第4話 裕史郎の過去プリンセス・プリンセス第4話 裕史郎の過去 1学期が終わった藤森学園。 姫の仕事があるから、優雅な夏休みとはいかないなと言う亨。 相槌を打ちつつ、応援しに行っている運動部の人達は毎日練習に縛られているので、もっと大変だろうけどと裕史郎は言います。 亨はいつもより自由な夏休みなのかもなと意味深発言をしています。 そこへ、生徒の大群がやって来ます。 登校日があるが、長い夏休みの間は姫に会うことが出来ないので微笑みの残像をまぶたに焼き付けさせて欲しいと頼んできます。 笑顔を見せようとした時、有定がそこまでだと止めます。 続きは別な場所でやってもらおうと言う有定の言葉に意味が分からない姫達。 体育館で姫の写真撮影会です。 草原に立つさわやかなお嬢様をイメージした衣装のようです。 写真撮影会参加費用を受付で徴収する生徒会。 それだけではなく、ブロマイドの販売もしています。 抱き枕とかまでグッズ販売されているみたいです。 有定は初めて撮影会を実施したようです。 これほどまで盛況になるとは思っていなかったようです。 顔を引きつりながら、こんな姿の写真を実家に持って帰られるのを嫌がっている実琴。 キャッシュバックがあるのだから耐えろと言う裕史郎 それに夏休みのデート代くらい稼げるだろうという言葉に実琴は仕方ないといった感じ。 「それでは皆さん、事故や病気に気をつけて」 「楽しい夏休みを満喫しましょうね」 生徒達は興奮したまま、撮影会は終了します。 生徒達を見送る姫3人組。 「お家に帰るんなら、本物の女なんか見放題だろうに…。何でわざわざまがいもの見て帰るんかな?」 もし振られてしまったとしても、学校には俺達がいるという拠りどころなんじゃないのと言う裕史郎。 お疲れ様と坂本がやって来ます。 撮影会凄い人気だったねと言いますが、行く先々でお辞儀をされる坂本様に言われる筋合いないと裕史郎。 坂本は帰らないのか姫3人組に尋ねます。 夏休みはずっと寮にいると言う亨と裕史郎。 実琴は帰るそうです。 やっぱりとっとと帰るんだと裕史郎と夏休み初日ではなく終業式の終わった今日にと亨。 「冷たい人!!私達を捨てて、奥さんのところへ帰るのね」 「遊びだったのね。ひどいわ、実琴さん!!」 「いいえ、本当は分かってる。私達なんて浅い絆の関係でしかないってことを…」 「所詮、私達の間は薄いぺらっぺらのティッシュ1枚くらいの脆さでしかないのよね…」 やっぱり友達なんか恋人に比べたらなと言う裕史郎と、不義理な奴と言う亨。 「毎日一緒にいるのに不義理だと!?滅多に会えない彼女の方こそ不義理だ!!その分を少しでも取り戻そうとすることのどこが悪いってんだよ!?」 別に悪くないと言う裕史郎。 ラブラブが羨ましいとか言います。 何でネチネチ言うのか尋ねる実琴に嫌いだからと言う裕史郎。 フリーズする実琴に、嘘だと言う裕史郎。 ただ、彼女に会えるって浮かれていたので、姫のお仕事のことを忘れたり、ばっくれたりしないように釘を刺しただけのようです。 そして、彼女の用事と姫のお仕事が重なったらどっちを優先するか尋ねられて困る実琴。 迷うんじゃねえとスリッパで頭を叩く亨と裕史郎。 スリッパで叩くなと言う実琴に即決で姫だろうと言う裕史郎。 彼女優先で仕事をすっぽかす心配があると亨。 彼女が弱点でもあると、姫の仕事をサボったら、彼女のところに乗り込んでやると言う裕史郎。 そうなったら姫の仕事のことがバレて、最悪の状況になってしまうと判断した実琴はそれだけはご勘弁くださいと土下座します。 実琴は本当は黙って帰ろうかと思ったが、白状だと思い返したのに、黙って帰れば良かったと言う実琴に、黙って帰ったら、次に会ったときにネチネチ言うに決まってるだろうと言う裕史郎と亨。 大嫌いだと涙を流しながら走って帰っていく実琴。 裕史郎と亨は姫の仕事を忘れるなよと言いながら手を振ってお見送りです。 坂本にまだ帰らないのか尋ねる亨。 生徒会の集まりがまだあるので、まだ帰れないそうです。 坂本は2人に家に遊びに来て欲しいと誘います。 行くという答えを言っているときに、辻がやって来ます。 夏休み中の寮は大変なことがあって、昼間は冷房が切れると教えてくれます。 体調を崩さないようにと言われ、驚く亨と裕史郎。 