第11話 秘められた過去プリンセス・プリンセス第11話 秘められた過去 チャイムが鳴っている藤森学園。 姫3人組が学園祭が終わってようやく落ち着いた感じだと話しながら廊下を歩いていると生徒達がデレッとしています。 ごきげんよう皆さんと声をかけると生徒達は泣いて大喜びです。 実琴はやっぱり姫の仕事があるじゃないかと言っていると、裕史郎は彼女にバレたのだから思い残すことはないとして、思う存分働いてもらうと言います。 その言葉に意味が分かんないと言う実琴。 「しかし実琴の彼女、美人だったな」 「そうそう、実琴と並ぶと美男美女というより美少女2人って感じ」 「そうそう」 「2人とも面白がってるだけだろ」 そうそうと頷く2人に怒る実琴。 腹減ったと寮に帰ってくる姫3人組。 実琴は晩御飯何だっけと尋ねると、亨はとんかつじゃなかったっけと答えています。 裕史郎は自分宛に届いている封筒に差出人の名がないが、部屋で開けて見てみます。 亨はマンガ雑誌を読んでいます。 「痛っ」 裕史郎の声に、裕史郎の方を向き、どうした?と尋ねる亨。 裕史郎は大丈夫と指を舐めながら、ちょっと紙で切っただけだからと答えるので、ドジだなと言う亨。 しかし、封筒の中にはかみそりの刃が入っていたのです。 古典的なことをするなと感じる裕史郎ですが、電話がかかってきていると放送で呼び出しされます。 「実家からか?」 「そうかも」 「ゆっくり話してこいよ」 実琴が本を抱えて歩いていると、裕史郎が電話しています。 辻に今の電話が誰だったのか尋ねる裕史郎。 もう切れてしまっていたようです。 相手は女の子だったと答える辻。 従兄弟の鈴木ですと言っていたそうです。 何か問題があったのか尋ねる辻に、後でかけ直してみると言う裕史郎。 姫3人と秋良が今度の日曜日に出かけようと校門の前で話し合っています。 このメンバーで出かけるのって初めてじゃないかと言う亨。 実琴に彼女とデートなら別に来なくてもいいと言う裕史郎。 「そんなこと言ってないだろ。それにその日は恵さんは麻琴と買い物に行くって…」 「お姉さんにとられたのか?」 「女同士の付き合いだからお前は来るなって、麻琴が…」 「強そうだもんな、お姉さん」 強すぎだと言う実琴。 英語のノートを忘れたと亨はノートを取りに戻ります。 明日当たるので予習しなければならないのだそうです。 先に帰った裕史郎と実琴。 寮にはたくさんのダンボールが届いています。 誰のだろうと言っていると、辻がやって来ます。 東京都藤森市5-5-5 藤森寮 四方谷裕史郎様宛ばかりです。 頼んだ荷物なのか尋ねる辻に、裕史郎は従兄弟が送るっていっていたものだと答えます。 あの電話してきたと。 邪魔ですね、すぐに片付けますからと笑顔で言う裕史郎。 手伝おうと言う辻に、遠慮する裕史郎。 実琴は少し気になっているようです。 P-ROOMダンボールを運んでいる2人。 これが本当に従兄弟が送ってきたものなのか尋ねる実琴。 通販会社ばかりで、裕史郎が頼んだことになっています。 「実琴のくせに鋭いな」 「お前、また何かに巻き込まれてるんじゃないだろうな?だったら皆に話して…」 「大丈夫だって。大したことじゃない」 「四方谷!!」 「亨には言うなよ」 ちょっと怯える実琴。 「で、何を聞いても河野には言うなの一点張りで…」 「裕史郎が…」 「絶対にまた厄介なことに巻き込まれてるんだ。あいつも水臭いんだよな。少しくらい頼ってくれればいいのに…。仲間なんだしさ」 「そうだね」 屋上で話している実琴と秋良。 「でも、それだと日曜日の外出は止めた方がいいかもしれないね。何があるか分からないし…」 「だけど河野に何て言うんだ?四方谷がきっと止めるだろうし」 「う~ん…それなら…」 4人は外出に出かけたようです。 CD屋によっていいか尋ねる裕史郎。 俺も欲しいのあるからいいよと言う亨。 実琴と秋良は辺りを窺いながら歩いています。 前を歩いている亨と裕史郎の前に男達が立ちはだかります。 「君、四方谷くんだよね」 そう言われて、裕史郎は腕を掴まれてしまいます。 