新宿文化センター開館記念公演「三番叟」
新宿文化センター開館25周年記念特別公演「三番叟」
平成16年7月30日(金)午後7時開演
JR新宿駅で下車し、新宿文化センターに行くまでの道のりは「お祭りでもあるの?」というくらいの人ごみ。
駅から徒歩13分。ホールの近くにはあの花園神社があるのです。
花園神社と聞いてピンとくる人はかなりの萬斎ツゥーかも( ̄∀ ̄)
先日行われた野村萬斎氏の演じるオイディプス王がアテネで公演される前に稽古の場として使われたところです。
本当ならもっと時間にゆとりを持って向い、デジカメに納めたかったのだけれど時間がギリギリとなってしまい寄ることさえ出来ませんでした。でもその周りは木々が生い茂り、とても大都会新宿の中心とは思えない雰囲気なのです。すぐ隣はネオン街の歌舞伎町だったりするのですけれどね。
いよいよ新宿文化センターに到着。
入り口は、年齢層の幅広い人々が押し寄せています。
チケットを渡し、プログラムを受け取る。
表紙は萬斎さんの三番叟の見どころ、烏飛びの写真。
さ、いよいよだ(≧∀≦)
解説は石田幸雄さん。
テレビのイメージよりも大分ホッソリされているので、驚きました。
まず「二人袴」についての、大方のストーリーをとても分かりやすい説明で語られた。
Let’s狂言(勉強部屋)「二人袴/三番叟」へジャンプ
「二人袴」
もう聟と親の掛け合いのタイミングは絶妙。
あちらこちらで爆笑が渦巻いていました。
特に舅に「祝いの舞をしてくれ」と言われて、「後ろ側の袴がそっくりない恥ずかしい~状態」でそそくさと取り繕い舞って見せる高野さんの聟は面白い。
また舅の提案により「3人(舅、聟、親)で舞おう」と言われて
万之介さん演じる親が独特の狂言の言い回しで「迷惑なことじゃ~( ̄▽ ̄:) 」と言うと爆笑の渦。
どうにか後ろの袴がないことを悟られないように、聟と親は息を合わせて、舅がよそを向いた瞬間に「そそくさ~」と回って舞います。
これがまた滑稽で、楽しいやら、可愛らしいやら(笑)
結局はこれがバレて、舅と太郎冠者に大笑いされてしまい、恥ずかしくてその場を逃げ出してしまうのですが、暫くの間は会場内の笑いは続いていました。
当然私も可笑しくて笑いっぱなし、聟の「おとぼけさ」「世間知らずで天真爛漫さ」、それを親心でつい面倒を見てしまう父親の演技は、なんとなく現代に忘れられている温かいものを届けてくれたような気がします。
「三番叟」
舞台に大きなスクリーン。
三番叟に関連する言葉が次々と出現する。
「とうとうたらりたらりら・・・」の翁の謡から始まり、「烏飛び」「千歳」「三番叟」「揉の段」「鈴の段」・・・などなどなど・・・。
幕が開き、囃子方、千歳が登場。そしてついに、萬斎さんが・・・
紫色の装束には鶴の模様。
「揉の段」は力強く四方を踏みしずめ、力強い。烏飛びは軽やかなのに、しっかりと大地を踏みしめる感じで全く体のブレなどがない。
さすがの身体能力です。狂言師の方は改めてすごいなと感じました。
揉の段の最後に舞台中央で膝を付くまでの直前、気合の入った萬斎さんの目力に卒倒しそうになります(笑)間近で観ていたらどうなってしまったのだろう、私(〃 ̄▽ ̄〃)
そして「問答」が始まります。
分かりにくい言葉も後ろのスクリーンに映し出され、電光掲示板狂言のような演出でした。
「やらめでたや 物に心得たるアドの アドの太夫殿に見参申さう・・・(以下略)」
プログラム内の三番叟の説明企画・制作をしている森崎事務所さんの狂言に対する愛情を感じました。
※「問答の大意」・・・
千 歳:「黒い尉殿よ、ご祈祷の舞をうまく舞ってくださいよ」
黒式尉:「もちろん上手に舞って見せますから、千歳殿は元の座敷にどうぞお戻りください。いやだとおっしゃられても戻ってくださらなければ舞いませんよ」
千 歳:「わかりました。戻りましょう。では舞にお使いになる鈴をどうぞ」
黒式尉:「おお、これはこれは。大層なことですね」
公演プログラム解説より
「鈴の段」・・・初めて目にしました。黒式尉(こくしきじょう)の面を付け、神に成り代わった瞬間です。
鈴を打ち鳴らし、舞い、種まきや面返りなどの所作で強い足拍子を踏み、舞台が清められていく気がします。
お囃子のセッションもこれまた素晴らしい。
舞手に合わせるわけでもなく、コンダクターのような人がいないというのに、どうしてあそこまで4人の息が合うのだろうか。
石田さんの解説によれば、舞手に合わせるとか、囃子方の誰かに合わせるというわけではなく、それぞれが自分のテンポで曲の進行を司る。いわゆるジャズセッションのようなものだと仰っていました。
見事!の一語に尽きます。笛の音、鼓の音がこれほど自分の心を揺さぶるとは!
だんだんとアップテンポになるお囃子の中で鈴の段を舞う萬斎さんに釘付け。
鈴を鳴らす手。
どっかで心を奪われたときと同じだ。
デジャヴ?
いや違う~。そうだ「陰陽師2」でウズメに扮した萬斎晴明が鈴を打ち鳴らし舞っていたシーンだ!
つい・・・重なってしまった。(神聖な三番叟の曲の間にこんなこと考えるなんて不謹慎なのかもしれませんが・・・)
これで「揉の段」→「問答」→「鈴の段」という3部構成の三番叟が無事終わりました。
単純で月並みな感想ですが、「また観たい!」そう思いました。
この躍動感溢れる三番叟をもっと間近で経験したい。
色々な人からこの三番叟を観た時の衝撃やら感想を聴くと、さらに気持ちも高まるような気がします。
帰りに「唐相撲」「薮の中」のDVDを衝動買い。
かなり洗脳されてしまったようだ。狂言がこんなに面白いなんて、どうして今まで気づかなかったんだろう~。
この「唐相撲」や「藪の中」って、茂山家と野村家の夢の共演。
ああ、ワクワクする。
大蔵流の三番三や狂言にも、以前より増して興味を持った一日でした。
色々なことを吸収したいな、とこの日は「白い服(ジャケット)」を羽織り、ホールに向いました。
それなりの収穫はあったようが気がします。
是非「能楽堂」でも狂言を体験したい、と思いながら帰路についたのでした。
☆追記☆
今回の三番叟は橋掛まで「走ってくる」といういつもとまた違った嗜好のものだったそうです。
初めて観たので、私にはその違いがわからなかったのだけれど。
色々な違いが分かるようになるまで、まだまだですね~ヾ(*^。^*)ノ
お帰りになる前によろしければ掲示板へお立ち寄りください(⌒◇⌒)ノ
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