2017.02.22

内田和俊「レジリエンス入門 ──折れない心のつくり方」(ちくまプリマー新書)


内田和俊「レジリエンス入門 ──折れない心のつくり方」(ちくまプリマー新書)

筑摩書房

2016年刊



 レジリエンス(resilience)とは、もともとは物理学用語だったもの。

 物理学用語としての「ストレス」は「外圧による歪み」という意味であるのに対して、

 「レジリエンス」は「その歪みを跳ね返す力」として使われています。

 嫌なこと、悲しいことを経験すると、私たちの心はへこんだり、くじけそうになり、落ち込んだり

 しますが、そんな嫌な気分をもとの正常な状態に戻す力が「レジリエンス」である。

 レジリエンスによって、冷静さを取り戻すことができるようになる。
 
 心理学用語としてのレジリエンスは、「精神的回復力」「復元力」「心の弾力性」などといわれることが

 多いですが、「目の前の逆境やトラブルを乗り越えたり、強いストレスに対処することができる精神力」

 を意味します。

 「心の自然治癒力」や「心の筋肉」とも表現される。

 自然治癒力と筋肉には、共通の特徴がある。

 一つは、個人差が大きい、ということ。

 もう一つは、鍛えれば強くなる、ということ。



 レジリエンスを高めることで、ストレスに柔軟に対応できるようになる。

 ただし、誤解してはならないのが、

 レジリエンスが高まったからといって、へこんだり、落ち込まなくなったりするわけではない。

 気持ちの切り替えが早くなるので、いつまでもクヨクヨと尾を引いて落ち込み続けることがなくなる。




 レジリエンスを弱めてしまう考え方

1.否定的側面の拡大(肯定的側面の否定)

 心理学者のバーバラ・フレデリクソンは、

 ポジティブな考え方とネガティブな考え方の理想的なバランスは、

 3対1であるという説を提唱している。

 同様に、プロスペクト理論では、ネガティブな思考の方が、2.25倍も強いため、

 ポジティブな考え方を2倍しても、まだ足りない。

 人間は、もともとネガティブな考え方をするように初期設定されているため、

 ちょっと多めに感じる3倍ポジティブに考えることでようやくトントンになる。


2.二分化思考(少なすぎる判断基準、勝ち負け思考)

 二分化思考は、「あれか・これか」の二者択一思考ともいいかえることができる。

 この二者択一思考は、「選択」ではなく「脅迫」です。

 二分化思考は、自分を脅迫しているのと同じであり、嫌な気分やマイナス感情も強くなる。
 
 選択と呼ぶためには、最低でも3つ以上の選択肢が必要となる。 


3.「当然」「べき」「ねばならない」思考

 ネガティブな出来事に遭遇したとき、マイナスの感情を強めてしまうのが、

 「当然」「べき」「ねばならない」思考です。

 「当然」「べき」「ねばならない」思考が強いほど、意に反する現実に直面することが多くなり、

 嫌な気分やマイナス感情も強くなる。


4.過剰な一般化

 過剰な一般化とは、公式やマニュアルのように一律に物事をとらえてしまう考え方を指す。

 数学の問題であれば、公式やマニュアルをあてはめることで解くことができるかもしれませんが、

 現実の世界、特に対人関係には、マニュアルは存在しません。
 
 「レッテル貼り」とともに、過剰な一般化は、真実を見る眼を曇らせてしまう。
 

5.結論の飛躍

 被害者意識の強い人は、いろいろな要素が絡み合って上手くいかなかったことに対して、

 「○○だから失敗した」というような「結論の飛躍」をしてしまう人が多い。


6.劣等比較

 自分より優れている人、または一部優れている部分を持っている人と比較して、

 うらやんだり、ねたんだりする。

 焦り、嫉妬、危機感などのマイナス感情となる。 


7.他者評価の全面的受け入れ

 イソップ寓話の「ロバをつれた親子」の例のように、自分軸を持たず、

 他者のいうことを鵜呑みにしたまま、言われたことを受け入れ続けることで、

 すべてを失ってしまうことになりかねない。

 他者からの評価や忠告は、自己改善の参考として、賢明な取捨選択をする必要がある。


 


