第20話 双子があけた扉桜蘭高校ホスト部第20話 双子があけた扉 雪の中のベンチに座っている幼い双子は、どっちが光でどっちが馨だか分かるか尋ねています。 尋ねられた女の子は答えます。 「僕らはずっと2人で1つ。僕らは2人で唯一の存在。これはとっても大切なこと…」 その8年後… 双子は中等部2年生 「だけど僕らは別々の存在。僕じゃない方が光で、光じゃないほうが僕。そのことは僕らにとって…」 窓の外を見ていた双子。 来たよと光が言うと、女の子がいました。 その女の子と話す光。 「ごめんね、待ったでしょう?手紙読んだよ。」 「光くん…」 「いや、悪いけど、僕、馨の方」 「えっ!?」 「君、僕と光の机、間違えて手紙入れたでしょ?でもさ、僕じゃ駄目かな?」 「え!?」 「実は僕、君のこと、ずっと可愛いって思ってたんだ。光は他に好きな子がいるみたいだし…ね、駄目?」 「あ、あの…私…私も…馨くんさえ良ければ…」 「へぇ~。おーい、馨。この子、お前でもいいってさ」 「え!?」 木に隠れていた馨が現れます。 「あの、あなた本物の光くん!?」 「つまんないの。このパターンももう飽きたな」 「ひどい、ひどいわ!!」 泣いている女の子を睨む光。 「ひどいのはそっちでしょ」 「え!?」 「どっちでもいいなんて君、何様なわけ!?」 「それと君、その髪形似合ってないよ。僕らとお付き合いしたけりゃセンス磨いて…」 「「次はもっと面白い告白してね」」 その様子を隠れて見ている人がいます。 手紙を破る光。 双子はビリビリになった手紙を見て笑っています。 笑いながら去っていく双子。 破かれた手紙と共に残された女の子は泣いています。 「酷いことするね」 女の子にハンカチを差し出す環。 「大丈夫?可愛いお嬢さん」 面白い際と見つけたのでゲームするか馨に尋ねる光。 この前のネットゲームはと尋ね返す馨。 弱い奴ばっかでもう飽きたと言う光。 「つまらないものはさっさと消去。それが僕らのモットー」 常陸院の双子っておっかないよなとか、いつも見下してるよなとか、でも父が仲良くしておけってとか、きっと自分たち以外は誰も好きになったことないんだろうなとか、ひそひそ話しているクラスメイト。 「それは違う。僕らにはたった1人だけ僕らが気に入った世話係のお姉さんがいた。もう随分前のことだけど…」 10年前 常陸院邸・中庭 なんて可愛らしいんでしょう、まるでお人形さんみたいだと褒められている双子。 中庭でパーティーのようなことが行われているっぽいです。 青が光くんで、ピンクが馨くんだったかしらと言う褒めていた女性。 双子はお姫様のようなドレスを着ています。 違うよ、おばさんと言う光。 蒼が光で、ピンクが馨だと。 いつも間違えて馬鹿みたいだと言う馨。 2人とも本当にそっくりだからごめんなさいねと言う女性に、おばさんは蛙にそっくりだけどねと双子は言いながら、蛙を女性の顔へ。 悲鳴をあげる女性。 その女性に駆け寄るメイド(世話係)。 「その世話係が好きだった。それまでのご機嫌取りや愛想笑いの奴らとは少し違ったから…」 金庫の鍵を開けようとしている世話係。 それを見ていた双子に驚いた世話係は、双子に何しているのか尋ねます。 夜の探検だと答える双子。 見つかったら仕方ないと静かにするように言いながら、ナイフを取り出す世話係。 このスイッチを押すと警備員が駆けつけるんだってと言う双子。 押してみようとする双子を止めようとする世話係。 その金庫の番号だよと番号の書かれたカードを持っている馨。 僕らと遊んでくれたらこのカードをあげてもいいと言う双子。 