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カテゴリ:親不知
せんだって、十年間逃げ続けてきた親知らずと決着をつけるべく口腔外科に行く紹介状をもらうために、歯科医に行った。
お待たせしました、と声が聞こえ、歯科医が拷問器具の横にやってきた。 彼は、人畜無害を絵に描いたような風貌をしていた。 四角い顔の色は白く、メガネの厚いレンズの奥で眼が小さく見える。 親知らずが痛いことを伝えると、まずレントゲンを撮るように言われた。 これも最新の機械で、通常の10分の1ほどの被曝量で済むとかいうデジトゲンだ。 発明した人の名前を取ってレントゲンと呼ばれるのだから、これはきっとデジトゲンさんが発明したのだろう。 頭のぐるりを機械が回転すれば撮影は終了だ。 デジトゲン室から戻ると、拷問器具に供えつけられたナナオのディスプレイでは、ネコの身体が金床のカタチに膨らんでいるシーンが流れていたが、一瞬の暗転の後、今撮った歯のXray写真が目の前に映し出された。拡張子はJPGだ。 このハイテクにいたく興奮した私は、歯科医にこのデータをくれないかと頼んでみた。USBフラッシュメモリは常に持っているのだ。 しかしこの歯科医は人畜無害な笑顔の中に曖昧な困惑の色を浮かべ、他の患者さんの写真もありますから、という意味のわからない言い訳を繰り返すだけである。なんだかそれ以上食い下がるわけにもいかなくなり、私は自分の歯並びをブログで世界中に見せびらかす夢を諦めた。 歯科医の説明によると、左下の親知らずの根っこが斜めに下顎の骨の中に埋まっているので、口腔外科での手術が必要であること。その際、骨を削る等の処置がなされるであろうこと、いずれにせよ紹介状と予約が必要であることなどが明らかになった。 骨を削るということは、当然歯ぐきも切開されるだろう。恐ろしい、逃げ出したい。十年前もこれが怖くて手術をしなかったのだが、いくら歯科医の技術が進歩してもこればかりは変わらない。覚悟を決めるしかない。 痛み止めのために、親知らずの穴に紙ねんどのようななんかネバネバしたものを詰めてもらい、応急処置は済んだ。 恐ろしいほどすぐに、痛みは治まった。 この歯科医、人畜無害な風貌からのイメージ通り、インフォームド・コンセントはしっかりしている。デジトゲンのデータをくれさえすれば、インターネットのランキングに書いてあげてもよかったのに思った。 応急処置の後、紹介状をもらうことになる。 この歯科医が紹介できる口腔外科はふたつあるという。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.03 15:52:25
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