 レジリエンスを高める処方箋 

1.マインドフルネスの実践

 「ながら行為」を排除し、いま現在行っている行為そのものに集中している状態のこと。


2.主体者意識を持つ

 自分の人生は自分次第

 哲学者のラッセルは『幸福論』の中で、

「賢人は、妨げうる不幸を座視することはしない一方、

 避けられない不幸に時間と感情を浪費することもしないだろう」といいます。

 つまり、

 主体者は、自分の意志で変えることができる自らの思考と行動に意識を集中し、

 エネルギーを注ぐ。


3.マイナスの感情をポジティブな行動のエネルギー源にする

 マイナス感情から派生する強いエネルギーは、使い方で、毒にも薬にもなる。

 焦り、嫉妬、危機感などのマイナス感情を抑えることが困難である場合、

 ポジティブな行動へのエネルギー源として活用すべきである。


4.意味づけをしたり、結果の構成要素に仕掛けを講じることによって

 「fruitful monotony(実りある単調)」に耐える。

 意義ある大きなことを成し遂げるためのプロセスには、

 必ずそこに、ある種の単調さが存在する。

 成功は、「fruitful monotony(実りある単調)」の先にしかない。






<目次>
まえがき
第1章 レジリエンスって何? レジリエンスって何?/レジリエンスは特別な力ではない/心は体のどこにある?/鍛える部位が分かったら後は実際に鍛えるだけ/ちょっとだけ視点を増やす練習をしてみます/レジリエンスを高めることによって得られる多くの副産物/なぜ今レジリエンスが注目されているのか?/ゆるゆるの昔/キツキツの今

第2章 何が私たちを嫌な気分にさせているのか? 何が私たちを嫌な気分にさせているのか?/エリスのABC理論/具体例を使ってABC理論を検証する/かつてメンタルの問題には常にあきらめ感が漂っていた/性格とは?/性格とはエリスのABC理論の延長線上にある/三要素を二つのグループに分類する/三要素は連動する/まず「行動」を変えれば「気分や感情」も連動する/「思考」がレジリエンス強化のための一番のカギとなる/すべての物事は二度つくられる/ストレスは悪者ではない

第3章 レジリエンスを弱めてしまう考え方 (1)否定的側面の拡大(肯定的側面の否定)
もともと私たちの脳はネガティブに考えるようにできている/私たちの脳は一万年前のまま/今の三倍ポジティブに考えて、ようやくバランスが取れる
(2)二分化思考(少なすぎる判断基準、勝ち負け思考)
二分化思考は自分への脅迫行為
(3)「当然」「べき」「ねばならない」思考
この思考のさらなるデメリット/なぜここでも感謝の習慣が効果的なのか/(2)と(3)に共通する視点の増やし方/感情が激変した実例/(1)〜(3)には見逃せない共通点がある
(4)過剰な一般化
(5)結論の飛躍
(4)と(5)の共通点/オプションを増やすためにできること/エリスのABCDE理論
(6)劣等比較
(7)他者評価の全面的受け入れ
(6)と(7)の共通点/目的と目標は異なる/設定する順番も大切/目標設定なんか意味がないと言う人もいる/心のニーズとは何か/自分軸の確立に伴う副産物
(1)〜(7)の根底に存在する共通の考え方
最善主義という考え方/「平穏」と「安心感」は異なる

第4章 レジリエンスを高める処方箋 カルテ(1) いつも上の空で今を生きられないA君
マルチタスクは脳を破壊する/A君の症状は良い結果を残せない人の一番の特徴/マインドフルネスという処方箋/なぜ呼吸法がメンタルに良い影響を与えるのか/呼吸法の具体的な方法とその他の効果
カルテ(2) 被害者意識の強いB子さん
被害者意識における被害者とは?/人生における天動説と地動説/今の自分は過去の選択の結果
カルテ(3) マイナスの感情に振り回されてしまうC君
マイナスの感情によって得をしてきた過去がある/マイナスの感情をプラスの行動につなげる/激しい怒りと嫉妬を夢実現のエネルギー源にした実例
カルテ(4) 単調で地味な作業に興味を持てないD君
白無地のジグソーパズル/栄光の裏には、一見「無意味」に思えてしまうような単調さが必ず存在する/ちょっとしたコツで単調さを耐え抜くことができる
カルテ(5) なかなか人に頼れないEさん
過信と不安が同居しているケースもある/マズローの五段階欲求説にみる「頼ること」と「頼られること」の大切さ
セルフコントロールに関する処方は応用範囲が広い

あとがき





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最終更新日  2017.02.22 22:49:43
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