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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2025年03月27日
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下 之 巻  惣七小女郎道行

 恋と小袖は一模様、身に引き締めて合ってこそ、寝心もよく、着心もよく、よくよく見限り果てられ

て、追い出されし、我が宿の辺りに顔を見られじと、戸口も見世も開けやらない。星も暁天のきらめきを

見せている。夜も深いが、その深いではないが親の深い恩を重ねて着たるその時は、いとど心も軽く感じ

る。

 今朝、肌薄く行く道は、肩背の苦しい身の行方、身から出た錆とは言いながら、情け馴染みの京の町、

三條小橋で知る人に遭う、粟田口かと思ったが、先に心が急く関寺へ、身の衰えが恥ずかしい。

 今の小町屋惣七は、博多小女郎のならし竹、何時も心に懸けておく。親の勘気ではないが、かいき(舶

来の絹布の名)に綾錦、もはや都を見ることも、またとなるまい限りと言えば、共に泣く泣く憂き苦労、

黒い繻子の糸の切れない弁柄縞の、愚痴ではあろうがまだ諦めるには早い。気の弱いことは言わないがよ

い。

 先に行く子に尋ねれば、抜け参宮(親や主に内緒で伊勢参りすること)と答えたが、その頭の抜けが密

貿易を連想させてぎょっとしたが、神様、守り給えと再拝の袖に神楽の鈴鹿山、八十瀬の川に濡れ初めた

おれとそなたが初恋に、二世も三世も変わらじとのぼせ上がった結果がこの坂の下だ。

 今落ちぶれの身と知れば、あんなにも思いつめないでざっと浅黄に染めるのであった。裏表のない心か

ら偽紫の色悪く、やつれ顔を見る悲しさと、絞る袂の涙の露。野辺の草葉も色付いた。泣いて心を乱せと

か、あなた以外に頼る人がいないとは言え、この小女郎がいなかったなら、こんな目にも遭わないで済ん

だものを。世帯の花も散り、縮緬の今のような姿にはしなかっもの。

 夢幻のこの世から、未来、未来も、夫婦ぞとすがりついてぞ泣いているのだ。

 関のお地蔵は親よりもましだ、そう聞いてはいるが、そのお地蔵様より増しとは思わないが、この世で

の舅御の機嫌を直して賜れと、頼みを直ぐに救い乗せて、共に助かる駕籠舁きが駕籠をやりましょうかと

歩み来る。

 尾張へ行く者だが先の宿までの駕籠賃は幾らだね。石薬師までは道は二里ある、駕籠賃はころりころり

(銭百文の符牒)は知らない。知らないのならば銭百だ。それは高いぞ、それでは負けて行きましょう、

七十文、七十文、仕方がない、負けましょうよと駕籠を下ろした。

 道は一筋、駕籠二梃(ちょう)、二人の思いを抱き乗せてか、見かけよりは肩が重い、雲助二人が問答

する、小川だぞ、そこをよけろ、肩をかえよう、よし来た。

 杖突き坂、小谷(だに)、大谷を打ち過ぎて日影も我も行く空の末果てしなき。旅衣を着たのは昨日今

日とは思うのだが、都を出てからはや四日ほど、目的の四日市にもほど近い、追分に到着した。

 正(まさ)しかれと、事が上手く運ぶようにと心中で頼みをかけた辻占の、駕籠舁きの詞のはずれ、こ

ろりと言ったのが惣七の胸に響き、役人の縄に掛からない前から気持ちがすくんでしまい、此処で駕籠を

交換するのだが、向こうから来た客は駕籠を降りたのだが、惣七の心は身が竦んでしまい、降りることさ

えできないでいる。

 これ、小女郎、先ずそなたから乗り換えに行きゃ。そんなら先に参りまする。四日市とやらで待った居

なさい。駕籠の衆、自分は一足早く行くが、あの人もなるべく早くお連れして下さいな。と、降り居の駕

