カテゴリ:親不知
せんだって、紹介状を書いてもらった大学病院での初回の診察を受けた。
親知らずの処置に対する私の希望は、笑気ガスでうっとりしている間に歯が抜かれて歯ぐきの縫合まで済んでいることだ。 白髪の歯科医が、撮影されたレントゲン写真を持って私の座っている拷問器具の脇にやってきた。 誰かに似ている。誰だろう。 蛍光管の明かりに透かして見る白黒の歯並び。何度も見ているものだが、白髪の口腔外科医にインフォームドコンセントをされながらというのは初めてだ。 やはり、私の左下の親知らずは斜めに生えていて大臼歯を押している。虫歯の穴も、レントゲンに映るほど大きい。根っこは顎の骨に埋まっていて、鉗子でエイヤと引っ張れば抜けるようなものではない。 歯ぐきを切開して破砕して取り除くほかあるまい。 陰鬱な気分でレントゲン写真を見る。 白髪の医者は、歯茎を切り開いてとか、親知らずが虫歯でスカスカだから砕いてとか、根っこが埋まっている部分の骨を削ってとか、術後にはおそらく痺れや違和感が出るとか、嬉しそうに話している。 いや、それは仕事のうち。今回の来院の目的はこのインフォームドコンセントなのだが、どうしてそんなに嬉しそうなのか。 臆病な私が気にしているのは、麻酔で気を失っていることができるかどうかと顎の骨を削るとかいうことだ。美容整形でもあるまいし、そこまでしないといけないものか。 その不安を打ち明けると、麻酔はもちろん局部麻酔だという。 ということは、意識があるということだ。 親知らずを砕く音や、顎の骨を削る音が聞こえるのではないか。骨伝導で聞こえるのではないか。 医者に、聞こえますか と聞いたら、聞こえるよ、と答えた。 笑顔で答えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.09.03 15:51:08
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