万円。「せやからねぇ、予算がなかったらできまへんで。」「女性の柔らかい部分は高い。硬い部分は安い。せやから、予算に合わしてやらなあかん。ほんまにねぇ。ほんまでっせ。いや、ほんまにねぇ。」
「わしも野球賭博で捕まった。今はそんなことしてまへんで。今は花札一本や。」
「住吉駕籠」。超貴重な可朝の落語。芸に対する情熱のようなものを、ここまで感じさせないひともほかに居ないのだが、さすが、米朝仕込みのきれいな語り口。しかし、古典なのにカンカン帽はかぶったまま!
可朝師匠、なにからなにまで素晴らしすぎます。
第2部。
そういったわけで、主役の横山ノック、まさかの緊急入院。
1部開演前にアナウンスがあったらしいが、突然わかったわけでもあるまいし、おもてに貼り紙でもしておいたらいいじゃないか。ノック先生目当てで来る客が多いのだから、希望者には料金を払い戻すぐらいのことをなんでしないのだろう。寄席の代演とはわけが違うのだ。
まず、勢朝が登場。
ノック先生の代わりに、小朝、正蔵が登場。3人でトークとなる。
小朝師から経緯について説明があり、「元々、ノック先生が、いろいろと放送で言えないようなことを話すはずだったじゃないですか。今日は正蔵が放送で言えないようなことを…」と強引なパス。
正蔵師自身のスキャンダルから始まり、ぽろぽろぽろぽろ出るわ出るわ。ついには、リアルに苦手なひとの名前を連発。落語界裏相関図が見えてくる。
小朝師、正蔵師の、ノック先生の穴を埋めようとする想像以上のサービス精神。話題が停滞すると、勢朝師がすかさず単刀直入なことを言うのも傑作。
何故、あの師匠やこの師匠は「大銀座」に出ないのか。小朝師は、ただ、わからないと首をひねるばかり。僕が邪推するに、どうも小朝師のところのスタッフがあまり優秀ではないのではないか。この小朝師がつまらない凡ミスをするようにはどうしても思えないのだが。
最後に質問を受け付けるが、あまり手は上がらず。おそらく関西の客が多いのだろう。東京の落語家に通じていないと読み込めない話題が多かっただけに、それがやや惜しいところ。
トーク30分ほど。元々のプログラムがどうだったのかわからないが、このあとは普通に落語会。でも、メンバーは普通じゃない。
談笑。「居酒屋」パロディ、店員がビルマ人。
勢朝。「紀州」。いつもながら、虚実入り混じった楽屋話を散りばめ。
小枝。このトリも貴重かも。「落語かぁ。どうしよっかなぁ。」と繰り返しながらも、結局は漫談のみ。ロケ話中心。小枝の基礎体力の確かさ。自虐的だが明るく、底抜けにくだらない。「ノックさんて、ほんとすごいひとなんですよ。セックスを発明したんがノックさんなんですよ。」には爆笑。
雨。
食べるところを探すのに、けっこう苦労する。無駄に歩き回る。
なか卯、あいがけカレー。
ドトール、時間つなぎ。
再び、ヤマハホール。
こちらもこちらで危険な香りのような気がしないでもない。
客席に、山中秀樹アナ。
第1部「らくごのないらくご会」。
進行、笑福亭猿笑。「憧れのハワイ航路」の替え歌で軽快に登場。上方落語協会唯一の江戸っ子。「こちらのほうに戒名が出ております」みたいなことを平気で言うタイプ。つるっぱげのお爺さんなのだが、「今日は素晴らしい歌手のかたをお呼びしております」と言って、サングラスをかけただけで「サンプラザ中野!」。
露の団四郎「百面相」。とてもアナクロな芸。これをこのまま後世に伝えるのは、ちょっと無理だと思う。アレンジすると、ただの「顔まね」になってしまうし。
桂米八「独楽」。関東の演芸ファンにとっては、三増紋之助などでさんざん観ているからなにも驚かない。
桂朝太郎「マジック落語」。眠ってしまって、記憶なし。
桂文福「相撲甚句・河内音頭」。この師匠はくだらなさの塊なのだが、この芸のなにがすごいのかはよくわからない。それほど難しそうには見えないから、ほかのひともやればいいのに。
第2部「上方の人気者」。
八天「饅頭怖い」。先に好きなものを言い合うのは上方のかたちなのだろうか。東京のかたちより自然な展開に思えた。
小米朝「稽古屋」。同時刻には別会場で「坊ちゃん5」なんてものもやっているのだが、こちらで小米朝を観てしまうと、「坊ちゃん5」という名称すら虚しいものに思えて。
雀々。25年前、ヤマハホールでの「全日空寄席」の想い出から。新人のウッチャンナンチャンと共に、小さん師にあいさつに行く。小さん師とのやりとりを、しみじみとせず、ただただ笑い話として。「くしゃみ講釈」。いやぁ、雀々がこんなに面白いとは今まで知らなかった。個人的に、今年の収穫。ハイテンション、高密度、笑いたっぷり。東京では志らく師がジェットコースター落語と評されることがあるが、まるで接点はないのに共通するものがある。来年は、「雀々・志らく二人会」というのも意外性があっていいんじゃないだろうか。
‐仲入り‐
きん枝「孝行糖」。三枝、文珍より、語り口が端正。
ここでトリの八方なのだが、めくりをめくり忘れる失態が。客から指摘されて、すかさず飛び出てくる小米朝、雀々のフットワークの軽さに救われる。
八方「坊主茶屋」。人間のダークサイドへの視点に可朝イズムがあるような。
終演後、ロビー物販。初日からずっと迷っていたが、やはり欲しくなって、「六人の会」メンバーのバッジを記念に購入。1000円。
しかし、これだけのビッグネームがそろったこの会の入場料と、バッジの値段が同じってのもどうなんだか。
これにて、今年の「大銀座落語祭」は終了。
こちらが慣れたせいもあるが、去年に不満だった点はだいぶ解消できた。
それなりに満足な3日間。
東京駅八重洲口。
揚州商人、冷やし黒酢麺。
帰宅。
特になし。