裕史郎に知り合いなのか尋ねる亨。 近くで見ると更に可愛いなと男は言います。 実琴が男から裕史郎を引き離し、秋良が彼に何か用ですかと尋ねます。 お友達も可愛い子ばっかしじゃんと男達は遊ぼうと言ってきます。 あんた達一体と怒る裕史郎に、男達はこんな子が付き合ってくれるなんて嘘みたいとキスしようと顔を近づけていきます。 「僕達の連れに何か用ですか?」 立っていたのは有定会長と生徒会役員達です。 何でここに?と亨が言っていると、顔を背ける実琴と秋良。 生徒会役員達は男達を囲み、大人しく付いてきた方がいいと思うなとか、ここで騒ぎを起こせば二度と来れなくなりますよとか言っています。 しかも3本の指で空き缶をペチャンコにします。 藤森学園の生徒会室 どうして有定会長があそこにいたのか気になる裕史郎。 万が一のことを考えて護衛をしていたと答える有定会長。 「豊くんと坂本様から話を聞いたのでね」 視線をそらせる秋良と実琴。 「何かあってからでは遅いだろう?だから坂本様に話して…」 「この間のストーカーの件もあるし、会長に相談した方がいいって俺が勧めたんだ」 正しい判断でしたと言う有定会長は姫を守るために生徒会は全力を尽くしますが、今回はあの時とは様子が違うと言います。 亨の顔を見る裕史郎。 生徒会役員達がやって来ます。 あの男達は直前に会った女の子に話を持ちかけられたそうです。 中学生くらいのちょっときつめな感じの女の子が、遊んでくれる人を探してるから良かったら声をかけてあげてくれと頼まれたのだそうです。 最近そんな感じの女の子が学園の周りをうろうろしているのを生徒が目撃しているそうです。 裕史郎のことを聞きまわっているそうです。 特に亨との関係を執拗に聞いているそうです。 まさか、さやかが…と考える亨。 「それって、あの時の河野の従兄弟とかっていう彼女が何か関係あるのか?」 心当たりがあるのなら是非聞きたいと有定会長は話してくれないかと亨に言います。 回想 「俺、小さい時に事故で両親を亡くしておじさんの家に引き取られたんです」 今日からここがお家だよと言うおじさん。 家ではおばさんと、おばさんの後ろに隠れている小さなさやかがいます。 さやかは亨の前まで駆け出してきて、笑顔でお兄ちゃん遊ぼうと言います。 亨は笑顔でうんと言います。 「俺も幼かったし、おじさん達も可愛がってくれたから結構早く打ち解けられた。さやかと本当の兄妹みたいに育って。だけど…」 亨が楽しそうにしていると、さやかが恐い顔で今の誰なのか尋ねます。 亨が学校の友達だと言うと、さやかは恐い顔をしたまま去って行きます。 また、亨が女の子と楽しそうに歩いていると、後ろから付いてきているさやか。 亨が振り返ると物凄い恐い顔をしているさやか。 「亨くんは私のものよ!!近づかないで!!」 女の子を突き落とすさやか。 怯える亨。 何てことしてくれたんだと怒っているおじさんに、さやかはあの子が悪いのよと言っています。 結婚するんだからと。 「それでもう一緒に暮らすわけにはいかないと思ってここに来ることにしたんです。さやかには内緒で」 「そうだったんだ…」 「河野にそんな過去があったなんて…」 「お前、姫の特典に飛びついたのって…そのおじさん達になるべく負担をかけないようにか?」 「うん。引き取ってもらったのに揉め事の原因作っちゃて…。これ以上の迷惑はかけたくないからな」 「亨らしいよ」 「河野、ただお金につられただけじゃなかったのか」 秋良は有定会長にあんまり驚いていませんねと言います。 生徒の情報はチェックしているからねと言う有定会長。 特に次期外れの転校生となれば何かあると思うだろうと。 それってプライバシーの侵害でしょうと言う裕史郎。 学園の平和のためだと言う有定会長。 呆れる裕史郎、実琴、秋良。 「そういえば受験の第1志望、本当はここだったんだよ。受けなかったけどさ」 何でそのまま受けなかったのか尋ねる実琴と中途編入できるくらいだから実力あったんだろうと言う裕史郎。 寮に入ろうとしていることがさやかにバレて猛反対され、おじさんもさやかの泣きおとしに負けて、頼んできたのだそうです。 