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四十路の旅路

Dec 24, 2004
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テーマ:詩(589)
カテゴリ:私的創作文

***

前略、
お元気ですか?

寒さが募るとは言え、
暖冬のおかげで、12月も12月らしからぬ様、
師走なのに、どこか気忙しさを感じないのは
私だけでしょうか。
毎年の厳しい寒さが、年の瀬を告げていると言うのに、
こう暖かいと、のんびり正月を迎えてしまいそうな気分です。
いずれにしても、お風邪など召されていませんでしょうか?
あなたの事だから、間違いなく元気な事と思います。

さて、私の生活も随分落ち着きました。
そちらを離れる時には、一体どうなる事かと
我ながらヒヤヒヤしたものですが、
住めば都と言うように、
住めば済んでしまう事なのでしょう。
はっきり言って、何事にも不自由致しておりません。
御心配をお掛けしましたが、
持ち前のバイタリティーで、うまく乗りこなしております。

住まいは割と都心の方で、何処に行くのにも大変便利な所です。
街中に住むようなガラではない事は、
あなたも御承知でしょうが、
なんだか板に付いて来ました。

職場も流行の先端を行くような所で、
全く性に合わないのですが、
田舎者は俄然開き直って大いばりで、
名店の軒先きだろうが辻だろうが
構わず闊歩しております。

暮らすには十分。
何の不満もありません。

ただ時折、触れたいと思う景色が
ここにはありません。
それは、あの橋の上からの景色です。
私が、初めてあなたと言葉を交わしたあの場所は、
ここにはないのです。
あなたはあの時、私に
「夕日きれいだね。」と
すれ違い様に言ってくれました。

二日に一度は観られる、あの街の夕日。
私はここに来て、一度も夕日を観た事がありません。
ビルの谷間では15時を過ぎると、
すでに日が陰ってしまいます。
時々切にあの夕日が恋しくなります。
そして、あの橋の上を吹き抜ける
凍てついた風に、吹き晒されたいと思います。

あなたは元気でやっていますか?

そう言えば、引っ越しの時に、
私は家中のガラクタをひっくり返して、
鞄二つでここに来ました。
家中はからっぽになり、大家さんに鍵を返して、
何もかもなくなって、私が住んで居た証拠の一切を手放しました。
何もなくなってしまったけど、
あなたとの思い出がぎっしり、鞄に詰まっています。

あの峻烈な日々と、冷たい風を味わう事はありませんが、
不自由なく暮らせているのは、
あの日々があったからかも知れません。
二人で描く事のなかった未来を、
今と言うのでしょう。

なかなかお会いする事ができませんが、
帰った折には、またゆっくりとお茶をしましょう。

しばらくの暇を、またお手紙致します。

メリークリスマス

***






Last updated  Dec 24, 2004 01:14:41 PM
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さとう4632

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