第26話 これが俺たちの桜蘭祭桜蘭高校ホスト部第26話(最終話) これが俺たちの桜蘭祭 ハルヒの母親の仏前に線香や花が供えられています。 「あら、朝ご飯食べないの?」 朝食を食べないで靴を履くハルヒに尋ねる蘭花。 「うん。それじゃあ、行ってきます」 学祭2日目・本祭 中央塔サロン ホスト部一般公開営業中 「いらっしゃいませ」 「あなた、鳳家のご子息なんですってね。三男じゃ、どう足掻いたって家は継げないわね」 「本日は如何いたしましょう」 「―――ハルヒ藤岡の借金があとどれくらい残ってるの?」 「ハルヒ、ご指名だ」 エクレールに指名されるハルヒ。 失礼しますと席に着くハルヒ。 「あなた随分と環に可愛がられてたみたいね」 ヤキモチかと尋ねるハルヒに、環は来ないと言うエクレール。 ホスト部に顔を出すなと命じそうです。 たまちゃんはどうしたのかなと言うハニー先輩。 昨日の言動は許せないと言う光。 手を叩きながら、無駄なお喋りをしていないと鏡夜はお客様がお待ちかねだぞと言います。 クールだねと言う馨。 眼鏡に手をあてながら、鏡夜はこのホスト部に楽しみに来てくださったお客様にできる限りのおもてなしをする、それが一番大切なことだと言います。 そうだよと馨に抱きつくハニー先輩。 行くぞとモリ先輩に捕まれる光。 鏡夜はハルヒとエクレールの方に視線を移します。 すると、立ち上がったエクレールは去っていきます。 残されたハルヒは少し俯いています。 「長い間、ご苦労だったな、ハルヒ。」 「えっ!?」と顔を上げるハルヒ。 「今のエクレール嬢の指名でノルマ達成だ。る寝の花瓶を割った借金は全てなくなった。もういつでもホストを止めてもいいんだぞ」 目を見開いて、えっ!?と驚くハルヒはまた俯きます。 鏡夜のところにやってくる敬雄。 「若い頃はいくらでも時間があるように錯覚するが、実際はそうじゃない。価値のないことで時間を無駄にするんじゃない」 その言葉を聞いて立ち上がるハルヒ。 「このホスト部は、鏡夜先輩は皆を楽しませるために一生懸命やっています。皆を楽しませることによって自分たちも豊かな気持ちになります。皆を楽しませることはそんなに価値のないことなんですか?自分は…鏡夜先輩は立派だと思います」 立ち止まって聞いていたものの何も言わずに歩いていく敬雄はあれが鏡夜の言っていた特待生かと言います。 シャワーを浴びているエクレール。 「グラントネール社はここ最近、日本企業を次々と傘下におさめている危険な相手ですよ」 「いいではないの。縁続きになれば須王の家もますます栄えるというもの。どうせあの子は須王の家に逆らったりはできない」 「環は須王の家に興味なんかありませんよ。どんな手を使ったんです?」 「エクレール嬢と婚約するなら母親に会わせてやってもいいと言ったんです」 「あなたは未だに…」 「お前の人生の不始末はお前の息子に償わせているだけです」 ピアノを弾いている環。 シャワーを浴びているエクレールはシャワーを止め、タオルで髪の毛を拭きながら、ピアノを弾いている環に近づいていきます。 そして、後ろから肩に手を伸ばし、抱きつきます。 環の携帯が鳴ったので、手を伸ばす環ですが、素早くエクレールがとります。 携帯の裏にはハルヒとの2ショットのプリクラが貼ってあるのに気づき、顔を顰めるエクレール。 「環はもう来ないわよ。もうホスト部には顔を出すなと私が命じたの。あなた、環の恋人?」 「違います」 「そう、良かった…。あなたは関係ない人なんだ?」 「恋人じゃありませんが、関係ない人なんかじゃありません」 思い出していたエクレールは携帯を水槽の中に入れてしまいました。 「しばらくお友達とは連絡取らないほうがいいわ。未練が残るでしょ?」 ドアをノックする音がしたのでどうぞと言うエクレール。 中に入ってきたのは敬雄と秘書です。 「おじさん…!?」 驚いて立ち上がる環。 何故環がいるのか尋ねる敬雄。 「いいのよ、彼は」 「ご無沙汰してます、おじさん。鏡夜をホスト部に誘ったのは俺です。すいませんでした」 頭を下げる環。 「でも、おじさんこそ何故ここに?」 わざわざ足を運んでもらってすみませんでしたと言うエクレールの秘書のような人と、マスコミを避けられて好都合だと言う敬雄。 状況がつかめていない環。 「うちの医療機器会社がまもなく、そちらのグラントネール社に買収されてしまうらしい」 驚く環。 「鏡夜こそいい面の皮かも知れんな」 パソコンを操作していた鏡夜はハルヒを見ています。 「あいつに譲ろうと思っていた会社はもうあいつの手には入らない」 しかし、すぐ画面に視線を戻す鏡夜。 「おじさま、早速1つお願いがあるの」 電話している鏡夜。 