青藍（せいらん）な日々

第６２話　雑誌の記事

記事を読むとどれもすごい事ばかり書かれています。超人的な人の体験や大時化の話、過酷なレースや航海記録。どれだけ大変だったか、すごい、恐ろしい事ばかり。とても私にはできそうもない。ならば、そんな事しなければ良いじゃないですか。同じ事をしようと思えば勉強になりますが、そんな目には合いたくないと思えば、そんなことしなくても良いそれでも充分ヨットは楽しめるものです。

超人でなくても良い、普通で良い。超人的な方々の行為を否定はしません。すごいと尊敬します。でも、私はしない。したくない。尊敬されたくも無いし、記録を作りたいとも思わないし、すごい冒険したいとも思わない。ただ、楽しみたいだけです。だから、危ない目に合わないように注意をするだけです。無理もしない。ごく普通の人が楽しめるセーリングを推奨したいと思います。

そう思うと海は楽しい場所です。海面をスイスイ走る。まるでミズスマシのようにスイスイ走れたら気持ち良いですね。これは陸上生活とは別の世界です。これは経験してみないと解りません。記事にするのはすごい事でないと記事にはならない。でも、普通の人が普通に楽しめるセーリング、その中でも全てが整った時の最高のフィーリングを味わえる。これが記事にできたら良いのになと思いますね。

こういう感覚を言葉に置きかえるのは難しい。どこどこ行った、その場所はああでこうでと記事にできます。でも、普通にセーリングして、時として最高のフィーリングを得られる時がある。これは感覚ですので、言葉にはできない。味わうしかない。それで、普通に何度も何度もセーリングをしてみる事をお奨めしています。どこかに行かなくても、すごい事しなくても、過酷なレースに出なくても、誰でも味わえる最高のフィーリングがあります。全ての人に味わってもらいたい感覚なのです。セーリングそのものが楽しくなるのです。これを体験してしまえば、もうこっちのもの、あとは付録みたいなもの、付録も楽しみには違いないですが。

感覚とはいいかげんなもので、同じ場所を同じように走ったからといって、同じ感覚を持つわけでは無いですね。でも、少し緊張感があって、神経が集中していて、それに自然が重なりあってきた時に最高の気分になるようです。これは人それぞれで、自分にぴったり合った良い加減というものがあると思います。ですから、誰でも、自分のレベルで同じような感覚を得られる。そして、自分のレベルが上がれば、自分の良い加減も変化してきます。おそらく良い加減の幅 が広く、深くなっていくのではないかと思いますね。

こういう感覚を得た瞬間は無心です。そして、あとでじわじわ感覚が上がってきます。これがヨットの最高の醍醐味ではないかと思っています。これを味わいたいが為に、暑いときも、寒い時もセーリングする。いつも最高とはいかないまでも、だんだんセーリング自体が楽しくなってきます。これは私にとって冒険であり、すごいことなのです。記事にしたいくらいなのです。