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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2024年01月25日
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ここで一旦「万葉集」に親しむ を棚上げにして、米国のユージン・オニールの戯曲で以前は

「氷人来たる」と言うタイトルで訳されていた『 The Iceman Cometh 』を、私、古屋克

征流に翻訳してみようと考えました。宜しくお願い致します。

 作者のユージン・オニールは1888年にニューヨーク州に生まれて、1953年にボストン

で死んでいます。彼はプリンストンとハーバードで学び、1926年イェールから名誉賞を授与

されています。また彼はピュウリッツァー賞のドラマ部門で1920、22、28、57年に受

賞しており、1936年にはノーベル文学賞を受賞しています。

 「氷屋がやって来た」はニューヨークの下町ウエストサイドの三流酒場兼木賃宿が舞台となる

四幕物の舞台劇です。制作の時代は1929年頃と思われ、メインテーマはパイプ・ドリーム、

つまりアヘン吸引者の見る絶望的で破滅的な夢になりますが、登場人物の大半がこの三流酒場兼

木賃宿の住人であり、彼らの独白や会話によって彼らの過去と現在が浮き彫りになり、救いのな

い彼等には死だけが最後の救いである事が暗示されるのです。Icemanとは電気冷蔵庫のなかった

時代に氷で冷やしていた冷蔵庫に入れる氷の塊を運んできた氷屋を意味しているのですが、これ

は同時に 死に神 を象徴的に表しているようです。

 この舞台劇では所謂、劇的な出来事は一切出てこないのです。一種の心理劇と言えるのです

が、この暗くて救いのないドラマは作者の卓越した描写力、表現力だけで名作、傑作と呼ぶにふ

さわしい内容を結実させているわけですが、私に翻訳で原作の迫真性を再現できるのかはなはだ

心もとないのですが、渾身の力を振り絞って立ち向かう所存でおります。

 場 面  第一幕 ―― ハリーホープが経営する宿の裏部屋とバーの一区画、1912年

      第二幕 ―― 裏部屋、同じ日の真夜中

      第三幕 ―― バーと裏部屋の一角、翌日の朝

      第四幕 ―― 一幕目と同じ場所、裏部屋とバーの一区画、翌日の午前一時半頃

 ハリー ホープのレイズロウ・ホテルはニュヨークの下町ウエストサイドにある安いウイスキ

ーを飲ませる場末の憩い場所である。ホープ所有の建物は狭い五階建ての建造物で二階のワンフ

ロア―がオウナーが占有している。上層階の貸し部屋ではレインロウ系列がホテルを経営し、閉 

店後にバーの裏部屋でアルコールを提供している。日曜毎に酒と共に食事も出来、裏部屋は一種

のホテルレストランとして経営されている。この食事の提供は一般的に各テーブルの中央に小道

具用のサンドイッチ、古くて干からび塵が積もっているパンとチーズ、これ等はけばけばしいテ

ーブルの飾りと飲んだくれ達から見做されていたのだが、を配して人の目を欺いているのだ。し

かし、ハリーホープの所ではホープが慈善事業協会員で友人達もいるので、この模造食品等は不

適当な物として改装騒動中には無視されていた。ホープの裏部屋でさえ区画されたものではなく

て単純にバーとは区切られたバーの裏部屋として、部屋の中央で薄汚れた黒いカーテンで仕切ら

れている。


           第 一 幕

 場面  ハリーホープ経営のバーとその裏部屋。1912年の夏の早朝。裏部屋の上手の壁は

汚れて黒くなっているカーテンでバーとは仕切られている。正面奥はこのカーテンが引かれてい

バーテンダーが出入り出来るようになっている。裏部屋は丸テーブルと椅子が目一杯に詰め込ま

れているので、その間をすり抜けて通るのさえ難しくなっている。正面の壁の中央にはホールに

抜ける入口のドアーがある。下手の角に作り付けの部屋のトイレに、”ここで用足す”と貼り札がさ

れている。下手の壁の中央にはニッケル(五セント)用写真が置かれている。この壁の二つの窓は汚

れたガラスで見えなくなっているが、中庭を見下ろす位置にある。昔は白かった天井も壁も、白

かったの遠い昔であり、今は汚れがひどく、表面が剥げ、しみがつき、汚れて、その色はよく言

っても汚いの一語に尽きた。床は、あちこちに痰壷が置かれており、おが屑で覆われている。照

明はシングルブラケットが二つが下手に、二つが表面奥に置かれている。テーブルの列が

舞台の全面から奥にかけて配置され、前面には三のテーブルが置かれている。下手前の一列には

四つの椅子があり、中央の列には四つの椅子、上手前面には五つの椅子が配されている。一番奥

と中央の列テーブル一つにつき五脚の椅子が置かれている。テーブルの三番目の列には、三脚か

ら五脚の椅子が置かれている。それらは表面奥の壁際に入口の両脇になるように置かれている。

 仕切りのカーテンの右にバールームの端が奥に見える。その左側にホールへのドアがある。

 舞台の前面には四脚の椅子があるテーブルが置かれている。自然光が上手の通りに面した窓か

ら来ている。早朝の灰色の弱い光が狭い路地から射しているのだった。

 裏部屋では、ラリー・スレイドとヒューゴ・カルマーが前面左の列に座っている。ヒューゴが

右を向いており、ラリーは後ろ側の椅子に前を向いている。二人の間には誰もいない椅子があ

る。四番目の椅子はテーブルの右側にあり、左向きになっている。ヒューゴは小柄な五十代後半

の年齢。彼はその体格に比して余りに大きな頭であり、大きく禿げ上がっている。縮れて長い黒

髪に灰色の筋が混じっている。四角い顔に獅子鼻にだらりと下がった髭、分厚い近眼のメガネ越

しに黒い目が覗いている。短い手と足をしている。着古した黒服を着ており、白いシャツは襟や

袖が擦り切れているが、全体としては潔癖と言うほどに清潔である。まっすぐに下がっているネ

クタイはきちんと結ばれている。彼には外国人のような雰囲気があり、外国の急進的な改革派、

つまり紋切り型の虚無型の人物に酷似して、爆弾を手にしている、新聞の漫画などに表現される

タイプなのだ。彼は現在寝ている。椅子に屈まり、両手をテーブルの上で組み合わせ、頭をその

上に載せている。





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最終更新日  2024年01月30日 19時34分12秒
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