異論・極論・直言――マスコミが言わない解説、提言

2010/08/11(水)10:00

高齢者の所在確認は簡単

(役人は言い訳の名人)  連日のように、高齢者の所在がわからないという話が報道されている。その時に、必ず出て来る話が、市役所や区役所の担当者から「本人確認をしようとしても、家族が拒否したら、それでも会わせてください」とは言えないという話である。そして、マスコミ側も、「プライバシーの問題があるので、行政も難しい」というコメントを評論家や司会者がしている。  役人や、役人的な体質を持つ企業(NHK,JAL,NTT,JRなど)を長年取材してきた者として言えることは、「役人は自分たちがするのが面倒なこと、したくないことについては、できない理由を並べ、自己を正当化することの名人である」ということである。  だから、マスコミはどうしてできないのか、こうしたらできるのではないかという鋭い突っ込みをしないといけないのだが、今のマスコミは、役人に飼いならされ、その論理にどっぷりつかっているので、そこを突こうとはしない。  法律では、役所は立ち入り検査をする権限もあるし、家族が拒否しても、本人にあって、所在を確認する権利があるのである。行政は怠慢で、法律違反をしてきて、その言い訳をしているだけである。 (決して親切ではない福祉現場) 今、マスコミの批判に対して、役所は、福祉問題の難しさを説いているが、筆者自身高齢者と言われる年齢になって、行政から様々な連絡やサービスの案内が来るが、実態は行政の説明とまったく違う。  1つの例をあげると、筆者は今年65歳になり、年金がフルでもらえる年齢になった。年金機構から書類が届いたが、その内容は、年金をフルで受け取るか、基礎年金の部分だけ受け取るか、全額受け取らないかの3つから回答してほしいというものである。  筆者は今でも仕事をしていて収入があるので、60歳を越えてからも、年金は受け取ってこなかった。最近、年金機構から送ってこられた、本当にわかりにくい書類を読むと、全額でも部分でも受け取りたい人は、その旨を回答した書類を返送しないといけない。書類を返送しなかった人は、「受け取る意思がない人」と判断すると書いてある。つまり、手続きをしないと、年金は受け取れないのだ。  また、65歳以上になると、仕事をしていても、介護保険の保険料は個人で払わないといけなくなる。最近届いた年金の振込用紙の金額を見て驚いた。導入当時、月額3千円と言われていたが、請求金額は月額1万円である。短期間で3倍である。 (福祉は半分は権利、半分は恩恵) 前にも書いたが、高齢者に対する福祉は年金でも医療でも、その他のサービスでも、半分は長年、社会に貢献してきたことに対する権利である。  しかしその反面、今の日本の高齢者が受け取っている年金や医療などのサービスは、自分が貢献してきたもの、支払ってきたものの3倍、4倍受け取っていて、当然の権利ではなく、若い世代に感謝をしながら、受け取らないといけないという逆の面を持つことも、忘れてはいけない。  現在、70歳を越えている人で厚生年金を受け取っている人なら、専業主婦を長くしてきた妻を含めてもらう厚生年金は月額20数万円である。しかし、この人が20歳代、30歳代に年金として納めてきた金額は、月に千円、二千円という単位だったのである。  本人だけでなく、会社も積立て、長年の運用利益、プラス、若者から収めた金を受け取り、多くの人が、自分の収めた金の3倍、4倍の金をもらって、恵まれた生活をしているのだ。 (高齢者にとって高福祉社会の日本) ほとんど論じられていないが、日本の高齢者は貧しく、恵まれないように報道されているが、これはまったく違う。日本の高齢者福祉は旧社会党や公明党の努力で、高福祉国家と言われる北欧と同水準、またはそれ以上である。  日本の福祉が貧弱なイメージがあり、マイナスのイメージがあるのは、幼児や若い世代に対する福祉政策がそうした先進国に比べてプアーであるからであって、高齢者福祉は世界水準からはトップレベルだということをしっかり認識しないといけない。  世界で金持ちと言われる人は1千万人いる。国別で1位は米国で287万人(29%)だが、日本は2位で165万人いて、世界の16%を占め、3位のドイツは日本の半分以下、4位の中国は更にドイツの半分以下である。この金持ち日本人のほとんどが65歳以上の高齢者なのだ。 (年に1回、本人が出頭して更新手続きをする) 所在がわからない高齢者の調査が難問だという行政やマスコミに言いたい。対策、回答は簡単だ。  どうするか、1年に1回、60歳以上で年金や様々なサービスを受け取っている人には、役所に出頭してもらい、更新の手続きをしてもらうのだ。大半のお年寄りは元気であり、1年に1回なら、それほど大変なことではない。  思い出してほしい。運転免許の更新は自分が出頭しないと、権利が抹消される。失業保険も自分が出頭して、手続きをとらないといけない。本人が出向いて、本人確認をして、更新手続きをすることは役所の仕事としては、ごく普通に行われていることである。  高齢者と言うと、寝たきりや病人のイメージが強いが、大半の人は元気で、1年に役所に出頭して、更新手続きをすることなど、何ともない。運転免許と同じに受付の期間を1か月くらいとれば、仕事や都合で行けないということはない。  病気で手続きに行くことができないような人には、医師の証明書を出してもらい、自己出頭しなくてもよいようにする。この人たちだけについて、行政担当者が訪問をすればよい。勿論、それで会えなくて、更新手続きができない人は当然、権利を失うことにする。   現在の所在不明者についても、役所の出頭するように広報し、1年以内に出頭しない人は死亡したり、行方不明として、様々なサービスの対象外とする処置をとるのである。  プライバシー問題は関係ない。恩恵で年金や医療、その他のサービスを受けるのだから、本人確認は当然である。

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