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カテゴリ:親不知
せんだって、親知らずを抜くことを親に知らせた。
それから1週間ほどして、紹介状を書いてもらった大学病院での初回の診察を受けた。 紹介状を書いてもらった時点で予約はできているので、大学病院とはいえどもそんなに待たされることなく拷問器具に座ることができた。 担当医は白髪の男性。 誰かに似ている。フレッド・ブラッシーかベラ・ルゴシか、いずれにせよ不吉な人相だ。誰に似ているのだろう。 大雑把に口の中を診たあと、放射線科に行ってレントゲンを撮ってくるように言われた。 すでに街の歯科医で撮ったのだが、医者が言うのだから仕方がない。 カルテを持って、広い院内をうろついている病人の流れに沿って歩き、放射線科に向かう。 黒と黄色の放射線ハザードのマークがたくさん並んだエリア。レントゲン室のまわりにあるベンチは、不健康そうな老人や痛々しい様子の怪我人で埋まっていた。 鉛のエプロンをかけられ、レントゲンの機械に頭をつっこむ。 放射線を出しながら頭のぐるりを周っている機械から、なんの配慮かわからないが『エリーゼのために』がヘボい音色で流れた。 被曝しながら聴かされるメロディとしては、かなり不愉快な部類だ。電話の保留音のような、この音程の不確かなベートーベンはたしかにレントゲンの機械から流れている。音が頭のぐるりを移動している。どうせなら伊福部メロディにでもすれば良かろうと思う。 現像されたレントゲン写真を持って、また口腔外科に戻る。鼻歌はエリーゼのために、だ。 この大学病院の口腔外科の設備は街の歯科医と比べて一世代くらい古い感じ。レントゲンもデジタル化されていなかった。やはり図体の大きな所はフットワークが重いのだろう。 親知らずの処置に対する私の希望は、笑気ガスでうっとりしている間に歯が抜かれて歯ぐきの縫合まで済んでいることだ。 それは、これからのカウンセリングで判明する。 白髪の歯科医が、私の座っている拷問器具の脇にやってきた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.03 15:51:36
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