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トールも製作に関わったオラクルカードです♪

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2011年10月27日
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※作中えぐい表現があります。苦手な方はお気を付け下さい。



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<死神>と呼ばれたグラディウスが、まだ10代半ばの少年の頃の話。


背中の激痛で、一瞬目が霞んだ。
戦場でそれは命取りだ。右腰に重い一撃を受け、衝撃で前にのめる。どうにか踏みとどまると、振り返りざまに相手の脇をかいくぐって致命傷を与えた。

片手で傷をかばっていては戦えない。
患部の筋肉に力を入れて、血止めを意識する。手持ちの布を巻きつけて戦い続けどうにか帰還したものの、やはり傷は開いて戦略部に出頭するどころではなかった。
背中の大火傷もまだまだ、ようやく歩けるようになったばかりだ。
医務室へ行き先を変更するのは勇気が要るが仕方がない。

戦闘員にとって、医務室行きは死神の賽をふるのと同じことだ。
治療にかこつけてありとあらゆる実験体に使われる可能性が高いから、皆ぎりぎりまで避けるか、逆に医師を圧倒できる余力があるときに選択しようとする。

壁に手をつき足をひきずりながら医務室に向かう足元に血が垂れる。
医務室の扉を開けて… 倒れ込むように、意識が飛んだ。 …不覚。


次に目が覚めたのは、強い腐臭に満ちた暗闇だった。
遠く強い痛みと腰の傷をくすぐられるような感触。飛び交う虫の羽音。
隅に縦長に漏れている光に向けて、どうにか体を動かそうともがいてみる。臭く冷たく固い、布に包まれた何かに阻まれる。
右腰の傷に当てた手の指の隙間から、ぼろぼろと蠢きながら零れ落ちてゆく何か。

(蛆…。ここは死体置き場か)

手元の何匹かを払い落し、残りはそのままにしてよろめきながら横に積み上がる死体によりかかる。立ち上がろうとする膝ががくがく震えた。
熱が出ているのか意識が朦朧とする。
瀕死の重傷を負って意識を飛ばした自分を、医局は廃棄処分に決定したのだ。
死体と認定して解剖実験のための仮置き場に放り込んだのだと、ざっと状況を把握する。

しかし、ここで死ぬわけにはいかない。
普段、あれほどに生きている意味などないと思っているのに、自殺せずとも死ねるこの環境はチャンスであるはずなのに、なぜかそう思った。

ここで死ぬわけにはいかない。生き延びなければならない。
あのひとに会うために。
それが誰か、なぜそう思うのか、まったくわからなかったけれども、その気持ちは消えぬ熾火のように、思いのほか強く身体を動かした。

壁に押しつけて立ち上がった身体を文字通りひきずって、奥の光を目指す。記憶が正しければ、研究棟の解剖室に繋がっているはずだった。
途中左手でポケットを探り、小さなナイフを探り当てた。刃は鋭く研いである。少々心許ないが、無いよりはずっとましだ。

暗闇を足先で探りながら歩く中、大儀そうに長く尾をひく自分の呼吸音がやけに大きく耳に響いた。息をする音と心臓が脈打つ音。普段は聞こえないはずのその音が、瀕死だ休めと警鐘を鳴らして脳内を占拠する。
身じろぐたびに腐臭が鼻をつくのは、どうやら自分から発しているかららしかった。

(…俺か。腐っているのは)

自嘲気味に唇の端をゆがめて扉の手前に足を止め、呼吸を整えて中の気配を探る。
一人… 動きは素早くない。
そっとドアノブに触れると、鍵はかかっていなかった。
中の人間の気配を完璧に把握して、手前に来たところでドアを開け、左手のナイフを喉元に突きつける。

これだけの動きでもぬるりとした冷や汗が噴き出たが、眼鏡をかけた青白い顔の医師を脅して、治療を開始させることには成功した。
椅子にもたれて背中を向ける。鏡を通してやっていることは監視していた。

「あの、横になったほうが…」
「要らん。麻酔も要らんからそのままやれ」
「しかし、縫合しなくては」
「構わん」

振り向いた瞬間、刺された点滴のうち一つの管をナイフで切り裂いた。麻酔薬の入った栄養剤。こんなところで眠っては、よくて死体置き場戻りだ。
目論見を見透かされた医師は、舌打ちをしたそうな表情になってかがみこんだ。傷口を覆っている蛆虫をビニール袋に取ってゆく。
蛆は腐った肉汁をすすり再生を促すから、今回は蟲に救われたことになる。喰われる感触はあまり気持ちのいいものではなかったが…。

麻酔抜きの縫合にもうめき声ひとつ出さない。もうずっと痛みには慣れ過ぎて、感じることそのものをやめてしまった。
額には汗の玉が浮かんでいたが、さりげなく横にあった布でぬぐう。所詮、戦闘員は使い捨てのきく駒か玩具。本物の痛覚も涙も要らぬのだ。

「終わりました」
「全治は?」
「火傷もまだ治っていませんし… 最低でも三か月は」
「どうも。 …通報するか?」

刃を突きつけ紅い瞳でじっと見つめると、医師は苦笑をうかべて首を横に振った。

「しません。すれば間違いなく貴方に殺される。私は自分が生きているほうがいい」
「よし。交渉成立だ」

立ち上がり、備蓄のゼリー状栄養食や当座必要な薬品をいくつか手に入れて自室に戻る。入室コードはまだそのままだったから、死体扱いにされてから48時間は経っていないらしい。

背と腰に当てないように注意してどうにかシャワーを浴び、ベッドに転がった。火傷をさせられてすぐは全面が燃えるようで、立つことも座ることも眠ることもできなかった。あのときに比べれば、今はずっと楽だ。冷や汗をかきながらでも、少なくともうつ伏せになっていられる。

時計のデジタル表示を確認し、あとどれくらい眠れるかを計算する。オフは何日あったろうか。
戦闘に出られなければ、あっという間に廃棄処分されてしまう。傷病休暇をくれる上司はほとんどいないから、長く休むことは死への切符を切ることだ。
それに戦場に出る前にはトレーニングもしておかなくては、行った先で殺される。
進んでも戻っても留まっても、戦闘員を待ち受けるものは… 死。

まずは眠れるときに眠らなくては。
しかし完全に眠ってはならない。
うつ伏せの手元にいくつかの小さな銀玉を握り込み、ゆっくりと息を吐く。

どんなに疲れていても、どんなに朦朧としていても、意識のすべてを手放してはならないのだ。
死体置き場に放られたくらいなら、まだましな方なのだから。















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【銀の月のものがたり】 道案内

【外伝 目次】


ちょっと前に激落ちしてたときの話。
相変わらず、シックスアイルズのグラディウス話はえぐくてすみません (汗

でもここがなかったら今の私は確実にいないと思うし、
今日は蠍座の新月だから徹底的でもまあいいかなっていう理由で←

これで週一更新だとあんまりですので、一段落までの3話くらいを
あんまり間あけずに更新しようかなあと思っております。
ヒーリング募集もかけなくちゃですが。

しばしおつきあいいただければ幸いでございます。


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最終更新日  2011年10月27日 14時52分35秒
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