2006/02/04(土)18:07
『流れる星は生きている』藤原てい(中央公論社)
『流れる星は生きている』は昭和24年5月に発行され、戦後のベストセラーとなりました。
著者の藤原ていは、小説家・新田次郎(1912~80年)の妻であり、数学者・藤原正彦氏(1943年、満州生まれ)の母です。
この本は、終戦時に満州に居住していた著者の引揚げ体験記です。
ほとんどの男性は残留せざるを得ない状況であったので、引揚げは女性や子どもが多かったようです。
著者の場合も、3人の子どもを連れての引揚げでした。
感想を一言で言うと、「想像を絶する」としか言いようがありません。
引揚げ体験を有する方はこれから減る一方ですので、体験を聞く機会はなくなってしまうはずです。
それ以前に、引揚げ体験というものは語りたくない、いや語れないものであると思います。
そういう意味でも、この『流れる星は生きている』は一読の価値があると思います。
以下に、【この本からの引用】と【征野の感想】という形で、少々書いてみます。
【この本からの引用】
そっと寝床を抜けだして、左手にバケツを持ち、右手に重い鶴はしを持って外に出た。
星の光がぞっとするほど冷たくまたたいている。
【征野の感想】
ここは、著者が氷を発掘する場面です。
氷を割って、それを溶かして、その水でおむつの洗濯をするためです。
早朝の作業になるのですが、その理由は、夜間から早朝にかけてしかバケツがあいていないため。
もう一つの理由は、早朝でないとツルハシを打ち込んだときに、大きな塊が割れてこないため。
この辺のことは、今の日本で都市生活を送っていると、想像が難しい。
ちなみに、私はツルハシを知りませんでした。
会社の上司に教えてもらいましたが、工事現場で見かける柄のついた掘る道具でした(苦笑)。
【この本からの引用】
二人の幼児をつれて8ヶ月の身重でしかも主人がいない崎山さん(中略)のお金がなくなってしまったのである。
もちろん全部ではないはずである。
少なくとも3ヵ所以上に分散しておくという規則を守っていたなら・・・。
【征野の感想】
17家族49人が協同生活をすることになった家でのこと。
各自でお金は3ヶ所以上に分散して保管するきまりになったとのこと。
要するに、団体の間での盗難が数回あったためだが、こういう危機的状況においてお金は分散するのが知恵というもの。
私のブログでは投資のことを扱っているので、ちょっと書いてみました。