「カクテル・パーティ」 その四
エドワード やはり、あなただった、ジュリア。 (ジュリアとピーターが入って来る)ジュリア 私は、あなたが居てくれて、とても嬉しいわ。分るでしょう、私はこの辺に眼鏡を置き忘れたに違いないの。そして、単純に私はメガネがないと何も見えないのよ。私は町中をピーターを連れて駆けずり回ったの、眼鏡を探すので。行った場所は隈なくよ。誰かが既に見つけてくれているかしらね。されが私の物かどうか教えて下さらない。プラスチックのフレイムのものだけど。私、色は残念ながら覚えてはいないの。でも、ちゃんと記憶している、片方のレンズがなくなってしまっている。見知らぬ客 (歌う)水入りジンを飲んでいるが、そして俺は片目のライリーで、家主の娘を目指してやって来たぞ、そして彼女は俺の心臓を完全に掴んでしまった。……、あなたは私との約束を守ってくれますか。エドワード はい、守ります。見知らぬ客 (歌う)トーリーリー・トーライリー、片目のライリーは何が問題なのか…。 (退場する)ジュリア エドワード、あの恐ろしい男は誰なの。私のこれまでの人生でこんなに侮辱を受けたのは、初めても事だわ。私が眼鏡を忘れたのはとても幸運だった。これこそは私にとっての冒険だもの。彼について話してちょうだいな。あなた方は一緒にお酒を飲んでいたのでしょう。それでこれがその種の友人なわけでしょう、ラヴィニアが道を逸れてしまった時の。彼は誰なのですか。エドワード 僕は知らないのです。ジュリア あなたが知らないのね。エドワード 僕は人生で一度も会ったことは無いのです。ジュリア では、どうして彼は此処に来たのかしら。エドワード 僕は知らないのです。ジュリア あなたは御存知ない。そして、彼の名前は何かしらね。彼が自分のなまえはライリーだって言うのを私は聞いたわ。エドワード 僕は、彼の名前を知りません。ジュリア あなたは彼の名前を知らない。エドワード 僕は言いましたよ、彼が何者なのか見当もつきませんよ。そして、何故彼がここに来たのかも。ジュリア でも、名に就いてあなた達は話をしていたのですか。それとも、ずっと歌を歌っていたのかしら。いずれにしても全く謎が多すぎるわね、今日のこの場所には。エドワード 申し譯もありません。ジュリア いいえ、私は大好きよ。しかし、それでメガネの事を思い出したわ。それが最大の謎よ。ピーター、どうして私の眼鏡を探しては下さらないの。マントルピースの上を見てね。何処に、私は腰を掛けていたかしらね。ソファをひっくり返してみて。ない。この椅子は…。クッションの下を見てね。エドワード あなたのバッグの中にない事は確かなのですかね。ジュリア ええ、勿論ないわよ…。そこに私はメガネをしまってあるの。あら、あったわ。有難う、エドワード。それであなたがとても賢いことが分かるわ。あなたがいなければ二度と眼鏡を見付けられなかったでしょう。次に何かを失った時には、私、真っすぐにあなたの所へ来るわ、聖アンソニーの所ではなくてね。さてさて、大急ぎで行かなくては、私はタクシーを待たせたままなのですものね、いらっしゃい、ピーター。ピーター 出来ればだが、あなたと一緒に行かなくとも構いませんか、ジュリア。戻る途中で、僕はエドワードに言わなければならないあることを思い出したのです。ジュリア ああ、ラヴィニアについてなのね。ピーター いいえ、ラヴィニアについてではないもですよ。それは僕がエドワードに異見を徴したい事柄についてなのです。そして今、それができるのです。ジュリア 勿論、構いませんよ。ピーター 少なくと、リフトで下まで、お供させて下さいな。ジュリア いいえ、あなたは此処に居なさい。そして、エドワードと話をして。私はもう途方に暮れてなどいないから。そして、その上に私は機械の操作を上手に自分で熟してみたいの。リフトの中で瞑想も出来るし。さようなら、お二人。有難う、とても感謝しているわ。 (退場する)ピーター 僕は君を邪魔していない事を願うのだが…,エドワード。エドワード もう既に僕は邪魔されてしまっていると感じるのだがね。そして僕はむしろ一人でいたかった。ピーター 僕は君の手助けが欲しいのだが。電話して後で会おうと思っていたのだが、これが好機だ思われる。エドワード それで君の問題は何なのだろうか。ピーター 今晩、僕はもうこれ以上は耐えられないと感じた。あの奇怪なパーティ、済まない、エドワード。勿論、実際には実に素晴らしいパーティだったさ。僕以外のみんなにとってね。そしてそれは君の過失なんかじゃない。君は状況を把握していなかったようだ。エドワード 一つか二つには気づいては居たのだが。でも、全てに気づいていたとは思わない。ピーター ああ、気づいていなかったことを僕はとてもうれしく思うよ。僕は自分が思う以上に上手く振舞ったに相違ない。もし君が気づかなかったなら、他の参加者もそうだったのだろう。でも、ジュリア・シャトルウエイトだけは少なからず警戒している。エドワード ジュリアは確かに観察眼に優れている。しかし彼女はむしろ他の事を頭に置いているのだろう。