2010/01/25(月)14:39
伊藤比呂美の「読み解き般若心経」
この人すごい。
久しぶりに没頭して読んだ一冊。
「心に切り刻むように思い出し、悔いてあやまりたい。
寝たきりの母にになって、はじめてすくわれた。
夫をなくした友人の悲しみを思って、耳を澄ます。
気がついたらまわりは、
老いて病んで苦しんで、死んでいく人でいっぱい」
(本書帯のコピーより)
あの伊藤比呂美の新刊が、お経の本だよ。
うれしくて飛び上がりそうになる。
彼女によるお経の現代語訳は、全編それは美しい詩であった。
冒頭の「懺悔文」から、もう完全にやられた。
わたしが
これまでに
なしてきた
いろんなあやまちは
はるかなむかしから
みゃく
みゃく
とつながる
むさぼる心・いかりの心・おろかな心
をもとにして
からだ・ことば・いしき
をとおして
あらわれて
きたものだ。
わたしはいま
きっぱりとここにちかう。
そのすべてを
ひとつ
ひとつ
心をきりきざむようにして
悔いていきます。
(「読み解き「般若心経」」朝日新聞出版社)
すごいでしょ。
ストレートに入ってくる。
書き写して、持ち歩きたい。
仏教徒ではないくせに、お経大好きの私。
i-podにはもちろんお経が数種入っている。
これまで数々のお経解説本を読んできたけど、この本が私のベストワンとなった。
病気や介護や看取りや別離や老いなどの、自身の苦しみに満ち満ちた生活から絞り出されたような詩(お経)だからこそ、あっけなく心打たれる。
そういう意味では、高史明による「歎異抄」の本もそうだった。
血の通ったお経が好きだ。
本書にはいろんなお経がつまっている。
圧巻は「観音経」の章。
胸が痛くなったあとくすっと笑った。
「地蔵和讃」では泣いてしまった。
最後の「四弘誓願(しぐせいがん)」は、こんな感じ。
ひとびとはかぎりなくいます。
きっとすくいます。
ぼんのうはつきません。
きっとなくします。
おしえはまだまだあります。
きっとまなびます。
さとりはかならずあそこにあります。
きっとなしとげます。
(「読み解き「般若心経」」朝日新聞出版社)
力強くてシンプルで、そしてしなやか。
ちなみにオリジナルはこちら↓
衆生無辺誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)
煩悩無盡誓願断(ぼんおうむじんせいがんだん)
法門無量誓願学(ほうもんむりょうせいがんがく)
仏道無上誓願成(ぶつどうむじょうせいがんじょう)
久しぶりに私のお経熱に灯がついた。
特に、本書で観音経の魅力にやられてしまった私は、早速CDを買い求めるつもりである。
このノリ、まるでお気に入りのミュージシャンを発見した気分。
本書にはこんな風に書かれている。
「観音経というのは「般若心経」みたいな独立したお経ではなく、いわば「法華経」というアルバムからシングルカットされたお経なのであった」
シ、シングルカット・・・(笑)。
ともあれ、年の初めに素晴らしい本に出会えて満足である。
ねんぴーかんのんりき