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2011年11月11日
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「ああ~…」

乾杯の後冷たい発泡酒のジョッキを握ったまま、オーディンは年輪のざらりと浮き出た店の木机に突っ伏した。
隣のニールスが、さりげなく背をぽんぽんと叩いてくれる。

約束通りセラフィトの奢りで飲みに来た店は、落ちついたカントリー調の内装で静かすぎず賑やかすぎず、士官クラスならわりと気軽に入れる店だ。
どちらかというと軍人御用達な趣で、飢えた男たちの腹を満たす食事メニューが充実している。
半個室の落ちつける場所に席を占めると、分厚い木材の肌触りが頬にここちよかった。

張りつめていたのが緩んだのもあるし、何より隊長が強すぎてあきれる。
手合せは初めてではないがあきれる。というか毎回こんな感じだ。

がっくり果てたオーディンの向かいでは、揺らめくろうそくの灯りをはさんでエル・フィンが無言でジョッキを傾けていた。
左の壁際では、セラフィトが面白そうに二人を眺め、アルディアスに何事か囁いている。

上司殿はといえば、細長い曲線を描く小さめのグラスを片手に、相変わらずゆったりと唇に微笑みを浮かべて僚友の話を聞いていて、二人の疲れの見えないその様子にもオーディンはあきれた。

この部隊になってそこそこの自分だってこうなのだ。合同演習で一緒になっただけの連中が、半死状態になったとて仕方はない。
突っ伏した体勢のまま横目でちらりと上司たちを確認して、改めてゆっくりしみじみとため息をつく。

「はあ~…」

身体じゅうの酸素を吐き出して、ようやくオーディンは起き直った。
そのタイミングを待っていたように、セラフィトが全員にむけて口を開く。

「……で、例の件だけどな」

ひそめられたその声に、全員が少し耳をそばだてた。和やかだった場が一気に引き締まり、皆わずかに顔をよせる。
セラフィトは少し前のめりになりながら声を落とした。

「いまいちだ。やはり手強いな」
「……」

アルディアスが一瞬静かに椅子の背にもたれ、目を閉じる。早急に片をつけてしまいたいところであったが、なかなかそうもいかぬらしい。
無言を続けるエル・フィンの瞳が、強いネオンブルーにきらめいた。
少しテーブルを見るような感じで考えていたニールスが、セラフィトの話を組み入れ、現時点でのまとめを報告する。オーディンはそれらを聞きながら、タイミングを失って手にしたジョッキの酒を飲めずにいた。
できれば一網打尽にしたいものの、なかなかスクリーニングにひっかかってこない。あたりはつけてあり、外れている可能性は低いのだが、具体的証拠をつかめなければ仕方がなかった。
冷えた水滴がジョッキの表面をすべって落ちてゆく。

それに気づいたアルディアスが、さりげなく自分のグラスに口をつける。ようやく喉を潤して、オーディンが大きく息をついたときだった。

「あの、すいません」

遠慮がちに背後から声をかけてきたのは、違う部隊の数人だ。中央の赤毛の若者の背を、両脇の先輩と友人が押している。

「フェロウ准将… 大神官さまですよね? あの、今度こいつが結婚するんで。よかったら祝福してやっていただけませんか」

その言葉に、テーブル全員の目が奥の壁際にいたアルディアスに注がれた。目をしばたたいたアルディアスが、気軽に笑って席を立つ。こんなことには慣れているのだろう。
銀髪の男は店の邪魔にならないような位置に立つと、緊張している若者の額に手をかざした。

「結婚おめでとう。ヴェールの花が満ちるように、二人の未来が幸せに満ちているように」

ふあん、と祝福のやさしい光が流れたように感じたのは、オーディンの気のせいであったろうか。敬虔に頭をたれていた若者は、ぱっと顔をあげると右隣の先輩の背を押し出した。

「ありがとうございます! それであの、先輩んとこは来月奥さんに子供が生まれるんで」
(おいおい、こっちも今は勤務時間外だぞ)

オーディンの唇から洩れた小さな呟きは、テーブルに座るものだけがかろうじて聞き取れた。口には出さずとも、皆同じ思いではあるのだろう。セラフィトが苦笑している。
しかしアルディアスはにっこり笑って、金髪を短く刈り上げた男の手をとった。

「では君の手に託すよ。祝福のうちに安らかに生まれ、楽しく輝ける日々を過ごすように。家に帰ったら、奥様のお腹を撫でてあげてね」
「はいっ。ありがとうございます、大神官様」

軍服を着ている相手に呼びかけるのも不思議なものだが、実際にそうなのだから仕方がない。
どういたしましてと応えて席に戻ると、セラフィトが苦笑のままで言った。

「相変わらず、二足の草鞋も大変そうだな。奥方と一緒のときもこうか?」
「いや。さすがに女性と二人だと遠慮されるらしくてね。席を立ったタイミングなんかには言われることもあるけれど…。祝福してほしいというのを、無下にもできないしね」
「やれやれ。外じゃほろ酔いにもなれんか。気が休まる時がないな」

