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草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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草加の爺(じじ)

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2025年05月27日
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鹽屋の軒に竹が見えて、幼い鶯が音を鳴くのだ。

 花にまがう櫻海苔、天を浸せば雲海苔に月を包んで、刈ろうとすると手には取れない。桂男の、

ああ、いぶりさは何時会えるのか、青のりもかだ海苔と、身の相良和布(さがらめ)をなのり藻(そ)

と、荒珍しと粗目刈る、二見の浦ははるばると、松の群立ち、色の濵、蒔絵によくもに似たるよ

な。

 あとは白雲とばかりにを、故郷の夢と空覚めて庄野に続く亀山は誰(た)がため長き萬代とかこつ

涙のは堰きもせで、何をか関の地蔵堂、せめて未来を頼まばや。上り、下りて坂の下、谷の川瀬に

からり、ころり、ころころと、鳴るのは河鹿(かじか)の鳴く声か、小石が流れて行く音か、いや、

水の沫が散る。

 玉ではなくて鈴だよと、駒の膝ぶしん、がらが、ちんからからりの、鈴鹿山、賤が草鞋の営み

に、更けて藁打つ土山や、伊達の旅路に行くならば買ってもたもれ、水口の葛(つづら)小笠に露も

りておのがままなる鬢水は、櫛にたまらない乱れ髪。解くではないが、とくとく行けば洛陽(京都)

や、六波羅にこそ着いたのだ。

 さて、父上のいらっしゃる牢屋は何処であろうか、と此処彼処に佇めば、折もこそあれ、梶原源

太が町廻りをして帰り際にこの體(てい)をきっと見て、彼奴の有様はただものでない。何者候かと

咎めたのだ。

 姫君は聞こし召してさん候、みずからは尾張の大宮司の娘であるが、故もないのに父を捕られ候

故に自分の命に代えたいものと、これまで参り候。そう、言わせも果てずに源太景季(かげすえ)、

おお、皆まで言うな、おのれが親の大宮司に景清の行方を言えと言ったのだが、知らぬと言う。お

のれは夫婦のことであるからよも知らぬことはあるまい。

 既に清水坂の阿古屋は子の有る仲でさえ振り捨てて、一度注進申したぞよ。有のままを白状せよ

と小腕を取って怒ったのだ。

 のう、恨めしや、命を捨ててこれまで出る程の心にて、たとえ行方を知っていても申しましょう

か、この上は、火責め、水責め遭うとても夫の行方は存じませぬ。ただ、父上を助けてたべと声も

惜しまず泣きなさる。

 おお、言うまでもない事さ、おのれ落ちなければただではおかない。と、逆手小手に縛り付け、

六条河原に引き出して、種々に拷問をしたのは実に情けがない過酷な仕打ちと見えた。

 梶原親子が奉行で、方一町に垣を結い、突く棒・刺す股・鉄の棒などの兵具をひっしと並べたの

はさながら修羅の獄卒が八虐五逆の罪人を呵責にかける如くである。

 いたわしや小野の姫は、荒い風にも当てない身を、裸になして縄をかけ、十二段の梯(かけはし)

