おおきく振りかぶって 第24話おおきく振りかぶっての第24話を見ました。第24話 決着 「今のこの点差、試合前に予想してた奴はいるか?ま、いねえよな。相手が1年だけの公立チームじゃなかなかうちの不利は思いつかない。正直俺もなめてた。やっぱり夏は怖い。今まで何度も自分にそう言い聞かせてきたのにホントは分かってなかった。けど、もう全員分かったよな?うん、試合が終わる前に分かってよかった。後一回ある、まず一点入れるぞ。そのままこの回で決めてもいいし、延長に入ればどう考えてもこっちが有利だ。試合終わってみりゃ、俺達が予想した通りのスコアになってるんだからな。勝つぞ!!」 桐青の誰も予想することができなかった展開と状況で桐青とって、最後の攻撃となる9回裏を目前にし、和己達桐青ナインは改めて、自分達が1年生だけの西浦に対して、なめてかかっていたことに気付く。 でもまだ試合は終わっていないので、桐青ナインは残り1回に勝負をかけて、逆転を狙う「勝つぞ!」という強い気持ちを奮い立たせる。 《あと一回、何とか押さえなきゃ、何とか」 「三橋!!」 ボールを受け取った三橋は阿部と向かい合う。 《そうだ、この回さえ押さえれば…勝てるんだ。このチームで、皆で。夏の大会の初戦を突破できる!!この回さえ、押さえれば…!!」 桐青の応援団は夏祭りの演奏に合わせて応戦を始める。 迅が打席に立っている。 《球筋を見るにはバントの構えが一番だ》 《足にかけてきたか、球をよく見るためか、どっちにしろランナーがいねえならそう迷うことはない》 三橋は真っ直ぐを投げ、一球目はストライクを取る。 《真っ直ぐは捨てるのか!?》 《クセ球だけどそんな派手なボールじゃないよな。もう2、3球あれば前に転がすくらいは…!!》 《捨ててるなら尚更だ》 《また真っ直ぐ!?阿部君が真っ直ぐを後半まで隠しておいてくれたお陰でまだ真っ直ぐ打たれてない。でもそれは俺の真っ直ぐを意識しないで振ってたからでだ。でも、今は意識してる。きっともう捕まるよ》 三橋は、「“自分が”打たれなければ勝てる」というプレッシャーから、球威に迷いが出始めていた。 それでも、阿部のサイン通りにボールを投げて2球目もストライクを取る三橋。 阿部は睨みながら、三橋にボールを返す。 《どうした?阿部》 《サイン通りに投げてるのに阿部君はボールで俺の心を読めるんだ。阿部君は俺の真っ直ぐがどれだけ打たれてきたか知らない。振り向けば真っ直ぐのサインがくる。首は振れない。1番は2球真っ直ぐを見てた。もう打たれる!!》 《何やってんだ、怒られるぞ》 「三橋、ボールがどうかした?」 「どうも…」 「大丈夫なんだな」 「うんうん」 阿部を見ると、変化球で逃げたいと思ってしまう阿部は真っ直ぐを怖がっていた。 《そんなに真っ直ぐが怖いんなら他の球だともっと怖いってこと教えてやるよ。ストライクからシュートになるボールだ。ストレート捨ててるなら手を出してくるぞ。あの野郎、顔に出すなっつったのに。三橋は中学時代真っ直ぐを打たれまくった。真っ直ぐの良さをいくら説明しても体験で学んだ怖さを言葉で拭うのは難しい。桐青に真っ直ぐメインの組み立てで勝って、アイツに真っ直ぐの威力を認めさせてやる》 3球目のシュートを迅にバントされ、ボールを捕ればアウトになるので捕ろうとするがこけてしまう三橋。 田島が捕って、1塁に投げるがセーフとなってしまう。 桐青の監督は変化球に逃げる甘さがあるならそこにつけ込めると思ってしまう。 《ファールになるはずのシュートが枠の外まで逃げなかった》 《今、俺のシュート…》 《何!?ここが…限界…!?》 