2016/04/11(月)12:08
こうもり
書こうと思いつつ、だいぶ日がたってしまいましたが、宝塚大劇場に「こうもり ーこうもり博士の愉快な復讐劇ー /エンターテイナー」を見に行きました(3月28日)。主演が専科から星組トップスターになった実力派・北翔海莉さんなのでどうしても見たくて。
「こうもり」は、そう、あのヨハン・シュトラウス2世の有名なオペレッタです。
私はもう20年以上前にウィーン国立歌劇場とフォルクスオーパの日本公演を、その頃はまだまだ若くて元気だった母と見に行きました。カウンターテナーのコヴァルスキーがオルロフスキー役で、その前にテレビでメゾソプラノが同じ役をやっているのを見た時には単なるへんな脇役と思っていたのが、本当はこういう役だったのか、と目からうろこが落ちたのでした。
それはさておき、宝塚版ではファルケ博士(北翔 海莉)がアイゼンシュタイン侯爵(紅 ゆずる)に復讐を仕組むようになったいきさつから始まります。たしかにそのほうがわかりやすいですね。
ファルケは舞踏会でしたたか飲んだ夜、アイゼンシュタインに人通りの多いところにしばりつけられ、「こうもり」とあだ名をつけられてしまったことを恨みに思っていました。そして退屈で笑う事もなくなって贅沢三昧の生活にも倦んでいるロシア貴族オルロフスキーに、大晦日の晩にその邸宅で一大喜劇を繰り広げてみせる約束をします。
アイゼンシュタインは警官侮辱罪で収監されることになってしまいましたが、ファルケはその前に美しい女性たちもたくさん来るパーティーでせいぜい楽しもうと誘い出します。
オルロフスキーにファルケはアイゼンシュタインをフランス貴族だと紹介、刑務所長も女優志望の女中アデーレ(妃海 風)も身分を偽って現れます。フランス人どうし、フランス語で話されては、と言われてアイゼンシュタインと刑務所長が珍妙な片言を繰り出す場面、いつ見ても楽しいです。
オペレッタだと、アイゼンシュタインの留守中に妻の結婚前の恋人でテノール歌手アルフレートが来てずうずうしくアイゼンシュタインのガウンを着込んで食卓についたところを警察が迎えにきて連れて行ってしまうのですが、清く正しく美しい宝塚だからか、妻も出かけ、召使いが主人の食事を食べようとしているところに警察が来るように変更されています。
アイゼンシュタインの妻もハンガリー貴族女性に扮してオルロフスキー邸のパーティーに登場してチャルダッシュを歌うのですが、宝塚のは、アデーレがその貴族女性に扮します。そのおかげで、アデーレのアリアとチャルダッシュの両方の聞かせどころの歌を娘役トップスターが歌って、存分に歌唱力を発揮して楽しませてくれます。
オペレッタでは仮面をつけて歌ったハンガリー貴族女性を妻とは知らずにアイゼンシュタインが口説くところが笑えて、次の場面になって、刑務所にアイゼンシュタインが出頭するとすでに収監済みだと言われ、そこにアルフレートを出してもらうために弁護士を連れてきた妻がやってきて、ちょっと険悪になりかけるけれど、結局なにやらお互い怪しいところがあるけれどまあいいか、めでたしめでたしとなって、「ウィーン気質」と共通の、洒落っ気があってちょっと享楽的なウィーン礼賛となるのですが、宝塚版はファルケがまじめにアデーレに接近したり、私には少し不自然に思えてしまいますが、出演者たちのレベルの高さと、衣装や舞台装置の華やかさを存分に楽しめる舞台でした。
宝塚版には、映画「嘆きの天使」でマレーネ・ディートリッヒに破滅させられてしまうラート教授も登場します。
後半のショーはThe Entertainer! で、こちらも歌、ダンス、衣装、すべてがきらきらして楽しかったです。