2006/09/10(日)21:34
「戯曲を考える」別役実
休日。
昼、関内へ。
県民ホール6階大会議室、戯曲セミナー「戯曲を考える」。
先月の宮沢章夫に続いて、2回目。
講師、別役実。
先月は気がつかなかったが、6階なので、窓から見える海がとてもきれい。今日は天気が良い。
客層は先月よりもやや年配のひとが目立つか。
先月もとても面白かったのだが、今月のほうがよりわかりやすく、具体的で実践的。非常にためになる。
戯曲を書くには、まず、型を身につけるということ。
型というものは、おそらく理知的に教わることはできないもので、無意識に身体感覚で覚える以外にないのだろうと。
いちばん良い方法は、どこかの劇団に入って、座付き作家になること。芝居作りの雑用をこなしているうちにだんだんと身についていく。
仕事を持っていたりして、どうしても劇団に入るのが無理というひとは、芝居をたくさん観ること。それも、劇団員のようなかたちで入り込んで観ることが重要。自然状態におくとわれわれは評論家的になってしまい、知的には型を理解するかもしれないが、身体的には身につかない。
お金もかかるし、機会も少ないというひとは、名作の戯曲を自分なりに書き替えること。これも評論家的ではなく、どうやれば面白くなるかと具体的な意図をもって書き替える。または、翻案する。名作というものを食べちゃうことで身につける。
近代教育の過程で、徒弟制度のように盲目的に型を踏襲することに対する拒絶反応を植え付けられてしまうが、写生教育以前の前近代には模写教育が主流だったわけで。近代の絵画などを観ると、たしかに歯切れが良くていきいきとしていたりするのだけれども、こざかしくてスケールが小さく感じてしまうと。
後半は書き方について。
書きたいことがなくても、戯曲は書ける。表現手段というよりも造形的な手段として、工芸品的に作り上げてゆく。
書きたいことがないひとにはコントがおすすめ。
コントは書きたいことがなくても良い。ひとコママンガの典型的な状況から展開をつけ、どのように人物が動いて、どのようにオチをつけるか。人間観察の豊富さみたいなものは要求されるが、別にテーマがなくても、ひとつの演劇的なものが工芸品的にできあがる。
われわれは書きたいことをどのように思い浮かべるかというと、ストーリーとして思い浮べる。戯曲を書くには、ストーリーをどのようにプロットに置き換えるか。
「王が死に、王妃が死んだ。」というのがストーリーで、「王が死に、悲しみに暮れて、王妃が死んだ。」というのがプロット。
事実が「そして」で繋がっているのがストーリーで、「なぜなら」で繋がっているのがプロット。叙述律と因果律との違い。でも、これはどこでも教えることだが、理屈ではわかるが、実際に役に立つかといったらそうでもないのだと。
プロット感覚は組み立て感覚が重要で、因果律よりも組み立て感覚として理解したほうが、より具体的。
場面を作るときに、ストーリーを否定してプロットだけで書く。なにについてしゃべってるかはわからないが、口調だけで関係性を浮かび上がらせることで、現場感覚が身につく。
コントを書く場合、精神の自由さが必要になる。ものが書けなくなったときには、嘘をつく前の精神を思い出すこと。“ポーカーフェイスの精神”を身につけることが重要。
質問コーナー。原稿を書いたら誰に見せたら良いか。いちばん良いのは演劇仲間に見せること。既成の偉い作家に見せるのはあまりおすすめしない。同時代の駆け出し同士が見せ合うほうが有効ではないか。
2時間、無駄なし。さすが、戯曲セミナーで教えているだけあって、とても整理されている印象。充実の時間を過ごした。
けっこう空席があるのに隣りの席に座るひとが居て、なんだよと思いつつ、顔を見たらOだったのでびっくりした。
別役先生の弟子みたいなものだから、来ていても不思議はないのだが、まったく考えていなかった。
講義終了後、別役先生とあいさつを交わしていた。そんな間柄だ。
Oに会うのは2年ぶり。2年は長いのか短いのかよくわからないが、あまり変わった様子もなく、まだ戯曲に関わっているようで安心した。
Oと、Oの戯曲仲間のひとと3人で食事。
ジョナサン。
注文を取りに来た若い男性店員、ひとりがカレーとドリンクバーを頼んだ時点で、「ドリンクバーはみっつですか」と確認してきたので、「みっつです」と答えると、「ご注文は以上でよろしいでしょうか」。
冷静なトーンで間違えてるのが、かなり面白かった。
食事後、関内駅まで歩き、横浜駅で別れた。
横浜西口、寄り道。
ビブレ。ユニクロ、買い物。
また、左眼が痛くてたまらなくなる。
なんなのだろう。医者に行くべきか。
帰宅。
日記更新。
眼が痛いから早く眠りたかったのだが、ほかの部分は元気なのでまるで眠くならない。
HDD残量確保。
テレビ。「談志・陳平の言いたい放だい」。
「納涼談志寄席」前半。磁石、紋之助、志らく師「青菜」。
志らく師が「乞食」と言っちゃってるのを普通に放送するMXテレビの態度は立派。