籠の河合村、小女郎は何の気もつかずに駕籠に任せて乗り換えて行く。

 石薬師から来た駕籠の者が声を掛けて、女中の連れを乗せた駕籠はこれか、うち(駕籠賃)も聞いた

ぞ、駕籠を替えよう。おっと幸い、さあ、立てよ。旦那殿、駕籠を替えまする。降りてくだされいと簾を

打ち上げた。駕籠を替える相手の客、実は役人であったが、は早くも駕籠を降りて引っ提げていた風呂敷

包みに身軽い出で立ちの袷と股引き、こはぜ脚絆に身を固めて、腰には早縄、惣七は見るなりぞっとして

余所を見る顔。自分の顔は見せまいと忍ぶ頬被り、心が逸り降り立って駕籠の衆、太儀と乗り換える。

 駕籠の簾を自分の手に取って引き下ろし、急ぎの者じゃ、割り増しをやろう。さあ、駕籠をやったりと

言う声は、人の耳にも震えて聞こえる。

 先刻駕籠を降りた捕手の役人が、小町屋惣七、捕縛するぞと声を打ちかけた。駕籠に縒りそ(麻緒を縒

った)細引き網(縄)を掛けた。

 中でこれはとあがいても翼が無いので飛ぶこともできない。籠の鳥かや惣七は中で音を泣くばかりなの

だ。

 兼ねて合図の小屋の者(非人、捕り手の命を受けて助力する定めであった)が十手を提げてくるくると

追っとり巻き、咎は心に覚えがあろう、そちどもと仲間八人と、罪状明白なるにより召し捕れととの仰せ

だ。我々は捕りに向かって来た。大人しく尋常に縄につくか、もし手向かうなら力づくでも召し捕るがと

言うのだが、念仏の声の他には何の答えも無かったので、此処は途中だ、次の宿までこのままで連れて行

って縄を掛けて国元まで引き連れよ。

 それ、駕籠をやれ。心得ました、とても逃れられぬ命だ。此処で縄をかけないでも大丈夫だろうと呟き

呟き立ち寄って駕籠を舁き上げれば、がばがばと駕籠から漏れて流れる血は、大地に毛氈を引き延べた如

くである。

 乗り手がうんうんと喚くので、やれ、駕籠の中で自害したぞ。皆、集まって来い、集まって来い。と、

駕籠を投げ捨てて恐れをなして駕籠のそばには寄り付かない。

 役の者共が立ち掛かって網を引き退けて、簾を上げれば、これはどうだ。一尺五寸の脇差を鍔元まで突

っ込んで、刃先は弓手(ゆんで、左)の脇腹にある。虫の息で目だけはぎょろぎょろと、役人も呆れて詮

方がないのだった。

 かかるところに小女郎が身にもかかった縛り縄、引かれて来る身の悲しさよりも、この有様を見る悲し

さ。流れた血潮を踏みしだいて、駕籠の内に顔を差し入れて、小女郎が来ましたよ。わしも今縛られた。

縄掛かりましたぞや。昨夜までは同じ枕に起き伏しして、何処までも一緒と約束を交わしたのに、こなん

一人が先立って私だけ一人がこの世に生きながらえて、嘆けと言うのですか。苦しいでしょうね、切ない

か苦しいか。言うのも涙にかきくれて前後も覚えずに泣いている。

 惣七は苦しい目を見開いて、おお、縄にかかったか小女郎。国法を破り、親に不幸の大悪人、広い世界

を狭められて所での住み居も出来ないように身を持ち崩し、落ち着く方なく、当て所ない。この所まで迷

い来て天の網、地の縄に絡められたこの惣七、故郷に引かれ死罪に遭うならば一門の面に血を注ぎ、親へ

は不幸の上塗りと思い定めての自害だ。毛剃九右衛門の海賊に組みして今まで身に纏っていた繻子縮緬、

そなたに着せた綾錦の冥加に尽きて(贅沢をした罰が当たって)、菰(こも)を被る身に成り果てた。夫に

準じて扱われるそなたまで縄に掛けられて、汚名を世間に流させて、憂き目を見せているのは自分の身の

一心から事を起こした。

 この惣七がいなかったなら、今の憂き目には遭わせなかった。不憫だ、さぞ悲しかろう。長くも添いも

しないのに命まで捨てさせる事になってしまったのか。許してたもれ小女郎と、言う声が既に息切れして

