MATRIX7

2010/07/05(月)16:43

下方排気システムの罠

 レッドブルの始めたエンジン排気ガスの下方排気システムは、序盤は黙殺されていた。レッドブルの速さの秘密は、サスペンションシステムにあると思われていたからになる。エンジニアなどが排気ガスの下方排気システムの優位性に気がつくのは遅れてしまった。下方排気システムのデメリットがいくつか見えていたからだろう。  上方に排気ガスを排出するシステムの設計は、エンジニアも慣れている。空力分析や温度に関する問題もほとんどない。ところが、下方排気システムは熱がボディーの下を通過する。そこには、サスペンションアームやディフィーザーなどのパーツが並んでいる。ボディの下はトンネルのような状態になり、熱の逃げ場がない。最初から耐熱パーツを組み込んでいるレッドブルには無縁な話でも、あわてて改造されたマシンは、多くの下部パーツが排熱の影響を受ける。  カーボンは強度と耐熱性に優れた物資だが、プラスチックと多層構造になっているパーツは熱で変形しやすい。それを防ぐには、パーツを外から断熱材で覆うしかない。排気ガスにさらされるパーツをすべて設計し直すことは難しいので、周りを断熱材で覆うのだが、その。重さと空力への影響が災いして、下方排気のメリットを生かすことができないらしい。あえて、マクラーレンやフェラーリが実戦投入を決めたのは、その効果を確認するためだろう。  そろそろ、各チームは来年度のマシンの仕様を決めねばならない。下方排気システムの効果が歴然ならば、来年度のマシン設計に取り入れる必要がある。たいして役に立たなければ、経験を蓄積している従来の設計に戻したほうが賢い。それを判断するには、F1マシンに搭載して、実戦での経過を見ないと話にならない。せっかく搭載してみても、メルセデスのようにむしろマイナスの効果を発揮する場合も出てくる。上方排気のウィリアムズに負けるようでは、下方排気を採用する意味がない。名人ロス・ブランでさえも、下方排気システムの選択に悩まされそうな時期に来ている。

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