「三橋!!投げらんねえなら替わってくれ!!ここは三星学園じゃねえからな。投げらんねえなら、沖にでも花井にでもマウンド譲れ!!」 モモカンは三橋に見られてビクッとするが、頷きます。 顔を青ざめた三橋はゆっくり立ち上がる。 《阿部君、役者だわ。替える気なんてないくせに》 三橋に見られた沖は流れ上替わりたくないとは言えないだけでなく、こんな場面で投げるのが嫌だと思ってしまう。 《もし立場逆なら、俺は喜んで交代しちゃうね。だって自信ないよ…。三橋も自信ないのか?しかも超ビビリだ。けど、投げたがる。あんなの投球中毒だ。そういう奴の後ろはスゲーやる気出るけどな》 《怖い、投げたい…怖い、降りたくない…怖い、ここを誰にも譲りたくない!!》 《よし、目が定まった。勝ってる試合で固くなるのは欲の出てきた証拠だぜ。お前にとっちゃいい傾向なんだ。そのプレッシャー受け入れろよ》 《シュートの回転が甘くなってた。腕の振りが悪くなってる。足の踏ん張りが利かなくなってるからだ。サインは速い球、交代したくないならちゃんといい球を投げるんだ》 迅は三橋がボールを投げている間に2塁へ進んでしまう。 2番松永への1球目はストライクだったものの、速球のスピードは2割減し、阿部は電池切れかけの状態でよく投げていると思う。 モモカンはランナーに振り回されてはいけないと、バッターを一人ずつ切っていこうとサインを送る。 《踏ん張れ、三橋!!》 2球目の真っ直ぐもストライク、3球目もストライクを取る。 松永が真っ直ぐの謎が分からないまま、3番島崎が打席に立つ。 《前打席は空打って終わったんだ。まだ捕らえられていない、怖がんな》 1球目の真っ直ぐを島崎はバントするが、高く打ちあがってファールしてしまう。 2球目の速球も後ろに飛ぶので、阿部はキャッチしようと思うが届かなかった。 《俺の速球、もう速くないからおこ、おこ…》 「悪ぃ」 《怒ってない…》 「1アウト!!サード、ファースト、バント警戒!!」 《打者でアウトカウント稼ぐことを考えるんなら真っ直ぐが一番安全だ》 島崎は青木へのストレートが減るかもしれないと、三橋の真っ直ぐを打つ。 田島はバントだと思っていたが、打ったので慌ててボールを捕ろうと戻るが間に合わない。 巣山がボールを落ちた球を捕り、田島が軌道修正したので投げようとするが、握りそこなってしまい暴投してしまう。 そのミスにより、1アウト1、3塁となってしまう。 《遂にミスが出た。この流れはまずいよ》 《真っ直ぐが打たれた。ランナーがサードに行っちゃった、次のバッターは4番なのに》 打席に立った4番は決め球を変えてくるか、このままストレートで押してくるのか分からないが、1アウトでランナーが迅で、これで1点入れられないと4番ではないと自分を奮い立たせる。 《タケ、一点入れろ、その後俺がもう一点入れてこの回で決着つけてやる》 青木が今のところ真っ直ぐに反応できていないので真っ直ぐのサインをする阿部。 三橋はもう自分は桐青に攻略されたので、このまま投げていたら負けるが、それでもマウンドを降りたくないと思う。 》これじゃ、中学の時と同じ…》 「さぁ、来い!!バッチ来い!!」 「オー、サード来いよ!!」 「ピッチャー、打たせろ!!」 「1アウト!!」 「水谷、捕ったら4つだぞ!!」 「おぉ!!」 「三橋!!後のことは任してお前の一番いい球投げろ!!お前の投げる球なら誰も文句ねえから!!」 《…どういう意味だ?花井君も…怒ってない?皆も…?もう球の勢いも回転数も落ちて、それでも投げてる嫌な奴に何で優しいこと言ってくれるんだ!?》 