結局ここに来ることになったんだからおかしなもんだと言う亨。 それで前にさやかさんが来たときにちゃんと話し合いをしたのか尋ねる秋良。 裕史郎とキスしたことを思い出す亨。 「話しても埒があかなかったから、俺の機転でとりあえずお引取りねがった」 あれが機転だとと怒る亨。 「だけど、あれで俺のことを亨の恋人だと信じて、ターゲットにされちゃったんだろうな…」 その様子だと他にも嫌がらせを受けていたのではないかと言う有定会長。 それを知っていたから亨に黙っておくように言ったのか尋ねる実琴。 裕史郎は確信がなかったと言います。 裕史郎に謝る亨。 俺の自業自得でもあるので気にしないように言う裕史郎。 このままだと裕史郎に更に危害がおよびかねないと言う有定会長。 亨は立ち上がり、さやかに会ってくると言います。 こんなことを止めさせないとと言い、生徒会室から出て行きます。 亨に落ち着くように言う実琴、裕史郎、秋良。 お前まで頭に血が昇っていたら話し合いにもならないだろうと言う裕史郎。 あぁ…と元気のない様子の亨。 屋上にいる4人。 どうしてあんな風になってしまったんだろうと言う亨。 「ガキなんだよ。駄々こねて欲しいものを手に入れようとする幼児じゃあるまいし、無視」 「裕史郎…」 「昔は仲が良くて、さやかのこと本当の妹のように思ってた。俺も自慢の兄になれるよう勉強もスポーツも頑張った。さやかにも出来るだけ優しく接していたはずだし…」 「自慢の兄ね…。それがまずかったんじゃないか?」 「何でだよ?」 「本当の兄弟だったら、そんなこと意識しないはずだろ、普通。亨は完璧な兄像として演じてきたのかもしれない。でも、彼女にはその姿が理想の男性像としてうつった。顔はいい、頼もしい、オマケに自分には甘くて性格が良い、これだけ揃っていれば好意を思い違えてもおかしくないだろう!?」 「俺が間違っていたのか!?」 言い過ぎだろうと言う実琴。 間違っているのは周りの人達を傷つけてまで自分の気持ちばかり押し付けようとする彼女だと言う裕史郎。 「亨にも責任があるとしたら、お前の正直な気持ちをちゃんと言ってないということじゃないか?」 「俺の…気持ち…」 「妹にしか思えないっていうのは言ったけど、本気で拒絶してるようには見えなかった」 「おじさん達はさ、本心はさやかと一緒になってもらいたいって思ってるんだよ。長年一緒に暮らしてきたし、さやかが思い詰めるまで望んでいるから。だから…はっきり断るのはあの人達との関係が崩れてしまうかもしれなくて、恐いんだよ。また1人になってしまうんじゃないかって」 「お前言っただろ?俺が家族から疎外感を感じているって話したとき…」 勝手に決めるなよ、話せばいいだろ、お前の気持ち全部ぶつけてみろよと言っていたことを思い出します。 「俺も人のことは言えないけど、あの時家族と話が出来てよかったって思うんだ」 「裕史郎…」 「いつも一緒にいる家族でもちゃんと言葉で言わないと伝わらないことがあるよ。大切だからこそ、言わなくちゃいけないこともあると思う」 「秋良…」 「俺のところなんかいっつも麻琴と…姉と喧嘩してるぜ。年上だからって俺をこき使うし、無茶言うし、何であんなのが恵さんの親友なんだろう…。恵さんはすっごく優しいのに…」 「はいはい、そこ、妄想に走らない」 「と、とにかく喧嘩してても嫌いなわけじゃない。家族ってそういうものじゃないか?」 「そうかもしれないな」 とにかくおじさんに連絡してみるよと言う亨。 4人は校門に向かって歩いています。 1人で抱え込まないでそれがいいと言う秋良。 実琴が何かに気づき、立ち止まります。 3人も実琴が見ている方に向きます。 さやかが校門の前で立っていました。 隠れながら中の様子を窺っている感じです。 亨に気づいて逃げて行くさやか。 「さやか!!」 逃げるさやかを追いかける亨。 残りの3人も追いかけていきます。 「待て、さやか。話を…」 さやかは先が崖なので追い詰められてしまいます。 「さやか…」 「来ないで!!こっちに来たら飛び降りるから」 第11話完 |