ヒロイック・エイジ 第2話ヒロイック・エイジ第2話 忘れられた子供 遠い、遠い、時の彼方。 宇宙には黄金の種族がいた。 星々を作り、未来を知る力を持つ彼らはまだ未熟な他の種族達へ呼びかけた。 即ち『出でよ』と。 それに応えた者達は銀の種族、青銅の種族、英雄の種族。 やがて、黄金の種族がこの宇宙から別の宇宙へ旅立つことを決めた時、一隻の船がある星に辿り着いた。 船にはただ一名の赤ん坊だけが生き残っていた。 黄金の種族はその赤ん坊を英雄の種族の一人に命を守るように命じた。 そして、赤ん坊が属する種族を鉄の種族と名づけ、自らの力で宇宙に出た4番目の種族となし、あるメッセージを放った。 人類へ、ここにお前達の運命の子どもがいると。 「あれが最後のノドス。宇宙最強の英雄の種族をその身に宿した人類の希望――」 「青銅の種族のアリ塚を殴って破壊しただと!?」 青銅の種族との戦いが終わったエイジの前には燃え盛り、爆発の起こる朽ちた惑星移民艦が眼前に広がっていた。 「お、かあさん…っ…おかあさん…ぅ…ぁ…」 泣いているエイジの頭を撫でている砂ダコ(フートォ)。 「ひっく…」 「ディアネイラ様、艦長から早期帰艦の打診が」 「ディアネイラ様からのお計らいである」 泣いているエイジに話しかけ、イオラオスは花束を惑星移民艦の燃え跡に供え、クルー達も胸に手を当てていた。 「あなたをお迎えに参りました。私達、人類を滅びから救うため、12の契約に基づき…」 「お父さん達が言ってた」 「お父さん達?」 「ずっと前、お父さん達が遠くに行っちゃった時」 「遠く…!?黄金の種族…」 「人類さんと一緒に行けばここが元に戻るって」 「ここの惑星、オロンの環境復活が望みであれば、全人類の英知をかけてそれを約束しましょう」 「フートォ…」 「そのお友達?も共にお迎えしましょう」 「駄目だよ。危ない所へ行くから。エイジが行くね、フートォはここにいてね。すぐ戻ってくるから。ここ、昔みたいにするからね、フートォ」 アルゴノートにディアネイラ達が帰艦した。 「惑星圏から全速離脱と共に歓迎プログラムに移行。では、人類の救世主とやらを拝みに行くか」 「非常時ですので飲酒はお控え下さい、マスター」 エイジを救世主としてアルゴノートに迎えることとなった艦内では伝説の救世主歓迎式典が行われようとしていた。 「祖先より受け継がれし、黄金の種族からのメッセージ。それを信じ、長い旅に出た私達は今、最初の使命を果たしました。人類を救う5人目のノドスが存在する可能性は低く、にも関わらず皆よく尽くしてくれました。ユーノス宗家及び人類連合を代表し、深く感謝します。そして、ここに人類の救世主たる方を紹介します。このお方がエイジ様です。さ、エイジ様、こちらへ」 舞台に上がった男であるエイジをディアネイラが自分の絶対拒絶圏に入れたことに驚くクルー達。 ディアネイラに近づいて機を失わなかった男も初めてだそうで余程純粋な心の持ち主ということだなと思われています。 式典において12の契約をエイジと結ぼうとする。 「12って何?」 「12というのは契約の数のことで」 「かずって何?」 「数とはその…」 「あるものがいくつあるかということです」 「いくつって何?」 エイジは契約には何の興味も示さず、料理に飛び掛り、むしゃむしゃと手掴みで食べ始めたので、追いかけるイオラオス。 「数は我々が便宜上決めたもの。宇宙の真理を司る黄金の種族には不要というわけか。ハハハハ…あれが人類最後の希望だと!?あれではまるで」 「猿だ」 行方をくらましてしましてしまったエイジを探すも、なかなか見つけることが出来ない。 そんなエイジはクンクンと匂いを嗅ぎながら、野菜の育てられている温室のような所にやってきます。 