本の足跡

2008/09/12(金)22:55

重松清 『その日のまえに』

さ行 男性(43)

 【Amazonで購入】      【楽天ブックスで購入】“その日のまえに”評価:★★★★★ 連作短編集。全7話。 たいした起伏もなく、「以下同文」と端折られてしまうような毎日が、時々怖くなる。平凡。平和。平穏無事。そんな言葉でまとめられる毎日の、冗談みたいなもろさを、ぷくさんは知っている。(P70より)  母ちゃんがいて、俺がいれば、世界中どこでも「わが家」になるのかもしれない---たとえそこが、病室であっても。(P197より)  テーマは“死”。自分の大切な人の死、自分自身の死、それがはっきりと宣言されたら、人はどうするか?残された限りある時間をどう生きるか?深いです。私は常々、動物もの、子供もの、病気もの、これらを扱った本は卑怯だなーーと思ってます。それは、下手くそな作家が書いても一応は涙を誘うから。だからこそ、上記のテーマをありふれた安易な結末にせず、リアルに描ききるには才能が必要なんだと思います。それを!!それを!!見事に描き、さらには、物語としてもすばらしくできあがっているこの本はすばらしいの一言です。“死”はややもすれば、美しく、残酷で、世界を変えてしまうようなすごく衝撃的なものだと描かれることも多い。でも、私はそうは思わない。“死”は静謐で、あくまでも単なる“死”にすぎないんだと思います。つまり、いくら自分の大切な人が死のうと、日常は何も変わらない。時間は同じように進むし、周囲の環境も同じまま。お腹も空くし、眠くもなる。“死”の前後で、大きく日常が変化するなんてことはない。でも、だからといって大切な人の死の意味が軽いわけでは決してなくて。なんていうのかな?何も変わらないんだけど何もかもが変わるようで。でも時がたてば薄らいでいってしまって・・・。なんと言っていいやらわかりませんが(;^ω^A この小説では、三文小説で描かれるような大仰な“死”の描写でなく、静謐な“死”というリアルな感覚が見事に描かれています。きっと、大切な人の死に直面したらこうなるんだろうと思えます。そして、“死”のあとの、残された人々の生活もきちんと描かれてます。感動的な死でラストーーなんて単純な話じゃなくて、きちんとそのあとまで描かれているんです。そこがまた考えさせられます。絶対泣くもんかっ!!と意地になって読みましたが、やはり涙を抑えることはできませんでした。かろうじでこぼれ落ちるのは防ぎましたが(笑)壮大なテーマを見事に描ききってるところもさることながら、読ませるテクニックもすごいですよ。ずっと読んでてもなぜ“連作”短編集なのかわかりません。単なる短編集なんじゃ?と思ってたところ、最後を読んでなるほど!と膝を打ちます。はぁ~(*´ー`)いいです、すごく。重松清さんって天才です。リアルなんだけどなんか、ほんの少し希望というか、救いがあって。とにかくすごい作家だと思います(*^m^*)この本、読み終えたあともひきずります・・・余韻から抜け出すのに苦労しました・・・(;^ω^A === 93冊目 読了 === ← ランキング参加中デス♪よろしければポチッとお願いします★

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