「何なんですか?この衣装は」 スペシャルパレードの衣装だと言う光。 可愛いと言うハニー先輩。 何で自分だけ女の子なのかと尋ねるハルヒ。 「いいじゃん、コスプレなんだから女装しても全然OK」 「女装ってね…」 鏡夜は環の携帯に電話していたようですが、出ません。(っていうか、携帯水槽に入れられてしまったので出られません) 一度もサロンに顔を出しませんでしたねと言うハルヒ。 また、どこかに電話する鏡夜。 「あぁ…シマさん?お久しぶりです、鏡夜です」 須王第二邸の前園シマさんに電話している鏡夜。 「環坊ちゃまのことですね?坊ちゃまはフランスに発たれることになりました。お止めしたのですが、須王の家がお母様を許してくださる、やっとお母様を幸せにできると。それと、これ以上自分が桜蘭にいても自分のわがままで鏡夜様と皆様に迷惑をかけるからと」 「あの、馬鹿が…。環のやつ、フランスに帰るつもりだ」 驚くホスト部メンバー。 「たまちゃんいなくなっちゃうの!?」 「ふざけんなよ!!こんないきなり終わってたまるかよ」 「光…」 泣いている光。 『鏡夜様』 「はい」 『シマは思うのです。坊ちゃまのお母様が本当にいつも坊ちゃまがお話になっているような方ならきっとこんな形で桜蘭を去ることなどお喜びにならないだろうと…』 「あいつはいつフランスへ?」 『今日の夕方の飛行機で』 「そんな急に…」 『今日、桜蘭祭が終わると同時に日本を発つと』 環の乗った車が見えます。 まだ桜蘭祭が終わってないだろと言う光。 「家の車が駐車場にあったはずだ。行くぞ、ハルヒ!!」 車に向かって駐車場内を走る鏡夜、双子、ハルヒ。 鳳家の車に着きます。 「急いでいる。すぐに車を出してくれ」 しかし、プライベートポリスに囲まれてしまいます。 「何を命じられた?エクレール嬢の護衛か?」 「こんなことになって残念ですが、我らプライベートポリスの主はお父様ですから」 「くそ!!」 車を凄い力で叩く鏡夜。 車はへこみます。 「申し訳ないんですが、誰も行かせるわけにはいかないんです。たとえ、力ずくでもね」 そこに馬車が走ってきます。 モリ先輩が運転し、乗っていたハニー先輩がプライベートポリスの前に降ります。 「この馬車を使え。裏山のバイパスを使えば先回りできる」 モリ先輩も馬車から降ります。 「埴之塚と銛之塚!?」 一歩後ずさりするプライベートポリス。 馬車に乗った馨がハルヒに手を伸ばします。 後ろから、ハルヒの肩を掴む鏡夜。 「ハルヒ、あの馬鹿を頼む!!」 後ろから押す鏡夜。 馨に引っ張られながら、馬車に乗るハルヒ。 「行け、光!!」 光は頷くと、馬車を走らせます。 「崇、ちゃんと手加減しろよ!!」 「分かっている」 プライベートポリスと戦うハニー先輩とモリ先輩。 馬車は駐車場内を走っています。 そして、光の外に出て行きます。 手を払うハニー先輩と肩をぽきぽき鳴らしているモリ先輩。 「僕の友達を苛めたら、メって言ったでしょ」 「桜蘭ホスト部をなめるなよ、お前ら」 プライベートポリスは全員倒されています。 夕日に照らされた森の中を走る馬車。 「光、このスピード、いくらなんでも無茶だよ」 「殿は絶対連れ戻す!!」 「光…」 「もし殿がいなきゃ、僕たちは世界から置き去りにされたままだった。ホスト部のお陰でハルヒにも会えたし、皆とも仲良くなれた。そのホスト部がこんないきなり終わっちゃうなんて僕は絶対嫌だ!!」 馬車がバランスを崩し、馬車から放り出されてしまう光。 「光!!光…光…光!!光、大丈夫?腕痛いの?」 光に駆け寄る馨。 「畜生…僕たち本当にこんな風に終わっちゃうのか?殿…」 「光…」 それを見ていたハルヒは朝のことを思い出しています。 いってきますとドアノブに手をかけたハルヒ。 「お父さんに話してみても力になれないこと?」 「え!?何で?今朝は本当に食べたくないだけ」 「あんた、お母さんのお葬式の後も朝ご飯食べられるようになるまで時間かかったでしょ」 火葬場の煙突から上がる煙を見つめる藤岡父娘 『もうお母さんに会えないの?』 「世の中には頑張ってもどうにもならないことが確かに一杯ある。いいこと、ハルヒ?だからこそ、頑張らなきゃいけないときは躊躇ったりしちゃ駄目なのよ」 蘭花はハルヒに近づき、頭に手を乗せ、自分の胸に押し当て、抱きしめます。 ハルヒは決意し、鬘を取り、重たい衣装を脱ぎ捨て、馬車の運転席に座りなおします。 「ハルヒ!?」 それに気づいた光の声で振り返る馨。 ハルヒが手綱を持って、馬車を走らせます。 「どうしたの?黙り込んじゃって。あなた、ホストなんでしょ?もっと楽しませてよ」 「君こそ家に命じられて会ったばかりの男と婚約するとは本当に平気なのか?」 