異論・極論・直言――マスコミが言わない解説、提言

2010/08/06(金)09:55

大卒者就職率、国民年金未納率ーー数字に見る官僚の思惑

  今日の新聞で、今年の春大学を卒業した者の就職率が60%で、 前年比、過去最大の下げ幅になったと報道している。一方で、国民年金の納付者が60%を割って、59%になったと報じている。記事はいずれも、大変なことで早急の取り組みが必要と書いている。そして、この記事を取り上げた今朝の朝のテレビ番組では、「何でも評論家」が記事そのままに、「政府、企業は早急な取り組みを」と言っていた。  こうした数字を役人が取り上げ、マスコミに説明し、記事を書かす時には、役人が真相は隠して自分たちの都合のよい方向へ、世論を誘導しようということが多い。しかし、新聞もテレビも役所の広報そのままに、役人の思惑通り記事を書き、テレビもそう解説している。 (少人数学級は教師の雇用対策) 真実と、役人の説明、つまりマスコミの報道との間に大いに相違点がある例の代表が「少人数学級問題」がある。文科省、マスコミの報道は、「大人数だと生徒ひとりひとりに行き届いた指導ができないから、少人数にしないといけない。外国でこんなに大人数で教えている国はない」というものだった。  しかし、真相は「子供の減少で、教師が大量に不要になる」ということである。筆者はこの問題が大きく取り上げられ、40人学級が導入された時に、大蔵省(現財務省)を記者として担当していた。当時の文部省担当の主計官はその後、事務次官まで出世した人だが、彼は、その真相を教えてくれた。  そして、今、また、文科省は35人学級にしようとしている。子供の減少が止まらなく、教師に職を確保するためには、1クラスの生徒の数を更に減らさないといけないからである。  そも、大人数ではまともな教育ができないなら、筆者の時代はどうなる。筆者の時代は1クラス50人だった。小、中、高ともそうである。しかし、今の時代よりはもっとまともな教育を受けていたし、大人数だから、だめだったということは何もなかった。 (大学生の質の実態を知れ) 大卒者が就職できない話は前にも書いたが、最大の原因は大学生が多過ぎるということである。国民全体の所得や生活レベルが上がったから、大学進学希望者が増えるのは当然である。  しかし、今の大学は5割の学生が推薦入学で勉強もせず、苦もなく入学する。そして、大学に入ってからもほとんど勉強らしいことはしていない。成績書を見ると、教授がお情けでギリギリ合格点をつけている学生が大半である。  就職面接で学生の話を聞くと、食事や風呂トイレ、通学時間などを除く、自分が使える時間の内、何にどれくらいの時間を割いているかの割合を聞くと、ほとんどの学生が「アルバイトが7~8割、遊びが2割、勉強は1割」である。  当然、テストをさせると、本当にできない。中学入試の問題が国語、数学、英語で8,9割できない。面接をしていても、採用してもよいと思える学生は、テストに受かった学生の内で、1割もいない。  筆者が採用を担当している会社で面接を受ける学生は、関西なら、国公立大、関関同立以上、東京なら、国公立大、立教、青山、上智、早慶以上の学生である。それでこれである。 (大学が変われば、多くの問題が解決する) 就職難、フリーターの増加、引きこもりの増加、これらの問題の多くは小学校から大学までの教育にあることは明らかである。全体を改革するのは大変だが、少なくても簡単に改革できることがある。詳細は別の機会に述べるが、大学の姿勢を変えることである。  まず、入試、そして、大学での折々の試験を厳密に採点することである。入試では推薦入学、名前を変えただけの推薦入学であるAO入試を廃止し、試験をきちんと受けて、合格した学生だけを受け入れるのである。入試には、アメリカの大学や、かつての日本の学校のように面接を課すことが大切である。  そして、大学内の試験は厳しく採点し、不合格者は進級させないことだ。最後に、国レベルで大学卒業検定試験を実施することである。学内でいくら進級できても、卒業検定に合格しないと、大卒者として認めないとすることである。  天下り先を少しでも広げたい役人の発想からして、なぜ、ここに文科省が気がつき、実現に努力しないか理解できない。文科省の天下り先を少し増やしてあげてもよいから、卒業検定は必要だ。  こうすると、大学生で、勉強が1割というバカげた話はなくなるし、大学生の数は今の4分の1から、多くて3分の1になるだろう。そうすれば、就職難などなくなる。  大学生が少なくなった分、専門学校を増やし、腕に職や技術を身につける生徒を増やすのである。こうすれば、「大学を出たのだから、一流企業で事務職」という発想の下、大企業にこだわり、就職先がないという学生はほとんど消滅する。  教育論的に言うと、大学教育に耐えられる能力を持つ人は同じ世代で8%という統計がある。旧西ドイツは大学に16%の人を進学させ、半分を卒業させないということをやって、大卒者の質の維持を図った。 (本当の年金未納者は全体では数%) 国民年金の未納者の話も、未納者が40%を越えたというと衝撃的だが、日本全体の労働者の内、未納者がどれくらいいるかというと、圧倒的に厚生年金や共済年金加入であり、これらの人は給料からの天引きであるから、未納は特別な事情の人を除いては存在しない。  従って、未納者は日本の全体の労働者の内では、5、6%という状態である。国民保険の未納者が多い、大変だということが報道されると、国民全体に年金に対する不安感を煽り、年金に対する不信感が増大する。  にもかかわらず、厚生労働省がこうした数字を大々的に出し、マスコミに大きく書いてもらう理由は何か。役人がそうする時は、必ず裏の理由がある。それは大変だという世論を作り、それの対策の予算をつけてもらうという、いわゆる焼け太りを狙うことがまず、第一である。もう1つは、だから、年金改革をしないといけないという風潮を作ることである。  最後に、筆者が考えられるのは、未納者への催促は本当に大変である。これを現場の職員が行っている。マスコミが言うように、不況で仕事がない、収入がない人が多いから未納が増えているは嘘だ。経済的に支払うことができない人には、支払い免除、猶予制度があり、それを利用している人は500万人くらいいて、これはここ数年でも、横ばいで増えていない。  未納者の多くは、支払う能力があるのに、払わないという悪質な未納者である。この人たちとのやりとりは大変で、こうした数字を出したいと思う理由に、現場でモラルを欠く人間と接している職員の悲鳴が、この数字に表れている気がする。

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