「個別指導専用教材がある。」その話を聞いて、早速、その教材を拝見した。画期的な教材であった。その教材を作った塾のシステムもよく練られたものであったが、何より教材の中身がよい。
何がすごいのかって、「誰でも指導できる」のだ。カンタンに言えば、「講師用マニュアル」と「テキスト」を一体化させた教材、それが個別指導専用教材である。
その教材が、業界に与えた影響は大きかったのだろう。今年、2社から個別指導専用教材が発売された。今後も新たな個別指導専用教材が出てくることが予想される。
しかし、どの教材にも弱点がある。それは、新中問やシリウスのような一見完璧なテキストにだって存在するものだ。当然、個別指導専用教材にも決定的な弱点がある。
その弱点とは、「生徒の学力を上げる」という観点よりも、「いかに指導しやすいか。」という観点の方が優先されていることである。
つまり、「生徒側視点」ではなく「講師側視点」、いやもっと言えば「経営者側視点」になっているのだ。
個別指導専用教材を製作し始めた段階では、おそらく「生徒の学力を上げたい」という強い気持ちがあったのだと推測する。
しかし、指導のしやすさを追求するにしたがい、自然と講師側視点に力点が移動していったように思う。
「素人でも指導できます」というのが、こうした個別指導専用教材の「売り」なのであるが、逆に言えば「素人が指導できる問題だけに絞っている」とも言い換えることができる。
生徒のレベルに合わせているわけではなく、教務力に自信のない個別指導塾や講師のレベルに合わせているので、
難しい問題、教えづらい問題、思考力が必要な問題、ややこしい問題、長い文章題、講師側に予習が必要な問題は、微妙なラインでカットされている。
つまり、「基礎中心」の問題編成になっているのだ。ただし、ここで言う「基礎」とは、中学生対象の補習塾の先生が使う「基礎」という意味である。
この「基礎」という言葉は大変あいまいで、おそらく大学受験指導をしている先生が使う「基礎」という言葉と、高校受験指導とりわけ補習塾の先生が使う「基礎」という言葉は、
その意図している範囲もレベルも全く異なっている。
そこに大きな問題がある。