暑くて勉強に身の入らない裕史郎。 ほとんど人がいないんだから冷房をいれたらもったいないという亨。 暑いのは暑いんだから仕方ないと言う裕史郎に、暑い暑い言うなと亨。 コンビニに行っても少ししかいられないし、坂本の家に行くのも急すぎるなと2人。 明日は誕生日だと言う裕史郎。 もしかして祝って欲しいのかと尋ねる亨。 別にと答える裕史郎ですが、ケーキくらいは食べたいと言うので、コンビニでショートケーキを買ってやると言う亨。 ちゃんとケーキ屋で買えと言う裕史郎に買ってやるだけマシと思えと言う亨。 そこに家から電話だと裕史郎に放送でお呼び出しがかかったので部屋から出て行きます。 電話中の裕史郎の話を聞いている亨。 夏休み中は帰れないと言う裕史郎ですが、母からの電話は誕生日を家族で祝うとかそういった話のようです。 しかし、この都市で家族に祝ってもらうのは恥ずかしいからいいと言う裕史郎。 亨は部屋に戻っていきます。 戻ってきてすぐベッドで横になる裕史郎に何かあったのか尋ねる亨。 誕生日だから帰って来いと言われただけと返す裕史郎。 帰れば良いじゃないかと言う亨に、お前が1人になって可哀想だから止めたと答える裕史郎。 それでいいのかと言う亨に、明日ナンパに出かけようと言い出す裕史郎。 驚く亨に、せっかくの誕生日に2人だけじゃ味気ないからと言います。 女の子と一緒に騒ごうと言います。 分かったと言う亨。 翌日 街中に出かけた2人。 騒ぎたいだけなら2人だけでいいじゃないかと言う亨に、そういうのを人はデートと言うんだぞと返す裕史郎。 それを聞いて、ナンパにやる気を出す亨に好きなタイプを聞く裕史郎。 癒し系が好きだそうです。 それを聞いて、坂本様みたいな人かと尋ねる裕史郎。 そうそうと肯定する亨ですが、何でたとえが坂本なんだよと怒り始めます。 普通女優かタレントの名前を挙げるだろうと言う亨に、でも坂本様は癒し系には間違いないだろう?と言う裕史郎。 逆に好みのタイプを聞かれる裕史郎は即答で巨乳だと言います。 「巨乳といっても育ちすぎたナスみたいなのじゃなく、顔を埋めてぱっふりできるくらいの美乳だな」 そんな顔をしたお前が?と言う亨に、男なんだから女体に興味ない方がおかしいと言う裕史郎。 実琴がHな話をべらべらしていたら変じゃないか?と言う亨。 すっごい変と言う裕史郎。 少し休むかとファーストフード店に入る2人。 巨乳と癒し系を店内から探す裕史郎。 都合よくいるわけがないと言う亨が、あの子はどうかと尋ねると、時計ばっか見ているので誰かと待ち合わせしていると言う裕史郎。 別の子を言うと、巨乳がいないから駄目だと却下する裕史郎。 胸がでかい子にしようとする裕史郎に女の子は1人じゃないか、俺の分は?と言う亨。 今日はバースデイということで許すように言う裕史郎。 亨と裕史郎に彼女達と話しかけてくる男2人。 要するに2人は男なのに男にナンパされたのです。 「てめぇら、目ん玉腐ってんじゃねえのか!?俺達は男なんだよ!!ナンパしてんじゃねえ!!」 裕史郎を止めようとする亨。 紛らわしい格好をするなと言う男達に、そっちが間違えたんだろうと怒る裕史郎を店外に連れ出していく亨。 無駄に揉め事を起こしてお前らしくないと言う亨に、騒いですっきりしようと思っていたのに邪魔されたからと答える裕史郎。 ナンパの続きでもするかとか、映画でも見るかとか、ゲーセンやカラオケにでも行くかと尋ねる亨に、俺をナンパしているのかと裕史郎は帰ろうと言います。 そして、話を聞いて欲しいと言う裕史郎。 寮に戻ってきた2人。 まず亨から話しています。 「俺、両親を事故で亡くしてさ、おじ夫妻に引き取られたんだ。すごくよくしてもらったんだけど、でも色々あってここに来た。親を亡くし、居場所をなくして自分で言うのもなんだけど、結構きつい人生を歩んでるって思うんだけど。何となくお前にも俺と同じものがあるんじゃないのかと感じてた」 電話でお母さんらしい人と話してたけど、何でこんなに家に帰りたがらないんだろう、余程の事情があるのかな、なかなか話し出せないほどの。俺みたいに両親がいないってわけじゃなよな。母親から電話あったんだし、でもその母親と何かあったのかな?それとも父親?もしかしたて、こいつ美形だし、秘められた事情って猥褻な過去!?