本の足跡

2007/01/31(水)21:43

桐野夏生

か行 女性(20)

“ジオラマ”評価:★★★★☆ 短編集。全9話。ただひたすら繰る返される毎日。そんなありふれた日常にほんの少しの変化が訪れる・・・。彼らは一体どこへ向かうのか?慧眼の鋭さと巧妙な筆致。桐野さんってすごい。この人の全作品読破したいリストに仲間入りですね(笑)特によかったのは、『六月の花嫁』、『井戸川さんについて』、『蛇つかい』です。『六月の花嫁』は、自分が手に入れられないものを持つ人に対して抱く感情、妬み、嫉み、羨望、憧憬・・・そういったものを絶妙な筆致で描くとともに、オチには驚かされます。『井戸川さんについて』と『蛇つかい』は、阿刀田高さんの『黒子』、『虚像』と相通じるものがあります。すなわち、他人って、自分からみれば○○な人でも、他の人から見れば××な人だったり、△△な人だったり、評価は全く異なったりする。それって、どれもその人であって、どれもその人でなかったりして。タイトルの『ジオラマ』はそれを端的かつ如実に表現していると思う。阿刀田高さんの本の中に『一パーセントの例外で、全体を評価するのは正しいことではあるまい』っていう記述があったけど、この本を読んでその言葉を思い出した。人は他人を評価するとき必ず主観が入ってしまうんだよね。だから、ちょっときつい物言いをする人がいたとしてある人はそれを聞いて『この人はつっけんどんで気が強くて嫌な人』と思うかもしれないし、また別の人は『竹を割ったような性格で、サッパリしていていい人だ』と思うかもしれない。事件が起こると、ニュースなんかで、犯人はとても特異な変わり者みたいに報道されるけど、私だって穿った見方をすればとてつもない変人になるだろうし・・・。他人の評価なんて所詮そんなもので、結局自分をちゃんと評価できる人なんていないのかもなぁ~と思う。自分でさえも自分の事なんて分からないもんだしね(笑)桐野さんの洞察力の鋭さには舌を巻きます。いいねぇ~♪

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