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2020年の中国 「新常態」がもたらす変化と事業機会 野村総合研究所:此本臣吾、松野豊、川嶋一郎 東洋経済新報社 2016年刊 最近の在中国日系企業の経営者のぼやき・・ 「中国の経済成長率が低下してきたのは事実だが、毎年着実に成長しているし、 今後も成長は続くだろう。しかし、日本からは中国の経済がこのまま右肩下がりに失速し、 崩壊するとでも思っているような話しか聞こえてこない」 「顧客ニーズ、事業環境、中国企業の実力など、日々大きな変化が見られるが、 日本はその変化を理解し、対応しようという意識が低い」 ≪・・中国経済について目の前の短期的な出来事にあまり一喜一憂する必要はない。≫ ≪今の中国は10%に近い高成長から5%前後程度の中成長にシフトダウンする移行期に入ったといえる。 過去の日本でいえばオイルショック後の1970年代半ばに相当する。 日本の過去の例をみても、高成長が終焉するタイミングでB2B業界の深刻なデフレが発生し、 業界構造の調整には10年、15年単位の時間を要している。 ある意味では過去に日本が経験した道を中国は歩んでいる。 今の中国が構造調整において「党の手」や「政府の手」を使うのは、かつて日本が自民党と霞が関の 介入で構造調整を行ったのと同じである。 しかし、日本よりも規模が大きく、地方の統制が効きにくい中国においては、B2B業界の構造調整 に日本以上の時間を要するだろう。 つまり、今後もしばらくは経済への党や政府の強力な介入は不可避である。≫ 2015年3月の全人代政府報告では、従来型の高成長から中成長の構造改革を、 「新常態(ニューノーマル)」と称している。 新常態とは、「(成長率が低下しても)質と効率の高い持続可能な発展」を可能とさせる 一連の政策を意味している。 新常態が、日本企業と中国ビジネスにとって、どのような意味を持つのか? 1.中国経済は、2015年から景気減速感が出ているが、このまま一気に右肩下がりの状態に 入っていくわけではなく、中長期的に見れば潜在成長率はまだまだ高い。 経済規模は大変大きなものになっており、経済成長率は従来のような高い数値こそ望めないが、 引き続き4~6%程度で推移していける可能性が高い。 2.経済成長の牽引役は「投資」から「消費」に移行しつつある。 中間層が成長・成熟し始めている中国では、中間層による「大衆消費」が消費市場の主体として 大きな影響力を持つようになった。 地方経済の底上げが進んでいることに加え、インターネットの浸透や高速道路・道路網の整備 などを背景に、地域の情報格差も縮小し、市場の「同質化」が進む。 3.経済が高成長から安定成長に移行していく中、中国の産業発展や企業行動においては、 「量的拡大」ではなく、「質的向上」が重視されるようになっている。 従来の中国産業・企業の競争力の源泉であった「低コスト」は過去のものとなり、 今度は「生産性」や「創新力」の向上が不可欠であるが、近年、さまざまな分野で「活力型企業」 「中国式創新企業」が登場し始めており、彼らは日進月歩で力を付けてきている。 4.中国市場において日本企業のブランドに対する認知度は徐々に低下しつつある。 一方で、近年の訪日中国人の増加に伴って、日本製品やサービスに対する評価が高まっており、 こうした状況を活かし、改めて中国の消費者を理解し、彼らに品質価値を伝えるマーケティング やブランディングの活動を進めることが効果的になってきている。 <目次> 序章 新常態における事業機会 第1章 中国の社会・経済展望 第2章 新常態下の産業発展戦略 第3章 新常態下の中国企業とイノベーション 第4章 価値転換が進む消費市場 第5章 新常態と日本企業 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.04.16 21:55:49
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