おおきく振りかぶって 第15話おおきく振りかぶって第15話 先取点 桐青の応援と曇天の下、1回の裏・桐青高校の攻撃となる。 1番バッター・真柴は、桐青のレギュラーの中でただ一人の一年生。 《1番の真柴はスタメン唯一の1年だ。桐青は毎年レギュラーに1年を入れるけどトップにすえるのは流石に珍しい。だけど、1年。スタメンの穴はやっぱコイツだ》 一方の真柴が三橋へ抱いた第一印象は「ヒョロイ投手」だった。 全員一年生の西浦ナインの中でも投手が一番頼りなさげだと目星をつける。 《1球目は全力投球、外》 《雨も降りそうだし、偵察も何校か来てるし、ストライクは構わず引っ叩いてさっさと終わりにしよ》 この相手なら探り役をするまでもないとなめてかかる真柴だが、予想に反して三橋の投球と阿部の配球に翻弄され、三球三振で終わる。 《今ので真柴君の調子を少しでも崩せたのなら上出来。何っつうたって1番打席の多く回る打者だもんね。だけど、くれぐれも慎重にいこうよね。三橋君が捕まったら、ハッキリ言ってそこで勝負が着いてしまう》 「迅」 「何だよ」 「何1球目からおお振りしてんの?」 「うっせぇ!!」 「お前、いいトコ見せようとしたんだろう?油断だ、油断。いけないんだぞ~」 「ムカつくっつうの」 「迅、こっち来い」 監督は迅をけしかけて、1番の仕事をするように杭を打つ。 このやり取りを引き合いにし、和己は準太の緊張をほぐそうとしますが、まったく緊張が解けない。 その間に2番バッターはサードフライで田島にキャッチされアウトとなる。 《2アウトだ》 「ナイピ!!」 「ナ、ナイスサード!!」 「和さん、ブルペンいいすか?」 「お、おぉ」 3番の島崎の応援時には曲が変わり、踊りを踊り始めます。 《ジンもマサヤンもこんなヘロピーに何、やってんだ?》 《3番の島崎慎吾。データには出てこないけど桐青で一番いやらしいバッティングをするのはこいつだ。前2人に情報もらってないから1球目は十中八九見てくる。最悪なのはじっくり見られることだ。真っ直ぐは見せずにストライクをもらおう。ただし…》 《スライダー、外ギリギリに。外れてもいいってサインが付いたぞ。ストライクの方がいいけど、それよか、内入ってしまう方がよくないんだな》 かすったかのように思えた阿部だが、審判の判断はボールなのでこのコースを覚えておくことにします。 《遅すぎだな。ここまで遅すぎると、かえって迅には打ちづらいんだ。このピッチャーでそれ以外はねえだろ。アイツ、速球には物凄ぇ強えんだがな》 島崎は足場を踏み均して打つ気になる。 《踏み込まずに見送った後なのに足場をならした!!よーし、2球目から打つ気になってくれたみてーだぞ。遅い球ならはじき返される》 《カーブを外いっぱい》 ニヤニヤしながら分析する阿部は外へ外れるカーブを要求する。 島崎は何とか打つも、ライトへファールフライ。 ボールを追う花井が思いっきり飛んでキャッチする。 島崎は次からは左へ打とうと考えるのだった。 「ナイピ!!6球しか投げてねえぞ。効率いいな」 《6球…6球で終わっちゃった…》 「おい、ベンチに入れ。濡れるぞ」 ついに雨が降り出してしまいます。 《雨だ…》 《降ってきた》 「今日、スゲー調子いいな。構えたトコどんぴしゃで来るぜ。…暑いのか?」 「え?普通」 《そうか?顔真っ赤だし、汗もスゴイ》 「三橋、今日アンダー何枚持ってきた?」 「えっと…5…4…」 「お前、試合前替えてないだろ。そんだけあるなら1回替えな」 「う、うん」 「飲みもんとカロリーも入れとけ。持ってくるから着替えちゃいな」 《着替え、着替え…》 三橋は着替えながら、色々と考える。 《最後の打球凄かったな。ファールだけどスゴイ飛んだ。この球場はあまり大きくない。またホームラン打たれるかもあの人で3番だ4番、5番の人はもっとスゴイはず。でも…俺、アウト3つ取ったんだ。阿部君がいれば、田島君が、花井君がいれば俺は桐青からアウト取れるんだ。うぅ…力が湧いてきちゃう。早く投げたい!!今日はきっと今までで最高のピッチングができる!!早く投げたい。今日はきっと…今までで最高のピッチングができる!!》 2回表 花井は田島のアドバイスを思い出していた。 《田島はああ言ったけど、左打者用のシンカーよりはってだけの話で、多分俺にはフォークだって、難しい。決め球の来る前に手を出そう。泉の話だとストレートかスライダーなら何とかできそうだ。