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庵理恵の私的書物

庵理恵の私的書物

無題1-1

数日前の彼の言葉が、私のココロを侵食していた。理想と限界の真ん中で、気持ちは揺れていた。あたしはケイの瞳を直視できるだろうか。コンビニから歩きながら、眼下にひっそりと建つ病院がやけに小さく見えた。階段を上り病室のドアを恐々開けた。カラのベッドと開け放たれたカーテンが揺れてた。焦燥感に背中を押されながら廊下へと駆け出した、誰も、いない、、ひっそりと、白い空間が広がる。目を凝らすと、煙草の煙がほそく、たなびいている。窓から外を見てるケイがいた。気配を感じたか、「おはよ」と、ひとこと言うと、また視線を外へ落とした。「ケイ、、大丈夫?」、と。声をかけた。ケイはポケットからおもむろに財布を出すとあたしに手渡し、「頼むな」そう、言い放ち去ろうとした。
待ってよ、、ケイ。 何かあったの? ケイ、、あたしの口からは言葉は発されなかった。彼の姿は、みるみるまにそこには無かった。

疲れた重い身体を待合室の椅子に置くのは、少しばかりの後悔と安堵してるあたしであった。

気がつくと、大粒の涙がぽろぽろあふれてきた。
止まらない理由など、いらない。 まだ、泣けてる自分を感じながら、涙をぬぐった。



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