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せいやんせいやん

せいやんせいやん

その2(10話)

11
【不老不死1】


「ついにやった!」

博士はおもわず叫んだ。

「老化のメカニズムを解明したぞ」

そして、さっそく自分の体に適切な処置をした。

「これでやっと死ねる」

偶然できた不老不死の薬を服用してから、

八百年ほど経っていた。


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12
【不老不死2】


幸子は成人式のお祝いに近所の悪魔から不老不死の薬をもらった。

ためらわず飲んだ。

しかし普通に歳をとっていった。

       ◇

介護用ベッドに横たわる幸子。

「すまないねえ」

体を拭いてくれている女性は幸子の玄孫(やしゃご)(68歳)だ。

実は、幸子が寝たきりになった80歳のある日、

60年前に飲んだ不老不死の薬が効きだしたのだ。

それから120年間、ずっと寝たきりだ。


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13
【お月さん】


満月の夜道をひとりで歩いていると、むこうに紐がぶら下がっていた。

見上げると、月から垂れているようだ。

歩み寄り、ひっぱってみる。

パチッ!

月がすこし暗くなった。

もう一度、

パチッ!

まずい、真っ暗になってしまった。

あせっておもいっきり、

パチッ! ズルッ、スポッ!

赤い筒が落ちてきた。

「なにすんのよぉ! もう、まったくぅ」

お月さんが怒鳴っている。

「きょうは乙女の“月の日”なのよぉ。

 タンポン引っこ抜かないでよぉ!」


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14
【金縛り】


ああ、まただわ。からだが動かない。

息が苦しい。これは夢なの?

眠っているのか起きているのか、分らないわ。

きっと、“眠ろうとしている自分”の夢をみているんだわ。

このまま目覚めないと、死んでしまいそうな気がする。

ああ、ダメ、ダメだわ。目が開かない。

からだ全体が固まったまま、指先すら動かせないわ。

助けて。お願いよ。助けて、助けて。

「助けてええ!」

       ◇

ユミコのやつ、また、縛りプレイの最中に熟睡しやがって。

おまけに寝言まで。


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15
【伝染病】


母「あら、ムンちゃん、元気がないわねえ。どうかしたの?」

子「なんだか、風邪ひいたみたい」

母「お、おまえ、その顔。ひょっとして……」

母は驚きで青くなった。



WHO(世界保健機関)によると、天然痘が絶滅したのは1980年。

まだ40億年ほど先のこと。



出演:母……地球。

    子……月。
 

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16
【実験】


ある日、日本国民1億2千万人が、壮大な実験をすることになった。

内容はいたって単純。

国民全員でジャンプしたら、はたして地震は起きるか?

それを試すのだ。

20××年8月15日(終戦記念日)、11時59分。

国民は12時00分の時報を合図にジャンプすべく、身構えた。

プッ、プッ、プッ、プゥ~。

地球の裏側、アルゼンチン東部の南大西洋上に、

とつぜん、日本列島を裏返したような島々が出現した。

もちろん、もとの場所は海になった。


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17
【一文話】



仕事でうつ病になり、消えて無くなりたいとおもったが、

会社のほうが先に消滅した。



「暑い部屋だなあ、エアコンないの?」と友人に訊いたら、

扇風機がうなずいた。



飛んで後ろから扇風機に吸い込まれる夏の虫。



体くさいと言ってくれるだけありがたい肉親。



大晦日に「来年こそ家を建てるぞ」と言ったら、妻が笑った。



ロケットで宇宙の果てを目指していたら、

?(はて なマーク)に衝突した。



中学・高校・大学入試、そして公務員試験をカンニングで

突破してきた私は、現在、談合の総元締め。



クルマが故障したのでスポーツジムまで歩いて行ったら、

いい運動になった。



エッチサイトを見ながらアクビをしたら、ノドチンコがぼっ起した。



二世帯住宅建築中に離婚した。



「地球を賭けてジャンケンしよう」と言ったバルタン星人に負ける気がしない。



「なつかしい赤チン」と言いながら、祖母が傷口につけていたのは

イソジンだった。



草むらでお仕置きの声がしたので覗いてみたら、ペンペン草の親子がいた。




信号付き交差点を1回で右折する原チャリのおまわりさんを見た。



大あくびをしたら、口から体が裏返った。



『「戦争を知らない子供たち」という歌を知らない大人たち』

という歌を作ろうかなあ。



患者の暴言にすぐブチ切れる精神科医。



「もしもし、いまどこから電話してるの?」と2歳の甥っ子に訊いたら、

「ここぉ」と答えた。



しゃっくりが止まったらぎっくり腰になってびっくりしてポックリ逝った

コックリさんのあそこはモッコリ。



浮気中にBlackBlackガムを噛んだら目が覚めた。


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18
【見えたもの】


天井・照明器・壁・ドア・毛布・パジャマ・ベッド・床・スリッパ・足。

出窓・目覚まし時計・電話・住所録・カーテン・手・窓・太陽・空・雲。

壁・油絵・ドア・ノブ・手・廊下・壁・柱・洗面台・タオル・鏡・顔。

歯ブラシ・手・歯磨き粉・手・顔・蛇口・水。

玄関・革靴・サンダル・ドア・マスク・サングラス・革ジャン・ピストル・火花・

柱・天井・床。

闇・闇・闇。

点・光・花・花・花・蝶・花・花・花・蝶・花・花。

天井・窓・カーテン・空・雲・壁・こよみ・腕・チューブ・点滴瓶・泡・チューブ・

腕・シーツ。

壁・ドア・白衣・マスク・ピストル・火花。

闇・闇・闇。


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19
【箱】


甥っ子がテーブルに箱を置いた。

「おばちゃん、これ、あけてみな」

高級メロン入りの桐箱ほどの大きさ。白地に水玉模様。

見るからにビックリ箱だ。

甥っ子の悪戯っぽい目。

こんなとき、みごとに引っかかっておおげさに驚いてあげるのが、

おとなのたしなみだ。

合わせ目の下のフックを押す。

あら、開かない。

手にとって開けようとする。ダメだ。

歯を食いしばってやっても、開かない。

なによぉ、これぇ。

あきらめて、テーブルにバン!と置いた。

すると、ふたがパクパク開いてしゃべった。

「びっくりしたあ」


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20
【よくある話】


千栄子には孫がいる。

目の中に入れても痛くない。息子の百倍かわいい。

「お義母(かあ)さま。お願いがありますの。

 健太を学習塾に通わせようとおもいますの。

 それと、いじめられっ子にならないように、

 空手道場に通わせようとおもいますの。それで……」

「おカネかい。出してやるよ。かわいい孫のためだもの。

 私の生きがい、孫、孫、孫……」



5年後──。

「ダァア!」

健太が放った一撃必殺の後ろ回し蹴りによって、

千栄子は逝った。








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