親友の溜息に、アルディアスは軽く肩をすくめただけだった。

「准将の銀髪は目立ちますしねえ」

ニールスがちらりと向かいの半個室に視線を投げつつ呟く。そこに席を占めている男たちの中に、先程の赤毛の若者とその先輩がいた。
間近で祝福を受けてどうだったかと、同僚たちに質問攻めにあっているようだ。完全に仕切られているわけではないので、ある程度の声は互いに聞こえる。

それから何かを思いついたように、ニールスは少しはっきりした声を出した。

「先日のお呼び出しでは、誤解もはなはだしくて大変でしたね。あの方がああいうご趣味だったとは知りませんでした。エル・フィン、君も槍玉に上がってたよ」
「は? 俺がですか」
「そうそう、准将と仲良いと昇進しやすくていいとかさ。階級が上にしては嫌味のレベルが…」

テーブルの者にだけ片目をつぶって語尾を濁す。
こころえたセラフィトが片手に酒杯を持ち、大仰にアルディアスの肩を抱えるようにして応えた。

「もうこいつときたらこの外見だろ? 若いころからさんざんそういう目に遭ってるんだよ。そうだよな?」
「まあねえ……。ありがたいことに、全部未遂で終わっているけれど」
「今じゃでかいけど、ガキの頃はほんとに細っこくてな。オーディンは知ってるか」

斜向かいの男たちが聞き耳を立てているのが気配でわかる。彼らの耳と好奇心を感じながら、オーディンは慎重に口を開いた。

「ああ、知ってる。女に間違われることもあるんじゃねえかって思った」
「美人だから、うっかりするとどっかに誘拐されてたかもなあ?」
「闇ムービーとか… 怖いですよねえ」

しれっとニールスが続ける。

「個人の嗜好をどうこういうつもりはないけれど、対象が子供だったり暴虐なものだったりするとね……。 やはり、ぞっとするよ」
「そういう嗜好は数年で変わるようなものでもないでしょうしね。十五年前も、好き者は同じことをやっていそうです」

恣意的に微妙に話題を混ぜながら会話は続く。

「子供って言えばさ。今年もあれ、やるんだろ? 神殿の」
「ああ、うん。冬祭りのお楽しみだからね」

ヴェールの冬祭りは、夏の大祭に比べるとずっとおとなしい。もちろん実際は神事があるのだが露出が少ないため、大衆にとってはどちらかというと神殿色の薄い、様々な出店やイベントがたのしみな祭りになっている。
期間中神殿の正門は解放され、ずっと参道の両脇に、飴やら揚げた芋やら様々なおもちゃやらを扱う店が並ぶ。季節ごとの市の出展もあるから、内容もさまざまバラエティ豊かだ。

正門内では高舞台がしつらえられており、期間中に一度だけ、子供たちの無病息災と健やかな成長を祈って飴が撒かれる。
一人にひとつ、なるべくたくさんの子供に、というのが約束だから、きれいに包まれた飴を運よく手にした子は舞台前から退き、後ろの子たちと交代することになっている。
それでも神殿内でだけ栽培されている、ヴェータも原料となる果実の汁を煮詰めて作った珍しい飴だけに、小さな胸は期待ではずんでいた。

「毎年盛況だもんな。賑やかなのが何人くらい来るんだ? (こないだ空爆してきたルビィキャットだが、さっきの演習に混じってた。基礎体力が足らんでへろへろだったが、子供に間違われそうなくらい小柄だったぞ)」

セラフィトの声に、思わず銀髪の男は友人を見直した。ルビィキャットの機体マークと話は聞いていても、外見特徴までは知らなかったのだ。

(空戦隊は混ざっていないのかと思っていたよ。他に貸すかもと聞いていたからね。では相手した中にいたのかな?)
(3戦目だったかな。小柄で赤い髪と朱色の瞳、耳の横に細い三つ編みをたらしてる)
(ああ、わかった…… なるほど、彼が)

ふらつく足で木刀を振り上げていた姿を思い出して、アルディアスはふっと苦笑した。彼より30cmほど小柄な姿は、パイロットとしては確かに最適だろうが今日の演習はきつかったに違いない。
まるっこい童顔は西方に多い顔立ちだが、聞いていた年齢よりも確かに若く見える。
アルディアスは手元のグラスを傾けると、声を戻しセラフィトに答えた。

「さて。飴は毎年千個くらい作っているはずだけど、残らないねえ。 (紅い翼は人数が減ってきて、全体異動の話もちらほら可能性レベルで出ているよ。引き抜きかけてみようかな?)」
「千個ぉ? 思ったよりずいぶん作ってんだな。でも足りねえんだったらもっと作ればいいんじゃねえの。 (いいんじゃねえ? あいつはうち向きだ。とりあえず研修で囮捜査ってのどうだ)」
「……人使いの荒いことだねえ」

部隊長兼大神官は苦笑した。
















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【第二部 陽の雫】 目次


お待たせしてすみません。111111ってことで物語本編再開♪
下書きはずいぶん前にしてあったのですが、なんかアップできずにいたら
急に必要が出て、今日になって書き足した部分があったりするのが
さすがプロデューサー様の采配って言うか←

今日出せってことなのねそうなのね 苦笑



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最終更新日  2011年11月11日 17時15分14秒
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