「わ~い!!」 土にはミミズの姿もあり、笑顔を絶やさなかったエイジであるが、土の上に横たわると泣き始める。 笑顔で眠っているエイジを見つけたアネーシャ達。 「緑があることが余程嬉しいのでしょう。枯れ果てたあの星でたった一人で生きていたのですから」 「しかし、我々の常識が通じないことには…」 「私達の知性が試されています。この方に私達を理解して頂くこと、全てはそれから」 「この猿…いえ、エイジ様を教育しろと!?」 「この方は人類になくてはならいないお方。私達が万事に渡り、お世話をするのが道理です。まずはこの状態を何とかして差し上げないと」 エイジが横になっている畑の横に豪華なベッドが置かれている。 そして、ファームエリア周辺の隔壁が閉鎖され、エイジを何とか捕まえることに成功し、ウイルス、寄生虫反応もなく、脳の活性率が高い以外は健康体であったが、右目に解析不能な物体が視神経と完全に融合していた。 アルゴノートは航路の最終確認が行われ、発進する。 「毎度毎度ご苦労様」 「瞬間移動の負荷で機体の交差軸が微妙にずれてしまうからな」 「存在稼動変化率って精神的コンディションで左右されるんでしょ?あの頂上的な戦闘を見たパイロットはかなりショックよね」 「私がうろたえていたとでも?」 「デリケートな機体は面倒ってことよ。ねぇ、惑星オロンの公転軌道上で磁場が検出されたの知ってる?あの星の崩壊を留めていた未知のテクノロジーが存在する証拠ですって」 「姫様が正しかったという証拠だ」 「そうして見つけた人類を救う存在、最後のノドスは猿だった」 「我らとは比べ物にならない戦力を持った猿だ」 「どうせディアネイラ様の功績にはならないわ。ユーノス王家の兄弟達に奪われるだけ」 「だからと言ってあの猿を宇宙に放り出して何もなかったことにするわけにもいかん」 「本心はそうしたいんじゃないかしら?」 「姫様はこの旅に全ての希望をかけ、人類のため我が身を犠牲にするお覚悟だ。我が騎士団は全力をあげて、その高貴な思いをお助けする。私は姫様の意思に従うだけだ」 「犬と猿ってトコね。さっさとそれ飲んじゃったら?」 青銅の種族のアリ塚に待ち伏せされていたアルゴノート。 エイジはアルゴノートの隔壁を素手で開いて艦の外の真空にいた。 『エイジ様』 「エ・イ・ジ」 『エ、エイジ、ここは危険です。何故こんな場所に?』 「お父さんに言われたんだ。ね、ベルクロス」 エイジは浮かび上がり、右目が青く光り輝きだすと、ノドスを纏う。 《ベルクロス…》 青銅の種族と戦うイオラオス達の前にノドスが現れ、青銅の種族の張ったバリアを破壊して、倒していく。 『あの方は既に契約を知っています』 「姫様…」 「知ってるって?」 「…!?」 『黄金の種族は告げた。彼らの保護した人類の子どもこそ英雄の種族を宿し、12の契約を持って人類から滅びを救うと。そして、私達はこの身勝手な契約を作った。1つ、契約した相手を王とする。1つ、王に仕え、決して自らは王とはならない。1つ、鉄の種族と名づけらた人類の故郷たる地球を人類の手に取り戻す。1つ、生き残った英雄の種族全てを打倒する。1つ、青銅の種族の母星を征服する。1つ、銀の種族の母星を征服する。1つ、黄金の種族の未来を知る力を人類に齎す。黄金の種族の星々を作る力を人類に齎す。1つ、人類を宇宙の覇者とする。1つ、これらが行われるまで契約した相手を守り続ける。1つ、これらが行われるまでに決して逃げたり死んではならない。1つ、これらが行われた時、11の契約に反しない限り、鉄の種族こと人類は契約者の願いを叶える』 ノドスの前に現れた銀の種族。 ディアネイラを大きな拳で覆うノドス。 次回、「英雄の種族」 |