頼み少なく見えるのだ。

 鋭く(いかつく無慈悲)見える捕り手達、面会は獄舎に入ってからは出来ない事、人は相身互い、人

と言うものはお互いに思いやりがあるべきだ、両名に名残を惜しませよと大目に見るのが優しい心遣い

だ。

 聴けば聴くほどになお悲しくなり、その起こりは誰がさせたのでしょうか。小女郎を人手に渡すまいと

のお心から。親御に換え、命に換えて女房に持って下さった。それ程にわしが可愛いのですね、冥加ない

(勿体無い)とも忝ないとも、お前に禮を言う詞、日本は愚かなことで、唐天竺(からてんじゅく)にもよ

もあるまい。縛られている手が自由になるならば、拝んで死にとう御座んすと夫の膝に顔を差し寄せて消

え入り、絶え入り咽せ返れば、この世で逢うのはこれが最後です。来世も変わらぬ夫婦です。南無阿弥陀

仏の声も微かになり、脇差をぐっと抜くなり早くも息が絶えた。

 小女郎はわっと声を上げて、待ってくだされ、連れ立ちたい。遅かれ早かれ自分も殺される身の上で

す、皆様の御慈悲で今此処で殺して下され、殺して下され。そう言いながら狂いわななき駆け回る。

 かかる所に検非違使(もと、京洛中の非違の検察を司る職を言うが、ここは、追捕の役人の長)が先頭

に立って、此処彼処で召し捕った海賊ばら、傾城が混じって縄を附けたが一度にあちらに引いて来た。

 検非違使は一札を押し開いて、召し人共に申し聞かする趣がある、有り難く承れ。一沖(ひとつおき)

に停泊する大船につてを求めて波を潜り、水底を抜けて船へ近づき諸種の外国産の商品を法に背いて入手

した行為は国法に背く大罪である。武士に仰せて死罪に処すべき所だが、今上天皇が即位なされた御慶事

による恩赦で、死罪一等を勅免なされたぞ

 聞き終わらないうちから縄付き共は蘇った心地がして、一度にあっと勇んだのだ。

 更に、傾城達にうち向かって、汝らは流れの身、彼奴(きゃつ)らに添うのは勤めの習い、科(とが、

罪)ではない。今後何処へ行っても自由だ。縄を許してやれと下知したので、畏まりましたと雑色(雑

役・駆使にあたる下役人)どもが立ち寄って解く縄の跡。

 吹きさすり、撫でさすり、王様(天皇)のやり方は格別に気の利いたものだ。この手が自由になったの

なら、廓の門を出たも同様、笑い悦ぶその中で、小女郎は始終しくしくと涙を止めかねていた顔を振り上

げて、連れ合いの惣七殿はこのような御慈悲を待ち受けないで、私を捨ててこの世からあの世に飛んで行

ってしまい、比翼の鳥(男女の愛情が深いのに喩える想像の鳥。雌雄が各一目一翼で、常に一体となって

飛ぶ)の片羽交い、今が羽片ならぬ、博多の小女郎、生きても甲斐のない命ぞや、お慈悲に殺してたべの

うと、声も惜しまずに泣いている。

 おお、尤も、尤も、夫惣七と同類とは言いながら色に迷った若気の至り、罪の軽重は明白である。自害

したのはその身の不祥(ふしょう、不運、不幸せ)、汝は夫に成り代わって親惣左衛門に孝行を尽くし、

後世を弔い惣七の追善をしてやりなさい。

 勅に任せて彼奴(きゃつ)ばら、それ追い払え、重ねての悪事は出来ないように止め灸(最後に据える

灸)として顔に焼き鉄(かね)入れ黒子(ぼくろ)、耳を削ぐ、鼻を削ぐ、血まぶれのままで追い払った。

 隣国、他国、幾く万人が博多小女郎の物語を、語るも、聞くも、後代の長い噂を残したのだ。





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最終更新日  2025年03月27日 19時20分30秒
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