カテゴリ:おくのほそ道
今年元禄二年に、奥羽地方をはるかにめぐり歩く旅を、
ただふと思い立った。 白髪になってしまうような苦労の重なる旅とはいっても、 聞いたことはあっても、いまだに見たことのないところがあるからだ。 生きて帰ってみせようと定めのない頼みをかけて、 その日ようやく草加という宿にたどり着いた。 この痩せて骨の張った肩にかかるものがいとわしい。 ただ、旅すがらに必要なものは買えばよい、と旅支度をしたのを、 寝巻きは夜に必要だし、ゆかた、雨具、墨、筆の類も必要だと、 またことわりきれない餞などをされたものは、 さすがに捨てづらくて、道中の邪魔ものとなるのは、 いたし方がない。 |