三橋の真っ直ぐは打たれてしまう。 《投げ勝ってる!!捕ってやるぜ、三橋!!」 泉はボールを捕ってアウトを取り、花井にパスする。 そして、花井がホームの阿部に向かってボールを投げる。 迅がホームベースに帰ってきたのとほぼ同時だったが、西浦はアウトを取れるのだった。 「よし、援団挨拶に行くぞ」 「アイツら来んぞ、どうしよう」 「応援、ありがとうございました!!」 「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」 「こっちこそな、感動をありがとう!!」 和己はバッグにつけていたお守りを握り締めていた。 「さぁ、出るぞ。次のチーム、待たせるなよ」 「和さん…ぅ…す…すいません…でした…。すいませんでした…ぅ…すいません…」 「お前が謝ることは一個もない」 「俺はもっと…一緒に…ぅ…」 準太を抱きしめる和己。 「力足んなくてごめんな!!お前をもっと上手く投げさしてやりたかった…ぅ…」 「…ぅ…」 桐青ナイン達は泣き崩れていた。 「ダウン、終わったね。じゃあ、まず服を着替えて、食べる場所ないんでお昼学校戻ってからね。午後は普通の練習の前に今日の試合の反省会やります。勝ちはしたけど、ギリギリだったの分かるよね。忘れないうちに何が足りないのか確認しとこ!!」 応援団や親達は勝った方が奇跡だとか、今日くらいはゆっくりとか思いますが、そういう心構えではダメなのだと思う花井母。 「じゃ、10分後にタクシー呼ぶよ!!」 「あの、監督!!わ、私達車で来てますんで手分けして選手を学校まで運べます」 「あ、ありがとうございます」 和己らが千羽鶴を手にしてやって来る。 「花井君、最後のバックホーム凄かったっス」 「あ、いえ…」 「1年生だけでこの強さなら本気で狙ってった方がいいですよ、甲子園」 「…!!」 「これ、うちのマネージャー達が折ってくれた千羽鶴なんですけど、貰ってくれますか?」 「あ、はい」 「頑張って下さい、応援してます!!」 「あ、ありがとうございました!!」 「「「「「「「「あっした!!」」」」」」」」 《目が赤かった。でけぇ身体、大人みたいな顔、態度、あんな立派な人が泣いてたんだ。俺達、何かスゲーことやっちまったんじゃねえのか!?》 シガポに大丈夫か見てもらっている三橋は死んだように寝ていた。 「子どもみてー。よく燃料0まで動けんな」 「コイツ、今日おかしくなかった?妙に飛ばしてるッつうか…」 「そう、おかしかった!!何か表情がくっきりしてて、声もでかかった」 《やっぱり気のせいじゃなかったか。でも、今日の三橋のハイテンションがなきゃ桐青は凌げなかっただろうな。ぶっ倒れて道理だぜ》 「あの、その人そうかしたんすか?」 「ん、寝ちゃってるだけだよ」 「そうっすか」 《あれ、コイツ4番の…》 《何か目の色面白くねえ!?》 利央は聞きたい事がいっぱいあって興奮したままメルアド交換を頼みます。 「頑張って下さいね。あんたらすぐ負けたらうちの先輩弱いみたいだから。たのんますよ!!」 「誰だよ?」 「桐青1年の控え捕手だ。ベンチでサイン出してた」 田島は阿部と共に三橋を背負いながら、モモカンに三橋が潰れたと報告します。 そのため、モモカンは三橋母に連れて帰るようにお願いするのだった。泥が付いたユニフォームのまま車に乗せようとする田島と阿部を止め、息子の服を脱がしていく三橋母。 三橋を後部座席で横にさせ、助手席にルリを乗せて帰宅する三橋母。 「レンレンがグラウンドとは全然違う顔で笑える」 「あれま、不細工、うふふふふ」 《今日、来てよかった》 次回、「ひとつ勝って」 |