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カテゴリ:親不知
せんだって、激烈な痛みがこめかみを突き抜けた。
数年来ほったらかしてきた親知らずが痛みだしたのだ。以前、歯科医に抜歯を奨められた時は、10年くらい前だろうか、医療過誤の情報がメディアにあふれてた時期だったこともあり、持ち前の臆病と相まって、結局は抜かずじまいであった。 私の左下の親知らずは斜めに生えており、それが大臼歯を押す形になって、歯磨きが徹底されにくく、虫歯になりやすいのである。 ディケイドの眠りから覚めた親知らずのあまりの痛みに夜中に目が覚めるほどになり、我慢できなくなくなった私は、ある日の午前に歯医者に駆け込んだ。 いちおう前もってインターネットで検索し、歯科医のランキングのホームページをチェックしておいた。 そのホームページで評判が良かった地元の歯科医に行ったのだが、受付に人間はおらず、奥の方から歯医者特有の甲高い切削音が聞こえるばかりだ。なにしろ奥歯の痛みは続いている。ひとけの無い待ち合い室にひとり、なんだか不安になって『ウルトラマンA』の歯医者の回を思い出そうとしてたら、奥から歯科医が出てきた。中高年の女医だ。医師が自分で受付業務もしているようだ。 私はとにかく今、この痛みをどうにか誤魔化して欲しいのである。 口腔外科に行かないと根本的に解決しないことは、もう覚悟しているのだ。 応急処置でいいからなんとかならないかと私の願いを伝えると、女医はメガネの奥から苛立った視線を送ってきた。 予約してくれないと困る。今日はできない。 不機嫌そのものな声である。 歯の痛みは、私に予約したりしない。いつもいきなり痛むものだ。 インターネットの歯科医ランキングで評判が良かった歯科でさえこうである。 近所には、ここよりも評判のよろしくない歯科しか残ってない。 途方に暮れ、インターネットの情報に翻弄され、痛みのあまり絶望し、歩くと響く頬を押さえながらさまよっていると、インターネットでは名前を見なかった歯科医があった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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