に胴中を縛り付けて非情な罪人共が湯桶(ゆとう)に水を注ぎ掛け、注ぎ掛け、落ちよ落ちよと責め

たのはただ滝つ瀬の如くであり、目も当てられぬ景色である。

 無残やな、小野の姫は息もはや絶え絶えに心も乱れ、目くるめき、既に最期と見えたけれども、

いやいや、武士の妻となりては心弱くては叶わないと、さあらぬ態でもてなして、如何に方々、夫

の景清常に清水の観世音を信仰して、我にも信じ奉れと深く教え給う故に、今とても尊号を絶えず

唱え奉れば此の水は観音の甘露法雨と覚えたり。

 今この水で死する命は惜しくない。夫の行方も知らぬぞや。千日千夜も責め給え。南無や大悲観

世菩薩と苦しき體(てい)を押し隠し、潔くは宣えどもさすが強い拷問に声も濁って身も震い、弱々

と成り給うのはさても悲しき次第である。

 この分では落ちないであろう。やれ、古木責めにせよや、とて細首に縄をつけ松の枝に打ちかけ

てえいや、えいやと引き上げる。下せば少し息を継ぎ、引き上げれば息が絶える。哀れと言うのも

余りが有る。

 たとえ如何なる鬼神もこれにては落ちるであろうと、二三度四五度と責めければ、今はこうよと

見えたのだが又目を見開いて、のう、梶原殿、この木の上に吊り上げられ、世界を一目に見下ろせ

ども夫の行方は見え申さない。方々も慰みにちっと上がって見給わぬか、これへこれへと有りけれ

ば景時腹に据えかねて、さてさて、しぶとい女かな、この上は引き下ろして火責めにせよと炭や薪

を積み重ね、団扇を持って煽ぎ立て、煽ぎ立てして天をかすめる黒煙は焦熱地獄とも形容すべき

だ。既に責めようとした所に、悪七兵衛景清はいずくにてか聞いていたのであろう、諸見物のその

中から躍り入り、こりゃ、景清だ、見参したとはったと睨め廻し仁王立ちにぞ立ったりける。

 姫ははっと肝潰れ、立ち寄らんとしたが、人々が寄って引き据え、しわ、景清を逃すなと、一度

にはらりと(一同の動作が揃う形容)取り廻す。

 景清、けらけらと笑い、ええ、仰々しい、この景清が隠れようと思えば、天にも昇り地にも潜ら

んものを、妻や舅が憂き目を見る悲しさに、身を捨てて出でたればもう気遣いは必要ないぞ。さ

あ、寄って縄をかけ六波羅に連れていけ。妻や舅を助けよと手向かいする気配さえ見えない。

 姫君は涙を流し、口惜しの有様や、みずからや父上は生きても甲斐のない憂き身であるが、御身

は長らえて本望を遂げようとなさらずに何とてこれへ出でなされた。浅ましの御所存です。と、又

さめざめと泣きなさる。

 景清も涙を抑えて、頼もしの心底じゃ。人は素性が恥ずかしい(人の種姓は争えないもので、自

然と言動に現れるもの)と諺に言っているが、子供を中になしている阿古屋めは男の訴人をしたの

だが、御身は命に代えて俺を守らんとする。頼もしい、嬉しいぞ。

 さりながら、父大宮司の御事、心もとなく覚えるので、御身はここから疾く疾く帰り、菩提をと

うてたび給えと、鬼を欺く景清も不覚の涙を流したのだ。それも尤も至極、実に哀れである。

 このこと六波羅に聞こえたので、重忠が大宮司を同道で六条河原に馳せ来たり、扨ても景清、人

の難儀を救い、わが身を名乗り出でられたのは近頃神妙、尤もこうあるべきである。

 この上は、小野の姫と大宮司を共に御赦免なされる條、景清に急ぎ縄をかけ、引っ立て申すべ

し。畏まって候と、人々は縄よ、縄よと、ひしめけば、景清は悦んでそれこそ望む所よ、自分から

進んで縄にかかり、先に進めば、小野の姫、のう、みずからも諸共にと駆け付け取りつき泣きなさ

る。それを大勢が中を押し隔てて、辺りを払って引っ立て行く。

 景清の心底に勇有り、義有り、誠あり。前代未聞の男成りとて皆が武士の手本と仰ぎ見たのだ。

           第  四

 げにや、猛将勇士も運が尽きてしまえば力ない。

 不憫やな、景清は鎌倉よりの評定にて六波羅の南表に初めて牢を建てさせられて閉じ込められ

た。いちい・白樫(しらかし)・楠の木・栂(とが)の木など、長さを一丈に取らせて地には七尺掘り

入れ、上三尺の詰牢(つめろう、低く狭い牢)にしこの木で蜘蛛手格子に切り組んで、一尺二寸の大

釘を裏を返さずに打ったので剣を植えた如くである。

 七尺豊かな景清を二重に体を折り曲げて押し入れて、髪を七把(ななわ)に束ねて七方にこそ吊っ

たのだ。足を牢から引き出して、左手と右手を取り違えて、山だし(山から材木を伐り出す人足)