ピーター セリアの事、僕と彼女の関係…。エドワード おや、君とセリアについて何かある得るのかね。二人に共通の何かがあるとでも思うのかね。ピーター 僕らは大いに共通の事柄があると、僕には思われたがね。僕らは二人とも芸術家だからね。エドワード 僕は決してそうは思わない。どんな芸術を君は実践しているのかな。ピーター 君は僕の小説を読んだことがないのだろうか。それは非常に好意的な批評を得ているのだがね。しかし、我々二人の興味を多く惹いているのはシネマなのだ。エドワード 活動写真に対する共通の興味はしばしば若い人々を一緒に結びつけている。ピーター さて、君は皮肉でありすぎるようだが。セリアはフィルムの芸術に関心を示している。エドワード 或る可能な職業としてかな…。ピーター 彼女はそれを職業にするかもしれない。彼女なりの詩心を以てね。エドワード そう、僕は彼女の詩篇を読んだことがある。セリアの関心のある者には興味深いそれを。勿論、その文学的長所を離れてだが。文学的な価値を僕は判断する振りはしない。ピーター 断然、僕は判断し得るのですよ。そして、それは非常に優れている。でも、それが重要な点ではない。重要なのは、思うに、我々が大いに共通項を有していること、又、彼女もそう思っていると僕が思う事なんだ。エドワード どのようにして彼女と知り合うことになったのかね。 (アレックスが登場する)アレックス ああ、いたいた、エドワード。何故、僕が覗き込んだかわかるかい。エドワード その前に、どうやって中に入ったのかを先ず、知りたいね、アレックス。アレックス 僕はやって来て、ドアが開いているのを知ったのさ。そしてそれから、中に入り君が誰と一緒にいるのかを知りたいと思ったのさ。ピーター ジュリアが開けたままにしておいたに違いない。エドワード 気にしなくともいいよ。出る時に君たち二人がドアを閉めてくれればね。アレックス 君は僕と一緒に来てくれたまえ。思ったのだが、エドワードは今晩は一人きりでいるかもしれない。そして、僕は知っている、君が夜を一人きりで過ごすのをきらっているのを。そこで、君は僕と晩飯をするために外出しようではないか。エドワード どうも御親切を有難う、アレックス。僕は大丈夫だよ。でも、むしろ一人でいたいのだよ、今夜はね。アレックス でも、君は夕食を取らなければならないだろう。外出するつもりなのかな。誰かが君に夕食を届けてくれるのかい。エドワード いいや、あまり食欲もないので、自分で用意しようと思っている。アレックス ああ、その場合には、僕は自分のなすべき事が何なのかを心得ている。ちょっとしたサプライズを君に提供しよう。僕は中々の料理上手なのを、知っているね。僕は君の家の台所に直行して、ちょっとした夕食を用意しよう。それを、君は一人で食べればいいさ。それから、我々はお遑するよ。その間に、君とピーターは話を続けることが出来る。僕はその邪魔はしない。エドワード やれやれ、アレックス。食料貯蔵室には君の料理に適当な物などは何もない。そう思うのだがね。アレックス そこが僕の特別な才能なんだが、無から口に合う上等の料理を設えてしまうのがね。どのような余り物でも結構。僕はそれを東の国で学んだのだ。一撮みの米と少しの乾燥魚で僕は六皿分の料理をでかしてしまう。何も言わないで、直ぐに始めるからね。 (台所に去る)エドワード さてと、話はどこまで行っていたのかな…。ピーター 君が、僕はどのようにしてシリアと知り合ったのかと尋ねたのさ。僕は彼女とは此処で出会った、一年前に。エドワード ラヴィニア主催の素人木曜の会でかな。ピーター 或る木曜日、何故、素人を付けたのかな。エドワード サロンを開始するラヴィニアの試みなのだ。そこで僕はより重要でない客を接待し、環境に順応しにくい人々を担当する。詰まりは、ラヴィニアの間違いをね。しかし、君はより重要でない成功者の一人さ。少なくとも一時的にはね。ピーター 僕は、そうは言いませんよ。しかし、ラヴィニアは途轍もなく僕に親切にしてくれました。そして僕は大いに彼女に恩義を感じています。そしてそれから、セリアに逢いました。彼女は僕がそれまでに知っていたどんな娘とも違っていた。そして、話をするのが容易ではなかった。その折には。エドワード 君は彼女としばしば会いましたか。アレックスの声 エドワード、二重湯沸かし器はあるかい。エドワード そこにあるのがそれだと思うにだが。どの台所にも二重湯沸かし器が設備されているだろう。アレックスの声 見付けられないのだ、あのサプライズは上手く行きつつある。別のを考える必要がある。ピーター そんなに頻繁ではなかった。そして会えた時でも彼女と話をする機会はなかった。エドワード 君とセリアは別々の目的で依頼されていたのだ。君の役割は発表要求手続きの一人であったし、セリアのは社会と流行を提供することだった。ラヴィニアは同時に二つの世界で自分を確立する野心を常に抱いていた、でも、実際には二つの世界の繋ぎ役を演じたわけで。思うに、それが木曜会が失敗した理由なのだ。ピーター 君はまるですべてが終わってしまったように話をするね。