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源にふれろ

菊島隆三

『野良犬』

 大学生の私はシナリオライターになりたい、と思ったものの、どう書いていいかわからないまま4年生になってしまった。野田高悟の『シナリオ構造論』を読んでも、「別冊宝島」のシド・フィールドを読んでも、わからない。いま思えば単純なことで、書きたいことがなかったのだ。
 ある日、英語の勉強法について話していると、「学ぶ」の語源は「真似る」(古語で「まねぶ」)だと、国文科の友達が言った。なるほど、その通り。筆写は何より勉強になるだろうと思って、大学の図書館に行き、黒澤明全集を借りると、この『野良犬』を書き写し始めた。当時はパソコンなんてなかったから、原稿用紙に手で写した。ただの思いつきで始めたので、30枚まで書き写したところで疲れてやめた。数年後、本格的に脚本家を目指そうと決めた時、その続きから書き写した。結局、全部書き写すのに、足掛け5年くらいかかったことになる。「刑事もの」の原点で、そのエッセンスがふんだんに入っている。

『男ありて』『女が階段を上る時』『六人の暗殺者』『兵隊やくざ』
家族・女性・時代劇・アクション・・・・。ジャンルを問わず次々と名作を生み出した作家を他に僕は知らない。倉本聰は菊島隆三のホンから、構成を学んだという。菊島隆三のホンは確かに、構成が骨太で一本通っている。邦画を嫌う人がよく挙げる日本映画独特の「女々しさ」「うじうじした感じ」が全くない。常にカラッとしたものを感じさせる。ハリウッドに生まれていたら、次々とヒット作を書いていた気がする。いちばんハリウッドに近い日本人ライターと言えるかもしれない。


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