練習通りにセンター返しだ》 花井は準太が投げた1球目が見え、モモカンからの指示も特に無いため、いい球は逃さず打っていくことにします。 打球は、センター・セカンド・ショートの間を飛んでいく。 落ちればヒットとなるので、皆落ちろと祈ります。 無事に落ち、ヒットとなる。 ナイスという打球ではなかったものの田島に褒められて喜ぶ花井。 「沖、続け!!」 《この回もまた先頭が出た。1回みたいなバント構成は使えない。バントで2アウト3塁にしたとこでその時、打席にいるのが三橋君じゃ賭けにならないからね。三橋君はマイナスに考えて丁度いい位よ。その上で阿部君まで回すためには沖君、水谷君のどっちかにきっちり塁に出てもらわないと》 《またノーアウト1塁》 「リーリーリー!!」 6番沖 準太は尚も緊張していて、また1球目からデッドボールになりかけのボールにしてしまう。 「もう2回だぜ、そろそろ目覚ましてくれよ。後ろ見てみろ、1人でやってんじゃねえぞ」 和己はバックを見て目を覚ましてほしいと、牽制を指示する。 《クソボールの後、1拍置いた。桐青の投手は本格的にリズム崩しかけてるのかも。これは待つのもアリかもしれない》 準太が本格的に緊張しているかもしれないと踏んだモモカンは待球を指示すると、2球目もボールとなる。 和己はまた牽制をさせる。 この時、準太はバッターの打順や守備位置を忘れるほど真っ白になっていた。 《牽制しつこいな》 ニヤリとした田島は花井の靴紐が解けているのを見逃さずタイムを取る。 「リアクションすんなよ」 「はぁ?」 「俺の合図で走れ」 《え?え?俺、見てないうちにサイン出たのか?エンドラン?》 田島は準太がボールを投げ始めると同時に花井に盗塁の指示を出し、走らせる。 沖が左打者だったお陰で、投げたらバッターに当たるため和己はボールを投げられない。 《単独スチールかよ!?田島の奴!!》 《走れそうならどんどん走っていいんだけど、問題は田島君の合図》 《コーチャのスタート合図、俺がモーション入るのと同時だった》 《モーションと同時にスタートさせるなんてあいつまさか…投手のモーション盗んだのか!?たった2球牽制見たくらいでモーションのクセ盗めるもんか?大体、モーションにクセなんてあるのか!?そりゃ、そういうの話には聞くけどだってそんなもん…俺、見つけようとしたことないぞ!?》 沖がフォアボールでノーアウト1塁へ進み、1、2塁と埋まる。 7番水谷。 モモカンは苦しい状況で1球目はスライダーが来ると踏む。 水谷も泉が打ったんだと気合を入れて打つも、慎吾のファインプレーでアウトとなり、沖もダブルプレーでアウトとなる。 《ついてねぇ…ダブルプレーかよ。やっべ、溜息禁止》 「松田!!ルパンやんぞ、ルパン!!ルパン、いきま~す!!プリントの5番ね、打者、三橋!!」 2アウトで8番三橋。 「三橋、今日向こう、投球荒れてっからな。デッドボール気をつけろよ。向かってくる球は捨てろ、いいな?」 「うん」 《大丈夫か?》 しょぼくれて帰ってきた水谷と沖。 モモカンは責めるつもりはないものの、慎吾のファインプレーに怒気が上がっています。 和己は、ピッチャーには内角は投げづらいだろうと外を指示するが、内角へ入ってしまう。 それを三橋は打ち、ボテボテながらも難しいところへ転がった。 三橋は転がってしまうも、セーフとなる。 《バッ…あいつ…っ、何…っ!?》 「ナイスラン!!だけどスゲー転がったぞ。どっか捻んなかった?」 「いた、痛くないよ」 審判に屈伸するように言われて屈伸する三橋。 田島にゆっくり肩も回すように言われるが素早く肩を回す三橋。 「大丈夫だよ」 《アホが!!嘘でも痛いっつえば臨時代走でベンチ戻れるのに。転んですぐは痛めてても痛くないもんなんだぞ!!それにあいつ、内角打ちやがった。腕たたむ技術もないクセに指にでも当たったらどうすんだ!!》 《点入んなかったら転がり損だぜ、打つぞ》 9番阿部はここで点を入れておきたい。 三橋はランナーになってもやる気です。 しかし、そのやる気が空回りしてしまい、飛び出しすぎていて牽制されてしまう。 阿部が3塁ランナーの花井に電波を飛ばして走らせる。 《どっちだ!?ホームインとアウト、どっちが早かった!?》 次回、「あなどるな」 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|