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カテゴリ:テレビ その他
「爆笑問題のニッポンの教養」スペシャル、「表現力!爆笑問題×東京芸術大学」。2009年8月17日放送。
菊地成孔「わたし、ジャズやってんですけど、あのう、さっきずっとお話になってた、権威の問題だと思うんですよ。最初、権威的なものが、だんだん、下位権威というか、最初は外道だったものが流行んなって、権威が上にあがって、で、外道だったものが、さらに外道だったものが上にあがって、さらに外道だったものがっていう。で、僕が思うに問題は、例えば今、太田さんがおっしゃってたような、クラシックはもうキャンプだから、キャンプってのはもう古臭い権威ってことだけど、キャンプだから誰も聴きに来ないってことじゃなくて、尊敬してると思うんですよね。僕、ジャズやってますっていうと、ジャズなんか聴いたことないひとが『わぁ、すごいですね、素晴らしいそれは』って言うんですよ。だから尊敬してんの。してるんだけど、聴きに来ないっていうような状況があって、たぶんそれ、クラシックもそうで、『いやぁ、すごいですねクラシック』っつって。『クラシックやってんの? だっせー』ってあんまり言われないと思うんです。逆に尊敬されたまま生殺しにされてるような状況だと思いますよ。」「そこで話ぐるぐるまわっちゃうんだけど、えーと、ときおり談志師匠が地上波に出るってことがあるようなインパクトによって、あ、やっぱり本当のミドルはすげぇんじゃん、っていうような、えーと、要するにレコンキスタっていうか、失地を回復するような感じで、っていうことしか今んとこ考えらんないですよね。けど、われわれが思ってるよりもコンピューターのアーカイブってのは強くて、じゃあ、談志師匠の片鱗をね、芸の片鱗を、ちょっとYouTubeで観てみようってことになったら、まぁ、昔に比べるとだいぶ観れる。」 学生の質問に応えて、太田光「われわれの、さっきのね、新人のお笑いのやつらっていうのは、今、1分ネタっていうのがもう主流なわけ。そうじゃないとチャンネル変えられちゃうから。観てくんないの、それこそね。そうすると、1分にしろって言われるわけ。インチキみたいなプロデューサーがいっぱい出てきて、あれ削れこれ削れって言われるわけ。それでも、10分、20分、1時間のライブに、本当は観せたいんですよ。でも、すごくそれはプライド傷つくんです、われわれでも。でも、そこでやっぱり大事なのは、そのジャンルが大好きっていう気持ちと、平気でそのジャンルを、乱暴なものにいじくられても、いいよこれ、っていう、それが両方必要な気がしてるわけ。」「われわれ『ボキャブラ天国』って。ね、『ボキャブラ天国』って番組で、まぁ、一般的には知ってもらったんだけど、あれなんかダジャレですよ。で、当時、プライドで、あんなものやらないって言ったやつはいっぱいいたんです。あのう、なんつうか、使い捨てみたいなところで、やってられるかっていう気持ちがあった。だけど、それは、そういう局面くると思うんだよね。つまり、レコードを出す、CDを出すときに、レコード会社のやつらが、ちょっとこれジャズ入り過ぎちゃってっから、もうちょっとわかりやすくしてくんないみたいなさ。自分のジャンルをひとに知ってもらいたいけど、そのために魂売んなきゃなんない局面が、プロとしての、なんつうの、やってくうえでは、絶対にあると思うんだよね。誰しもあったよな、そんなこと。だからそんときに、どれだけ突き放せるか、そのジャンルを。漫才師って呼ばれなくたってかまやしないよ、ジャズミュージシャン、お前は単なるポップス奏者だって言われても、いいもんあたし、っていう、俺は逆にそっちのほうが、守ろうっていう気持ちよりも、もしかしたら必要になってくるかもしれない。と思うんだよね。」 菊地「今、太田さんが言う共通語ってのはマスメディアのことに聞こえちゃうんですよね。」「その感じは、テレビが中心にあるって世の中の考えかただと思うんですよ。そのぉ、インターネットももう、ちょっとした奇妙なおもちゃじゃないですよね。あのう、ひとつのマスメディアになりつつあることは確かで、えー、批評もされるし、場合によっては作品を加工もされるし。だから、その流れのなかで、テレビが中心にあるっていう一種の信仰みたいなね、それが変わればもう世の中変わるわけで、具体的にもう変わりかけているっていうなかでの大学生だと思いますよ。」 菊地「今、こうやって一緒に話せば、爆笑問題のおふたかたも、みんなも、表現者という意味ではおんなじだっていうテーブルに座りますけど、いちばんの違いは、テレビを主戦場にしているひとと、そうじゃないひとっていうかたちになってて、太田さんが言ってるいろんな説ってのは、テレビを主戦場にしてるとそういうふうになってくんのかなっていう聞こえかたがある。で、先生がたが言ってることは、芸大にいるとそういうふうになってくんのかなっていうことで、結局、そこの戦いじゃないけど。」 菊地「僕が思うのは、生々しさっていうのはどんどん増してると思う、かえって。パソコンなんかによって。今日だって、生まれて初めて、テレビでいっぱい観てるけど、初めてこの至近距離で田中さん観るってことでちょっと興奮してるわけですよね。その、生々しさがあるわけ。で、その生々しさも、じつはそんなに保たないんだけど。2時間ぐらい経っちゃうと、もう、ああ、テレビで観てるあの感じだっていうふうに戻ってきて、ちょっともう今、眠いんですけど。(笑) 暑さもやられちゃって、あるんですけど。だけど、オルガンもそうだし、クラシックもそうだけど、うーん、漫才もそうだし、もう、ジャズもそうなんだけど、いざ聴いたらすごいね、生々しいね、っていうのは、10年前、20年前より、はるかに上がってると思うんですよ。マスメディアが発達したおかげで。だから、どんなもんでも今、もうチャンスないかもってみんな、オルガンのひととかね、油絵のひととか、チャンスないかもって思ってるかもしんないけど、生々しいのを観せれば絶対動かせるんだって自信はみんなあると思う。で、追い詰められてるだけに、一発逆転の可能性は上がってんだっていうふうに考えたほうが、希望はあんじゃないかなと思うんだけど。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009年08月25日 15時35分37秒
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