と1人想像する亨。 急に裕史郎に話しかけられて驚く亨。 「本当の事情を話したら、お前は態度を変えるかもしれない」 亨は自慢じゃないが、俺の過去だって不幸なんだから甘く見るなと怒ります。 じゃあ何を聞いても態度を変えないでくれよと言う裕史郎にああと答える亨。 「俺は…ずっと母子家庭で育ったんだ。父親は物心付く前に病気で死んだらしい」 キーワードは貧乏かとか、夜逃げか無理心中かと想像を膨らませる亨。 「でもそれで困ることは特になかった。父親は最初からいないようなもんだから、どんなものか分からないし、欲しいとは思わなかったし。それに子ども心に母を支えなきゃって思ってたし、他のことを考える余裕もなかった。けど…」 「けど!?」 「小学4年生のときだった。担任になった先生が明るくて包容力のある、何て言うか理想的な父親像そのもののような人だった。もし父親がいたとしたら、こんな人がいいなって。それで、俺はその先生に気に入られたくて優等生をやった。先生も他の奴より特に可愛がってくれたよ。そんなある日の放課後…俺は1人教室に残された。やって来た先生はいつもと様子が違っていて、なんだか興奮しているようで息が荒く、汗ばんだ手で強く俺の肩を掴んできた」 「そ、それでどうしたんだ!?」 「…お母さんを僕にくれないかって言ってきたんだ」 「はぁ!?」 「いや~俺の知らない間に愛を育んでたみたいなんだよね~、これが。まっ、俺の方は二つ返事でOKしたけどね。前から理想的な父親だと思ったからさ。その後、話はまとまって、今じゃ弟まで出来て幸せな家族になりましたって感じ」 「ちょっと、待て」 「えっ!?」 「暗い過去は?」 「ない」 「ドロドロの愛憎劇は?」 「それもない」 「あんなに言い辛そうにしたのは何だったんだよ!?」 だから何を聞いても態度を変えるなと言ったろうと言う裕史郎。 亨は、それは悲惨な過去の時にいう台詞だと怒っています。 幸せいっぱいの家族なんだったら、何で家に帰るのが嫌なのか尋ねる亨。 俺を除いてねと言う裕史郎。 「家に帰るのが嫌なわけじゃないんだ。ただ、家族を見て自分が異物だと感じてしまうのが嫌なんだ。母と父と弟がいるところを見て、あぁ完璧な家族だなって思ったんだ。でも、俺が入るとそれが崩れてしまう疎外感を感じてしまったんだ。だからだったら自分が近づけばよかったんだろうけど、どうしてもできなかった」 「お前がそこまで引け目を感じることないだろう?」 「そうだな…。たぶん最初を間違えたんだよ。掛け違えたボタンみたいに。俺は本当に2人の結婚のことが嬉しかった。1番好きな人達だったから。でも同時に心の奥にもやもやしたものもあった。母を先生に奪われてしまったような気がしたんだ。2人に捨てられたような気がしたよ」 「疎外感を作っていたのは裕史郎の方じゃないか」 「そうだな…」 「学校じゃ、ふてぶてしいほどの態度で人身操作してるのに、どうして家族じゃそんなに脆くなるんだ?」 「そうだな…。学校の奴らにはどう思われようとも平気だけど、家族から疎まれたり、いらないって思われたりするのが怖いんだろう…。家族だけにはね…」 「そうか…。あのさ…」 「何?」 「お母さん達にさ、言ってみろよ」 「えっ!?」 「思ってたこと、全部。このまま避け続けても何も変わらない。同じことが続くだけだ」 「でも今更…6年も前のことだぞ」 昔話としてならそんなに傷もそれほど痛まないので、今だから話せると亨は言います。 俺に話せたのだからと。 やり直しにきっと期限なんかないんじゃないのかなと言う亨。 ボタンを掛け違えたのなら1度全部外せばいい、もしそれが駄目だったとしてもここに戻ってくれば良いと。 「俺には傷を治してやることは出来ないけど、こうやって話を聞くくらいは出来るから」 「亨…」 「それとも、俺じゃ駄目か?」 「いいや、十分だよ。でもね、亨くん。その台詞は恋人に言う台詞だよ」 「はぁ!?」 「口説き文句はありがたいけど、俺達プラトニックでいようね、亨くん」 何でお前と出来なきゃいけないんだと言う亨。 うふふ、純愛って素敵よねと言う裕史郎と、止めろと言う亨なのであった。 第4話完 ジャンル別一覧
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