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テーマ:芸能ニュース(18593)
カテゴリ:演劇 その他
朝、浅草へ。
数日前、財布のなかに、今日が期限の横浜・東京間の回数券を余らせてしまっていることに気がついて、なにか、東京の東側に行く用事はあっただろうかと考えたら、ひとつ見つかった。 家にいると眠ってしまいそうだから、早めに出る。 10時前にはもう着いてしまった。 これはさすがに早すぎる。 せんねんそば、朝のかきあげセット。 ドトール。 時間つなぎ。 浅草演芸ホール前で、笑組のかずお先生を目撃。 浅草ロック座。 もはや説明不要でしょう。例の公演、11日目。 初日の報道だと朝から大行列ができているようだったが、10時前にロック座前を通った時点では誰も並んでいなかった。まぁ、建物のなかまでは確認しなかったが、たいした行列でないことはたしかだろう。 開場時刻、11時半を少し過ぎてから到着。開場時刻を過ぎているので、さすがに列はできているのだが、それでも、建物から少しはみ出る程度。劇場は2階にある。 入場料、8000円。通常の料金よりもだいぶ高い。 入り口で厳重な荷物検査。行ったひとのブログなどで事前に情報は入れていたので、なるべく荷物は減らしてきたけれども、まぁ、劇場に入るのにここまで検査されるのは初めてだ。そんなに怖い調子ではなかったが、カバンのなかに手をつっこまれるし、簡単なボディチェックもある。僕の前にいたひとは、小物ケースのなかまで丹念に調べられていた。チケット売り場の前には、没収されたらしき時計がぶらさがっていた。 場内へ。独特のすえた匂い。 席はまだまだ余裕ありで、どの席でも選べたのだが、ストリップに慣れてないのでどこの席に陣取っていいかわからない。デベソの左側に適当に座る。 開演までだいぶあるので、本でも読もうかと思っていたが、薄暗いのですぐにやめる。 12時前、朝にメールで誘っておいたHさんがやってきた。隣りの席へ。この時点ではまだ空席があったが、次第に埋まってゆく。開演前には、ほぼ満席になっていたんじゃないだろうか。 場内アナウンス、伊沢千夏。いよいよ開演だ。 1部、開演。 ロック座のホームページでタイムテーブルは確認してきたのだが、香盤表の見方がわからなかった。始まって、観ているうちにだんだん理解する。 まず、踊り子さんが数人出てきて、ショーがあって、メインの踊り子さんがひとり残って脱ぎ始めるという、それが基本パターン。このショーがなかなかあなどれない、というか、本格的で素晴らしい。なにかのテレビ番組でインタビューに応えていた観客のひとりが、興奮気味に「伝統芸能です!」と言っているのを観たが、なるほど、それはあながちおかしな発言でもない。そのひとの意図は知らないが、浅草のショービジネスの伝統はここに残っていたか! と思わせるものがたしかにここにはある。 1景、加瀬あゆむ。和装で登場、和太鼓の演奏でにぎやかに始まる。太鼓をたたいてから裸になる、そこには一見、なんの脈絡もなさそうだが、祝祭事に太鼓はつきものである。アメノウズメこそが日本最古のストリッパーであるとする説を取れば、天照大神が天岩戸に隠れたときに、太鼓が鳴っていたとしてもなんら不思議はないはずだ。神事としての文脈がここにあるとすれば、浅草の観音様は浅草寺だけではないということになる。 2景、月川ひとみ。一転して、チャイナドレス。衣服を脱ぎ捨てて裸になる行為は、和から中国へと文明をさかのぼる行為にも似ているが、ストリッパーはある種の遣隋使と言えるかもしれない。BGMは椎名林檎。「林檎」とは、アダムがかじった智慧の実とも解釈可能だが、裸になったときに現れたのは、果実ではなく中華焼きそばでありました。 3景、光矢れん。いきなり聴こえてきてのは、なんと、「もののけ姫」のテーマ曲! DAISHI DANCE「theジブリset」の収録曲だ。「ライオン・キング」がニューヨークでミュージカルになっているように、「もののけ姫」が浅草で舞台化されているとは多くのジブリファンが知らない事実だ。これもやはり、人間と神とをつなぐ裸というテーマが感じられる。「あの娘を解き放て!」という観客の願望が届いたかのごとく、最終的には、まっくろくろすけが飛び出したことは言うまでもあるまい。 4景、沙羅。男装で剣劇。「沖田総司はBカップ」な「幕末純情伝」を彷彿とさせる華麗な立ち回りは、“浅草5656イズム”を感じさせる、女剣劇とストリップの融合と言えましょう。クライマックスのBGMは、柴崎コウがRUI名義で歌う「月のしずく」。映画「黄泉がえり」の主題歌をここで使うとは、謹慎生活から黄泉がえった草なぎ剛への、「裸、何が悪い!」に対するストリップ側からの解答と考えても良いだろう。 5景、伊沢千夏。まさかの人形振り! ちゃんと後ろに人形遣いがついて、伊沢千夏が人形を演じる。