カテゴリ:システム・ソフトウェア
マイケル・ジャクソン「ソフトウェア要求と仕様―実践、原理、偏見の辞典」 訳は、玉井哲雄さんと酒匂寛さん。 マイケル・ジャクソンさん、名前は歌手のマイケル・ジャクソンと同姓同名ですが、 ソフトウェア業界ではこちらのジャクソンさんも、ジャクソン法・・JSP法、JSD法等で有名です。 この本の副題にある 「実践」とは、ソフトウェア開発の実践であり、特に、プログラミングに先立って行われる要求定義と仕様作りの作業のことを指し、 「原則」とは、ソフトウェア開発作業と方法論を律すべきだとマイケルさんが信じる事柄をいい、 「偏見」とは、上記について長年考えた結果、ジャクソンさんの中で根を下ろした個人的な意見を指します。 「階層構造」「木構造図」「述語論理」「多フレーム問題」等など約80余の術語について、 通り一遍の術語の定義だけに留まらず、 ジャクソンさんの示唆に富む考えがコンパクトに・・ズバリと披瀝されています。 たとえば、 「オブジェクト指向分析」の説明においては、 オブジェクト指向の世界観を「分析」の領域に適用しようとしていることに対して・・・UMLを初めこの考えが主流になっているように思いますが、 オブジェクトの概念はあくまでプログラミングの概念なのである。それを世界観にまで広げても、世界の中の個体には上手くあてはまらない。 プログラミングのためには強力な道具であり、自在に使うことはできるが、現実世界をこうした言語で捉えるのは、「豊かで、気紛れで、手に負えないほど雑多すぎるのだ」と、バッサリ。 この点、議論あるかと思いますが、オブジェクト指向における「設計」-「開発(プログラミング)」は、 シームレスにつながると思いますが、「分析」から「設計」は・・・これは「構造化分析」でも そうですが、ジャンプが必要なのだと思います。 また、先日の酒匂寛「課題・仕様・設計―不幸なシステム開発を救うシンプルな法則」の中の 「課題」「仕様」「設計」の3つの視点を、ジャクソンさんの言葉を借りてちょっと整理してみると・・ システム開発の上流工程は、 「課題」 - 「仕様」 - 「設計・実装」 「なぜ」 - 「何を」 - 「いかに」 「Why」- 「What」- 「How」 を決めることであり、 各々に対応する記述として、 ・Whyを表現するには、 「適用領域だけ真であるような記述」 ・Whatを表現するには、「機械と適用領域に共通した記述」 ・Howを表現するには、 「機械にとってだけ真であるような記述」 ということになると思います。 短工期開発で、ドキュメントをはしょるのは、Howの部分のみ記述し WhyやWhatの部分が欠落してしまうことが多く、 仕様の根拠・正しさが後になって説明できずに窮するということになります。 ジャクソンさんの言葉、どれも味わいがあって、好きになりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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