世話係は何して遊ぶのかなと尋ねます。 どっちが光くんでしょうかゲームを始める双子。 ベッドで横になっている双子。 ちゃんとカードがあるか光に確認する馨。 貯金箱に隠してあるから、割らないと取り出せないと言う光。 「僕たちはきっとそのお姉さんに見分けて欲しかったんだと思う。お姉さんが好きだったから」 眠りにつく幼い双子。 警報機の音によって目覚める双子。 そう、金庫が開けられていたのです。 ロープの梯子を使って逃げる世話係に約束破ったなと言う双子。 私にはあんたたちを見分けることなんてできないよと世話係はもしかしたらあんたらを本当に見分ける奴なんて一生現れないかもねと言います。 「僕らが気に入っていた唯一の世話係のお姉さんはそう言い残し、夜の闇へ消えた…。僕らは着実にねじれて成長していった」 貯金箱は割れていました。 「そして、気安く人を近づけさせないバリアを張り続けた。それでも、そのバリアに気づかない程に鈍い奴が極偶に近づいてきたりする」 「君たち、暇そうだね」 本を読んでいる双子に話しかける環。 顔を上げる双子。 「暇ならどうだ?俺と一緒に部を立ち上げよう」 誰だこいつと言う光に、僕知ってると馨がクラスの女の子が騒いでいるだろうと、去年の春に編入してきた須王のと言います。 こいつがそうなのかと言う光。 「そうか、そうか、そんなにも俺は有名か…。何て罪深き俺!!外面からも内面からも滲み出る輝きは誰の目にも留まってしまうのか。あぁ…こ、これは…神に魅入られてしまった男の定めだというのか…!!」 須王環中学3年生夢想中。 そんなこと言ってないけどと言う馨。 「いや、しかし安心したまえ。俺には及ばんかもしれないが、君たちもなかなか見所があるぞ」 何の話だと言う光。 「部の始動は2ヵ月後の4月からだ。俺が高等部に上がったら、すぐにでもと考えている。君たちは1年間中等部から通ってもらうことになるが、その辺は俺が話を通しておくから。楽しいぞ、他には俺のクラスの鳳鏡夜だろ、それから高等部1年の埴之塚先輩と銛之塚先輩を勧誘中だ。そこに君たちが…」 「「煩いな!!どっか行ってよ」」 誰ともつるまないと言う馨と、あんたに興味ないと言う光。 どうしても僕たちとお近づきになりたいのなら、どっちが光くんでしょうかゲームに挑戦するかと尋ねる双子。 期間は1ヶ月間でその間は何度トライしてもいいが、理由も聞くそうです。 当てずっぽうは駄目であり、正解した人は誰もいないそうです。 それでよけりゃ精々頑張ってと言う双子。 1人立ち尽くしている環。 怯んでると見ながら去っていく双子。 さっきの面子を聞いたか、そこに常陸院の名を加えたいのだろうと言う馨。 家柄重視の派閥でも作ろうってかと。 「1ヶ月だな?」 振り返る双子。 「いいだろう、その代わり俺が勝ったらうちの部に入ってもらう。だが、俺は予言するぞ。4月にお前たちを高等部第3音楽室の扉をきっと開く」 「こうして僕らの期限付きゲームはスタートした」 ゲームスタート 双子に終業式の後にクラスのイベントがあると言う女生徒に僕らはパスだと言う光。 別に思い入れはないと。 「今、本を読んでいるのが光!!」 他人のクラスに来て何の用か尋ねる馨。 当たったのかと尋ねる環に当たってないと言う光。 「俺は発見したぞ。光は右利きだ!!」 「いや、2人とも右利きだし」 「あと、馨は前髪が右分けだな」 「髪形しょっちゅう変えてるし」 「ハモったとき、低音パートを担当しているのが…」 「「合唱かよ!!」」 須王先輩ですよねと声をかける女生徒。 