先日、シネマ歌舞伎で坂東玉三郎の本物の芸を観たばかりなので、さすがに玉三郎にはかなわないが、男だらけの歌舞伎に対して、女だらけでこれを演じる、まさに、芸能の性転換がここにはある。ラブドールを生身の人間が演じるような倒錯は、成人指定の「トイ・ストーリ-」といっても過言ではない。 1部終了。休憩。 気がつけば、場内は立ち見でいっぱいになっていた。 小向美奈子による場内アナウンスがあり、2部、開演。 2部は全編を通して小向美奈子が主役だ。1部は和モノが中心だったが、2部は洋モノ。 ホームページの香盤表には1景が2回出てくるのだが、これはどういうことだったんだっけか。いきなり小向美奈子が現れたような印象だったが、違っただろうか。ほかの踊り子さんを把握してないので、記憶に自信がない。それにしても小向美奈子は、ヴォリューミーなからだつきで圧倒的に存在感があった。 2部には男の役者も登場する。シルクハットに赤いタキシードの男が狂言まわしのような役どころ。あと2名、アクロバティックな体技でそれぞれ盛り上げる。 1景、沙羅、桜庭彩。途中までは小向美奈子が主役のように見えるが、脱ぐのは別の踊り子さん。ピーターパンを思わせるファンタジックな世界観。BGMは「星に願いを」。小向美奈子はまるでおとぎの国に迷い込んだ少女のような雰囲気で、それはそのまま、ストリップの世界に迷い込んだ小向美奈子の心象風景とも重なる。ベッドがトランポリンになっていて、ぴょんぴょん飛び跳ねるのだが、トランポリンになっているせいもあって、このベッドが人間に比べてとても大きい。これが結果的に、人間を小さく、未成熟に見せる効果を生んでいて、押井守の「スカイ・クロラ」とまったく同じ演出法になっている。 2景、小向美奈子。聴こえてきたのは「ビバリーヒルズ青春白書」のテーマ曲! はちきれんばかりの制服に身を包んだ、というか、包みきれてないハイスクールギャルが、男子生徒と繰り広げるいけないダンスタイムの幕開けである。ポールダンスも披露するのだが、高校の設定だから、ポールではなく、のぼり棒と呼ぶべきだろうか。小向美奈子のダンスははっきり言えば下手なのだが、それが逆にエロさになっている。洗練は退屈と紙一重なのだ。ここのメインは小向で、制服を脱げば黒の下着姿。デベソまで出てくるが、ここではまだブラも取らない。 3景、空まこと。トム・クルーズの「カクテル」の世界。カクテルはおとなの女の象徴といっても良いだろう。第1景から続けて観ると、夢見る少女から青春を謳歌する女子高生へ、そして、おとなの女へと成長した、ある「女の一生」が浮かびあがってくる。これは是非、NHKの朝の連続テレビ小説にしていただきたい。 4景、加瀬あゆむ、光矢れん。ここに伊沢千夏も加わったトリオで、あたまから妖艶な世界。ランジェリーの名称がわからないが、なんて言えばいいんだろう、胸の下側だけを持ち上げてるあれですよ。黒でそろえて小悪魔感強し。そこへさらに小向美奈子が加わるからただごとではない。小向は白で身をかため、よく観るとブラがシースルー。これはもう、ある種の視力検査である。伊沢千夏と小向美奈子はメインでないから途中でひっこむが、しかし、あとのふたりも充分に強力だった。 5景、小向美奈子。「シカゴ」や「キャバレー」を思わせる、きらきらしたスパンコールの衣装に身を包んだ踊り子さんたち。今、この瞬間、ロック座の舞台がブロードウェイになった。このショーの演出家には、“浅草のボブ・フォッシー”の称号を与えたいぐらいだ。さぁ、いよいよ、本日のメイン中のメインイベント。ひとり舞台に残った小向美奈子は、白い下着姿になり、まるいクッションに身を沈め、デベソまで運ばれてくる。回転するターンテーブルのうえで悶える小向美奈子。あとは雑誌等で報道されているとおり。ゆっくりとブラをはずし、舞台の奥へと歩いてゆくと、客席に背を向けたまま、パンツを降ろしたところで奥から強い光が当たり、そこで暗転となった。 6景、フィナーレ。全員登場。このあふれる多幸感、嗚呼、じつに人生とは素晴らしいものであるか。そんなことまで思えるほど、圧倒的な、“性”と“生”を肯定する2時間半であった。ひとくちにストリップといっても劇場によって違うのだろうが、ロック座の場合はしっかりとした演劇であることがよくわかった。ここでは、ありとあらゆる芸能がストリップに昇華されている。ロック座の歴史は伊達ではない。あらゆる芸能関係者は一度は観劇すべし。 といったわけで、5年間ブログを書いてきて、俺はいったいなにを書いてるんだろうと思うことも多々あったが、今日はその最たるもんです。 ロック座を出て、浅草をぶらぶら。 次項へ続く。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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