七十五人して曳いた楠の木で上げほだし(足をあげたままで動かせなくする足枷)を打たせ、しつ錠

と詰め金、たう唐くるる、千曳の石材木を積み重ねて、首には根掘りの大づつ(サボテンの異名)を

三本も被かせた(載せかけた)。

 諸人に見せて恥をかかせろと、番も警護もつけなかったが、なかなか五体働かない。

 されば、文王は羐里(ゆうり)にとらわれ、公冶長(こうやちょう)は刑剹(けいりく)にかかった。

君がため、名のため何ぞかつて憂えん。と、観音経の読誦の外、世間が口を閉じたので、声聞(し

ょうもん)耳に鎖したのだ。働く物は両眼だけである。見る目も悲しく哀れである。

 いたわしや小野の姫、不思議の命を助かり、牢屋近くに宿を取り、酒や果物を整えて、牢屋の格

子に立ち寄り、いたわりなさる姿が哀れである。

 ようようとして景清、心地よげに、酒を飲み、今日は一入骨髄に通って候。誠に御身の志、いつ

の世にかは忘れるべき。さてかりそめながら某は天下の朝敵、定めて最後も遠くはないであろう

よ。今の景清の生きている顔を形見にして、疾く疾く、御身は尾張に帰り、後世を弔って下され

よ。これにつけても阿古屋めが心底が恨めしいぞ。

 二人の子供もはや殺して捨ててしまったであろうよ、思えば、思えば、景清の運の尽きこそ口惜

しけれ。と、恨みをかこって号泣する。

 姫も涙を流して、仰せはさることでは御座りまするが、何にしてもみずからは御最期の先途(せ

んど)を見届け、とにもかくにもなり申しましょう。一日も一時でも御命が有ります限りは往生の

御営みを心にかけ、何事も定まることと思し召して人をな恨み給いそよ。

 何時までも此処に在りたいとは思うのですが、人目が繁く御座いまするので明日また参りましょ

うと泣く泣く帰りなされたのだ。

 これはさておき、阿古屋の彌石と彌若は諸共に山崎村の谷陰に深く隠れていたのだが、景清が牢

舎と聞くより、わが身も有るにあらばこそ(そのままでは居られないで)六波羅に走り着き、この體

(てい)を一目見て、のう、浅ましの御風情や、やれ、あれこそは父よ、我が夫(つま)と牢の格子に

縋り付き泣くよりほかの事は出来ない。

 景清は大の眼に角を立てて、やれ、物知らずめ。人間らしく言葉をかけるのも無益(むやく)であ

るが、かほどの恩愛を振り捨てて夫の訴人をしながら、何の生面をさげて今この所に来たのだ。

 おのれ指ひとつでも自由になるならば、掴みひしいで捨てんものと、歯噛みをしてぞ居られるの

だ。

 げに、御恨みは道理ですが、妾の事もお聞き候え。兄にて候十蔵が訴人致そうと申したのを再三

制止していたのですが、大宮司の娘小野の姫とやらより親しき便りが届きましたので、女心の浅ま

しさ嫉妬の恨みに取り乱れ、後先の踏まえ所を失って、当座の腹立ちを遣る事もできずに、ともか

くもと申しつる、後悔先に立たばこそ、さはさりながら嫉妬は殿御が愛しい故、女の習い誰の身の

上にも候ぞや。申し譯致すほど皆言い落ちにて候えども、今までの誼(よしみ)には道理一つを聞き

分けてただ何事も御免有り、今生にて今一度言葉を掛けてたび給えば、それを力に自害してわが身

の言い訳立て申さんと、地に泣き伏してぞ泣いたのだ。

 無残やな、彌石は父の姿をつくづくと見て、のう、父上程の剛の者が何故やみやみと捕らわれた

のですか、いで、押し破って助け奉らんと柱にてをかけて、えい、やっと、押せども引けども、揺

るがばこそ、不憫なりける所存である。

 弟の彌若はほだしの足に抱き付き、痛いかや父上様、なあ、痛むかと撫で上げ、撫で下げさすり

上げて、兄弟がわっと叫んだので、思い切って覚悟を固めていた景清も不覚の涙を堰き敢えず。

 稍々あってから涙を抑え、やれ、子供よ、父がかように成ったのはな、みなあの母の悪心で、縄

をも母がかけさせたのだ。牢にも母が入れさせたのだ。邪見の女の腹から出たかと思えば汝らまで

が憎いぞや。父とも思うな子とも思わない。早早や帰れと叱るのだが、子供は母に縋り付き、な

う、父を返して父上を返せとねだり、歎く有様は目も当たられぬ次第である。

 阿古屋はあまりに耐えかねてよしこの上はみずからはともかくも、可愛やな兄弟に優しい言葉を

ただ一言、さりとては掛けてたべのう。子は可愛いとは思わないのかと、又咳上げては歎くのだっ

た。

 景清は重ねて、御ことが様なる悪人には返事もしないぞとは思えども、今の悔やみを何故最前に

は思わざりし。所で、天竺に獅子と言う獣が有る。身は畜生でありながらも知恵は人間に越えてい

るので、狩人にも獲られず却って人間を取って喰う。されど腹中にとどくと言う虫を有し、この虫

が毒を吐くので體を破って自滅するのだ。

 されば女の嫉妬の仇(あた)、人を恨むと思えども夫婦は同じ體であるから、これ皆わが身を痛め

る理(ことわり)、和御前(わごぜ)がごとき我慢愚痴なる猿知恵を獅子身中の虫に譬えて仏も戒め給

う。汝の心ひとつで本望を遂げずにあまつさえ、恥辱の上の恥辱を取り、今言い訳して妻子が嘆く

のを不憫であると、日本一の景清が再び心をかえすべきか。

 何ほど言ったとて汝の腹から出た子であるから、景清の敵だ。妻とも子とも思わないと、思い切

ってぞいたのである。

 さては、如何程に申しても御承引有りませぬか。

 おお、諄(くど)い、諄い、見苦しいから早々帰れ。思い切ったぞよ、なう、もはや長らえていず

方へ帰ろうぞ。やれ、子供よ、母が誤ったればこそかくも詫び言致したが、つれない父御の詞を

聞いたか。親や夫に敵と思われてはお主らとても生き甲斐ない。この上は父親持ったと思うな、母

ばかりが子である。みずからも生き長らえて非道の憂き名流さん事未来掛けて情けなや。

 いざ、諸共に死出の山にて言い訳せよ、いかに景清殿、わらわが心底はこれまでなりと彌石を引

き寄せて守り刀をずはっと抜き、南無阿弥陀仏と刺し通せば、彌若が驚いて声を立て、いやいや、

我は母様の子ではない、父上助け給えやと牢の格子に顔を指し入れ、差し入れして逃げ歩く。





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最終更新日  2025年05月27日 20時39分58秒
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