ごめんね、2人に何か用だったと笑顔で応える環。 クラスイベントの出欠を確認していたと言う女生徒の持っている出席表を見ます。 「映画鑑賞会か…。いいね、光と馨も出席○と」 勝手に決めんなと言う双子は教室から出て行きます。 おーいどこ行くんだと言う環に、あんた煩いから帰ると言う双子。 ゲームはどうするのだと言う環に、精々頑張ってって言ってるじゃんと言う双子。 教室で人間失格を読んでいる鏡夜。 そこに環が入ってきます。 「双子に会いに行ったんじゃないのか?」 「いや、逃げられた」 ふ~んとまた本に視線を移す鏡夜にお前も部のために協力するように言う環。 本を読みながら、別にあの2人じゃなくても部は立ち上げられるだろと言う鏡夜に、あの2人に興味があるんだと言う環。 「あいつらもお前の言うところの俺たちの仲間、なのか?」 「え!?あー、しかし、あいつら何考えてるんだ?見分けて欲しいなら髪型変えるなりすればいいのに…」 「見分けて欲しくないんだろ」 「でも、見分けろっていうゲームだぞ」 「じゃあ、見分けて欲しいんだろ」 「お前、ちゃんと話聞いてる?」 「半分くらいな」 翌朝 常陸院邸・玄関 「今朝は右分けが馨で、左分けが光!!やぁ、おはよう」 何すか、人の家までと言う馨に、当たりかと尋ねる環。 当たってないと言う光。 「俺は発見したぞ。馨は少し内股じゃないのか?直した方がいい」 失礼な、違うよと言う双子。 昨夜思いついたんだがなと環は君たちは兄弟愛を売りにしたらどうだろうと言います。 「はぁ!?」 「ちょっと危ない、シンメトリー兄弟愛、常陸院ブラザーズ!!これでどうだ!?」 意味分かんないと車に乗ってさっさと学校へ向かう双子。 逃げるな、待ていと車を追いかける環。 車の中で会話している双子。 こんな朝っぱらから何なのかと言っています。 そして、口調が殿様喋りだよねと。 何で王子顔なのにあの口調なのかと笑う光と待ていって言ってたと言う馨。 そのうちござるとか言うんじゃないかと言う光。 「馬鹿だ、馬鹿殿だ」 あの志村けんのバカ殿メイクの環が想像されます。 腹を抱えて笑う双子ですが、そろそろ飽きたよねと言います。 環にゲームオーバーだと言う双子。 勝手だと言う環。 僕ら勝手なのと言う双子。 あんたって理事長の本妻の子じゃないんだってねとも言います。 調べちゃってごめんね、結構可哀想な生い立ちなんだねと言われる環。 このこと学校の奴らに言いふらされたくないでしょと言う馨。 しかも実の母親は行方不明だと言う光。 手を震わしながら握り締めている環。 あんたは結局1人で寂しいだけなんだろうと言う馨と、だからって僕らを勝手に仲間にしないでくれると言う光。 「1人のあんたより2人の僕らの方がまだマシさ」 去っていく双子。 これでもうちょっかい出してこないと言う馨ですが、ちょっと惜しかったかなとも言います。 もう少し遊べたかもねと言う光ですが、でもさ、がっかりさせられるのはごめんだしねとも言います。 「僕らはいつも矛盾している。2人を見分けて欲しいのに、見分けて欲しくない。僕らのことを知って欲しいのに知って欲しくない。僕らは常に受け入れてくれる誰かを求めている。だけどこんな捻くれた僕らを受け入れてくれる人なんていないと思う。ずっと2人きりの世界で傷つかないで済むように、とてもとても頑丈な鍵をかけている」 窓を見ている双子。 馨に来たと言う光。 視線の先には女の子がいます。 「光、お前でもいいってさ」 木に隠れていた光が出て来ます。 「あーあ、またか。あんた、大人しそうな顔して凄い性格してるんだね」 泣きかけの女の子に、どっちでもいいってことはどっちもいらないということじゃないのかと言う双子。 