環を乗せた車が視界に入ったハルヒは更にスピードアップさせ、馬車はジャンプし、道路に無事着地します。 物音に後ろに振り返る環。 「ハルヒ!!」 「ハルヒ藤岡…」 「何してる、ハルヒ!!危ないから早く馬車を止めろ!!」 「先輩、戻ってきてください!!」 「いいから馬車を止めるんだ!!」 「皆、先輩に行ってほしくないんです!!」 「は!?けど…皆、ホスト部で迷惑してるって…」 「先輩は本当に馬鹿です。大馬鹿です!!こんなに長く付き合っていて冗談が本気かも分からないんですか!!皆、ホスト部が好きなんです!!本当に好きなんです!!自分も…自分もホスト部が好きです」 片方の手綱を放し、手を伸ばすハルヒ。 手を伸ばす環の腕を掴むエクレール。 馬車がバランスを崩し、ハルヒが馬車から落ち、川に落ちていきます。 「ハルヒ!!」 エクレールは辛そうな表情をしながら、腕を放します。 環は何か言い残し、ハルヒのもとに飛んでいきます。 エクレールは泣いています。 「ハルヒィィィ!!」 手を伸ばす環。 「先輩!!」 手を伸ばすハルヒ。 ハルヒの手を掴み、抱きよせる環。 ハルヒも抱き返します。 そのまま川に落ちていく2人。 環にお姫様抱っこされながら川から出てくるハルヒ。 「何て無茶をする。見ろ、お陰でびしょ濡れだ」 「いいじゃないですか。水も滴るいい男って言うでしょ?」 微笑む環とハルヒ。 「たまちゃん、ハルちゃん!!」 「「殿!!」」 走ってくるハニー先輩と双子。 鏡夜とモリ先輩も立っています。 「ったく、あの馬鹿が…」 エクレールは出して頂戴と言い、去っていきました。 「エクレール様はあの家政婦からずっと聞かされていましたね。いつもピアノを弾いてくれたという息子さんの話を」 『そんなに優しい男の子なの?』 「ありがとう」 「折角母親に会わせてあげようと思ったのに馬鹿なやつ。でも、こんな私のために…彼…笑ってくれた」 いつも手にしていたオペラグラス(?)は捨てられています。 桜蘭祭 夜になって生徒たちは踊っています。 ハルヒはハニー先輩に振り回されています。 その離されたハルヒの手をとって踊るモリ先輩。 「心配をおかけしましたがね、グラントネール社はうちの会社から手を引きましたよ。思わぬ助っ人が現れて、トネール社より先に買収し、そして経営権を全て私に譲ると言ってきた」 「それはまた、剛毅な。どこのファンドマネージャーです?」 ハルヒは馨と踊っています。 「KOという学生投資家です。巧妙に名前を伏せていましたが、ようやく正体が分かりました。KO…鏡夜鳳。何のことはない、うちの息子ですよ」 「末恐ろしいとはこのことだ。鏡夜くんが優秀なのは知っているつもりだったが、いや本当に凄いのはお宅の息子さんだ」 光と踊っていたハルヒ。 「鏡夜に教育してきたのはこの私だ」 環と踊ろうとしていたハルヒの手をとって、ハルヒと踊る鏡夜。 「あいつが兄たちより優秀なのは知っていた。だが、私の知っている鏡夜は乗っ取るようなことはしても、それをそっくり返すようなことはしませんよ。私は鏡夜に鳳家の経営する会社の跡継ぎという餌をずっとちらつかせて育ててきた」 ハルヒを環のもとに背中を押して返す鏡夜。 「しかし、あいつは…それを実力で奪い取った上でいらないと言って私の鼻先に突き返してきたんです。これがどういうことか分かりますか?あいつは見つけたんですよ、それ以上に価値のあるものを」 環と踊るハルヒ。 「おそらくは環くんのお陰で」 環とハルヒ微笑みあっていると、花火が打ちあがっています。 「あんたとは何かと競合してきたが、これからは仲良くやれそうだな」 「そう、仲良くやりたいんです。息子たちのようにね。あー、そうそう。一つだけ確認しておきたかった。特待生の娘さん、藤岡ハルヒと言ったかな?あの子は将来、鏡夜の嫁にと考えている。それだけは覚えておいてください」 「やはりあんたとは仲良くできないな。他のことはともかく、それだけは絶対に譲れないですよ」 花火を見ているホスト部員。 『この私立桜蘭学院は、一に家柄、二にお金、財あるものは暇を持つ。画して桜欄ホスト部とは暇をもてあます美少年達が同じく暇な女生徒達をもてなし、うるおわすスーパー金持ち学校独自の華麗なる遊戯なのである』 第三音楽室の扉が開きます。 「気が向いたらおつでもこの第三音楽室に遊びに来てください」 「「「「「「「「我々、ホスト部一同が」」」」」」」 「心よりあなたのお越しを」 「「「「「「「お待ちしております」」」」」」」 桜蘭高校ホスト部完 ジャンル別一覧
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