ひどいと言って泣いて去っていく女の子。 本当にひどいのはどっちだよと言う光。 「今、手紙を破こうとしているのが光!!」 驚いて振り返る双子。 「な、なんで!?」 当たったのかと尋ねる環に理由を尋ねる双子。 返ってきた答えは「勘だ」でした。 最初に当てずっぽうは駄目だと言ったはずだと言う光。 「すまんな。今んとこ、俺には無理だ。だってそっくりすぎるぞ、お前ら。けど、まぁ、ものは考えようだ。そこまでそっくりなのはもはや才能だ。だからこれからも2人で1人な常陸院ブラザーズを極めていけ。けど、もちろんお前らが別個の存在であることを忘れちゃいかん。だから俺も頑張って2人を見分けられるように努力するから」 そんなの変だ、矛盾していると言う双子。 「何言ってんだよ。矛盾してても、それがお前らだろうが。個性って言うんだよ、そういうのは」 「何言ってんだ。あんたの言うとおりに常陸院ブラザーズなんてスタイル始めたら、それこそ永遠にセット売りだ!!」 「いくらあんたが頑張っても、絶対に僕らを見分けることなんてできない!!僕らを見分けられる人間は僕らしかいない。どっちが光くんかでしょうかゲームを当てられる奴なんていやしないんだ。そんなの最初から分かってるんだ!!」 「だったら外したとき、何でいっつも寂しそうな顔をする?」 「そうだ、思い出した」 雪のベンチに座っている幼い双子。 こっちが光くんだと言った女の子。 外れだよと言う双子。 「その後、あの女の子は言った」 「ごめんなさい。泣かないでね」 「その言葉を聞いて、僕は驚いたのを覚えている。たぶん僕らはそのとき、泣き出しそうな顔をしていたのだろう」 「たとえ、俺には無理だとしてもいつかどこかでお前たちを見分けてくれる人が現れるかもしれない。だが、これだけは確かだ。ずっとこれからも2人きりの世界にいたら、永遠にお前たちを見分けられる人に出会えない。なら一緒にホスト部の扉を開こうじゃないか。一緒に世界を広げてみよう。第1回のミーティングは始業式の放課後、高等部の第3音楽室でやるからな」 「その日、大正解を言ってのけた殿に僕は不覚にもちょっとだけ、ほんのちょっとだけ感動してしまったりした」 うわぁ凄い学校と桜蘭の門の前に立ち、入学願書を持つセーラー服の少女(ハルヒ)はこんなとこ受かっても、うまくやっていけるかなと感じています。 その後ろから出てくる鏡夜は眩しさのあまり、手で目を覆いながら、空を見上げます。 うさちゃんを持つハニー先輩。 「そっか~、崇も須王くんに誘われたんだ」 「あぁ」 2人は窓の外を眺めています。 「あのね、僕ね、可愛いもの好きでもいいんだって、ケーキ好きでもいいんだって。僕どうしよっかな?」 「光邦の思うとおりにすればいい」 そうだねと笑顔になるハニー先輩。 ハルヒはまぁ、何とかなるかと思います。 来年受験頑張ろうと桜蘭の門を出て行きます。 そして1ヵ月後 始業式の放課後 第3音楽室の扉の前に立っている双子。 あのお馬鹿の言葉に感動したんじゃないぞと言う光。 単なる暇つぶしだと言う馨。 そうとも暇つぶしさと言う光。 馨は世話係の人の言葉を思い出していました。 「もしかしたらあんたらを本当に見分ける奴なんて一生現れないかもね」 「そうだよ、姉さん。僕らを見分ける人なんてこの世界にはいない、きっといないんだ。それは分かってる、けど…」 じゃあ一緒に開けるよと言う光。 うんと言う馨。 せーのと扉を開ける双子。 「そして僕たちはその扉を開けた…」 第20話完 |